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ラージアーキテクチャー第一弾
マツダは、コンパクトサイズを「スモール」アーキテクチャー、ミッドサイズ以上を「ラージ」アーキテクチャーというふたつの技術基盤(プラットフォーム)でクルマを開発していく。スモールについては、MAZDA3からスタートし、CX-30、MX-30などがすでに市場に投入されている。
2022年に新たに世に問うのが「ラージ」である。マツダのモデル名でいうと、「6」あるいは、「60」以上がラージとなるようだ(スポーツカーやセダン系についてはいまのところ発表がない)。
ラージの第一弾がミッドサイズSUVのCX-60である。
ラージの最大の特徴は、フロントにエンジンを縦置き(north-south layoutともいう)し、基本的に後輪を駆動するレイアウトを採ることだ。いわゆるFR(Front Engine/Rear Drive)である。
一方のスモールは、フロントにエンジンを横置き(同様にeast-west layoutというもいう)し、基本的に前輪を駆動するレイアウトだ。FF(Front Engine/Front Drive)だ。
一般にFRレイアウト(もちろん、4WD化もできる)を採るのは、中大型車でプレミアムなクルマ(ブランド)が多い。メルセデス・ベンツ、BMW、ジャガー、キャデラック、レクサス、インフィニティなどのブランドの上級車種がFRだ。
なぜFRなのか?
そのカテゴリーにマツダが新たに参入するわけだ。では、マツダはプレミアムブランドになるためにFRを選んだのか? そこにはマツダらしいロジカルな考え方がある。
マツダの松本浩幸執行役員に、なぜFRなのか? 以前、お話しを伺ったときに、「クルマという商品はまだまだ大型になっていく(とくに北米・中国)。大きくなったときに、縦置き後輪駆動ベースのほうが作りやすい」ということなんですか? と問うと
「クルマの大きさもありますが、メインは環境・安全への貢献を考えた結果です。それから走る歓び、デザイン、すべてを満たす解として縦置きがあります。昔は小さいクルマを縦置きにするとスペース効率もあっていろいろ制約があったのですが、このくらいのミッドサイズになると縦置きの方がむしろ効率が良いという面があります。クルマのサイズによる選択の幅が広がったというのはひとつにはあります。メインは『環境・安全』と『走る歓び』、これのベスト解です」
という答えが返ってきた。
試乗車は2.5ℓ+PHEVと3.3ℓ直6ディーゼル+48マイルドハイブリッド
今回、試乗車として用意されていたのは2種類。どちらも欧州仕様のプロトタイプだ。
・2.5ℓ直4自然吸気エンジン+PHEV(プラグインハイブリッド)+AWD
・3.3ℓ直6ディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッド+AWD
である。
CX-60もパワートレーンは、以下の組み合わせになるようだ。
■エンジン
2.5ℓガソリン直4自然吸気(SKYACTIV-G2.5)
3.0ℓガソリン直6ターボ(SKYACTIV-G3.0 おそらく過給圧で2仕様)
3.0ℓガソリン直6のSKYACTIV-X
3.3ℓディーゼル直6ターボ
■電動化デバイス
48Vマイルドハイブリッド
PHEV
■トランスミッション
新開発トルコンレス8速AT
■駆動方式
FR
AWD
上記を組み合わせて多くのバリエーションを仕向地に合わせて作り上げていく戦略だ。バリエーションの開発にはマツダ得意のMBD(モデルベース開発)が威力を発揮しているという。
日本仕様はどうなる?
価格は未発表だが、日本仕様は次の4仕様になる
・2.5ℓ直4(48Vマイルドハイブリッド無し)
・3.3ℓ直6ディーゼル(48Vマイルドハイブリッド無し)
・3.3ℓ直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッド
・2.5ℓ直4+PHEV
である。それぞれFRと4WDが設定されるはずだ。エントリーモデルは、2.5ℓ直4+FR、最上位モデルは2.5ℓ+PHEV+4WDということになろう。
国内には、ガソリンの直6は設定されないようだ(今回のフォーラムでもガソリンについては詳細な説明はなかった)。おそらく
・3.0ℓ直6SKYACTIV-Xは欧州向け
・3.0ℓ直6SKYACTIVターボは北米向け
ということになるだろう。
なぜ直6なのか?
このところ、直列6気筒エンジンが復活している。その理由はさまざまだが、基本的な素性の良さ(振動特性に優れる)、排気対策のしやすさ(V型だとバンク毎に排気浄化デバイスが必要)、衝突安全技術、パッケージ技術の進化といったことが挙げられる。老舗のBMWのほかに、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、ジャガー、ステランテイスも直6を持つ。
マツダが直6を選んだのも上記の理由がもちろんがあるが、「大排気量にすることでエンジンの高効率化」が図れるから、だという。
中井執行役員は、
「エンジンはリーンバーンができるなら、絶対に排気量は大きい方がいい。それはガソリンもディーゼルも一緒です。ディーゼル、ガソリンを同じアーキテクチャーで作ろうと思ったら排気量は両方とも必要です。大排気量をどうやってコンパクトに作るか、という話になったときに、6気筒か4気筒かという選択になります。4気筒だとNOxがでてしまって圧縮比が上げられなくなってしまう。そうするとリーンバーンもできなくなる。となると、やはり6気筒でしょう。となります。ディーゼルも6気筒にするとでダウンスピーディングができて、効率のいい領域、燃費効率のよい領域が使えます。そして、直6とV6はどちらいいんですかっていうとなると直6ですよね、という論理です」
と語った。
CX-60には、新開発のデバイス、新技術が満載だ。
・直6エンジン
・PHEV/48Vマイルドハイブリッド
・トルコンレス8速AT
・シャシー&サスペンション
など、それぞれの技術については、別稿(Motor-Fan TECH.にも掲載)で詳細に解説する。
試乗車(欧州仕様プロトタイプ)のスペックは以下の通りだ(発表されているもの)
e-SKYACTIV PHEV 発表スペック詳細
■ボディサイズ 全長×全幅×全高:4742mm1890mm×1691mm ホイールベース:2870mm トレッド:F1637mm/R1637mm ■エンジン(SKYACTIV-G2.5) 排気量:2488cc 圧縮比:13.0 トランスミッション:8AT ドライブトレイン:AWD 最高出力:191ps(141kW)/6000rpm 最大トルク:261Nm/4000rpm 燃料消費(WLTP):1.5(ℓ/100km) 燃料消費(SLTC):66.7km/ℓ CO₂(WLTP):33g/km 燃料タイプ:ガソリン95ron 燃料タンク容量:50ℓ ■電機駆動モーター 冷却システム:水冷式 最高出力:175ps(129kW)/5500rpm 最大トルク:270Nm/4000rpm ■システム総合出力 最高出力:327ps(241kW)/6000rpm 最大トルク:500Nm/4000rpm ■駆動用バッテリー 化学成分:リチウムイオン 電圧:355V 容量:17.8kWh セル数:96 ■充電方式 AC 単相:7.2kW(充電時間0-満充電2時間20分、20%-80% 1時間30分) 三相:11kW(充電時間同上) ■シャシー サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rフルマルチリンク式 タイヤサイズ:F&R235/50R20 ホイールサイズ:20インチ ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■パフォーマンス 最高速度:200km/h 0-100km/h加速:5.8秒 EV走行航続距離:61-63km
e-SKYACTIV 発表スペック詳細
■ボディサイズ 全長×全幅×全高:4742mm1890mm×1691mm ホイールベース:2870mm トレッド:F1637mm/R1637mm ■エンジン(SKYACTIV-D3.3) 排気量:3283cc 圧縮比:15.2 トランスミッション:8AT ドライブトレイン:AWD 最高出力:254ps(187kW)/3750rpm 最大トルク:550Nm/1500-2400rpm 燃料消費(WLTP):N/A 燃料消費(SLTC):N/A 燃料タイプ:軽油 燃料タンク容量:58ℓ ■電機駆動モーター 冷却システム:水冷式 最高出力:17ps(12.4kW)/900rpm 最大トルク:153Nm/200rpm ■駆動用バッテリー 化学成分:リチウムイオン 電圧:44.4V 容量:0.33kWh セル数:12 ■シャシー サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rフルマルチリンク式 タイヤサイズ:F&R235/50R20 ホイールサイズ:20インチ ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■パフォーマンス 最高速度:220km/h 0-100km/h加速:7.3秒