激レアな1979年式二代目スプリンタークーペトレノ1600GTに遭遇!

TE47〜TE65を覚えているか? 排ガス規制に翻弄された悲劇のトレノが残っていた!【甲府駅自動車博覧会】

山梨県で開催された甲府駅自動車博覧会には国内外、さまざまなメーカーのモデルたちが集まった。単一車種ばかりが多いイベントより楽しめる内容だったが、展示車に見慣れないモデルが数台含まれていたことも特筆できた。なかでも今回紹介する2代目スプリンタートレノは、旧車イベントで見かける機会すら少ない激レア車といっていいだろう。

PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1979年式トヨタ・スプリンタークーペ1600トレノGT。

旧型の国産スポーツカーが人気だ。なかでもスカイラインGT-RやRX-7、カローラレビン・スプリンタートレノは映画や漫画の影響もあって、国内だけでなく海外からも注目を集めている。レビン・トレノで言えば後輪駆動最後のAE86が大人気で、それに続くのは初代TE27が以前から不動の支持を集めている。FFになったAE92以降はまだ盛り上がりを見せていないが、時間の問題で中古車相場が上がるのは確実だろう。では、初代からAE86までの間に生産されたFR時代のモデルはといえば、これが不思議で中古車を探すことが難しい状況にある。3代目のTE71が200〜300万円なので、ヒト桁やフタ桁だった以前の相場を知っている人にすれば確かに高い。けれど4代目、レビンでいえばTE37からTE55、トレノでいえばTE47からTE65たちは値上がりどころか売り物すら見つからないほどなのだ。これは廃ガス規制によりエンジンから牙が抜かれ、規制前のモデルが一時期人気だったことによる現象。ところが6月5日に山梨県で開催された甲府駅自動車博覧会の会場で、非常に程度が良い2代目スプリンタートレノと遭遇した。人気車であるトレノの中でも激レアな1台。一体どのような人が所有されているのか気になってオーナーを探した。

2代目の前期型に採用されていたヘッドライトカバー。

何とか探し出したオーナーは58歳になる松井義則さん。見るからに程度が良いので長年所有されているのか、それとも近年になってフルレストアしたのか質問してみれば、どちらでもなかった。実に2年前、インターネットオークションに出品されていたものを手に入れたそうなのだ。でもなぜ、トレノの中でも希少なモデルを選ばれたのだろう。質問をぶつけてみれば「昔から好きだったので」という答えが帰ってきた。松井さんより少々若い筆者だが、この答えに同意できる。というのも小学生時代、定番モデルより控えめなルックスに惹かれてTE47のプラモデルを作りお気に入りだったから。松井さんも同じような考えから憧れを抱いていたのだろう。

ファストバックスタイルのリヤ。

松井さんは他にも古いクルマを数台所有されていて、いずれからも趣向が見えてくる。ルノー・キャトルこと4や550cc時代のジムニー、それにスズキGT550やカワサキZRX1100といったバイクも所有されている。ZRXは比較的メジャーなモデルだが、それ以外はどことなく「外し」のモデルが多い。いわば通好みな2輪4輪が大好きなのだろう。ではこのトレノを手に入れられた経緯はどのようなものだったのだろう。

サイドのストライプが鮮やか。ホイールはRSワタナベの8スポーク。
マフラーは社外のステンレスに変更されている。

インターネットオークションで見つけると、出品者にコンタクトを取りお住まいの静岡県から出品地である滋賀県まで見に行くことにされた。すると出品者は旧車を何台も所有するコレクターで、トレノ以外にも手放す予定があるという。コレクター所有なだけに程度がよく、トレノは基本的に購入した時から大きく手を加えずに済んでいる。また、手放す予定のクルマを教えてもらうと、その中に気になる1台があった。初代・三菱ミニカ360がそれで、なんと松井さん、トレノと同時にミニカまで購入することにされたのだ。

ナルディに変更したステアリング以外はオリジナルを保つ。
メーターパネルにカーボン調シールを貼った。
メーターが多い時代だが、この型のトレノは8連メーター!

入手されてからのトラブルは配線の接触不良があったくらいで、基本的に壊れたことはないとか。この時代のクルマだと積算計が5桁だから本来の走行距離がどれだけ伸びているのか確かめようがないが、現状で示しているのは6万キロ台。ひと回りしていたとしても16万キロだから、致命的な故障はまだまだこれからだろう。それよりこれだけのコンディションなので過去にレストアか、それに近い内容の作業がされていることは確実と考えていい。それゆえにトラブル知らずで2年間乗り続けられたのだろう。

純正でクーラーが装備可能だった。
まるで新車のような状態にある前後シート。

クルマ、特に古くなったモデルのコンディションを推し量るにはシートを観察するのが確実。運転席のヘタリや破れ具合を見ればどのような体格のオーナーが、どれだけの距離を共にしたのか見えてくるからだ。このトレノを見ると、張り替えられたかのようにキレイな状態。ここまでキレイだと走行距離が実際の数字に思えてくるし、シートだけでなくカーペットやプラスチックの質感も数年落ちのクルマみたいに上質。これはもしや、奇跡の個体なのかもしれない。

初代から継承した2T-G型エンジンはインジェクション化で生きながらえた。

2代目レビン・トレノが希少車になってしまったのは、ひとえに排出ガス規制の強化にほかならない。アメリカで1970年に改正された排ガス規制であるマスキー法を発端として、世界各国で排ガス規制を見直す機運が高まった。日本でも昭和48年排出ガス規制が施行されると毎年のように規制が強化されることになった。使用過程車はともかく新車には厳しい基準が設けられ、規制をクリアできない国産高性能エンジンたちは次々と姿を消すことになる。たとえ生き残ることができたエンジンでも規制前の出力を維持することは難しく、高回転までストレスなく吹け上がるユニットは皆無に近い状態になってしまう。このような状況下で唯一生き残ることができたDOHCエンジンがトヨタの2T-G型で、昭和51年規制に適合したインジェクション仕様の2T-GEU型は3代目レビン・トレノであるTE71型まで継続採用されている。今回取材したトレノにもこのインジェクション装備の2T-GEU型が搭載されていた。ナンバープレートの数字は登録年を示していて、1979年式だから三元触媒を備える仕様だったはず。トレノの型式でいえばTE65型ということになり、このクルマの程度の良さがここで解読できる。というのも内外装は初期のTE47に準じたものとなっているので、どこかの時点で後期型を初期型へ変更する大掛かりなレストアが行われたと推測できるのだ。希少なモデルだから新車時のままを維持することにも意味はある。けれど、こうして後期型を前期仕様にすることは、旧車の楽しみ方の広がりという意味で大いに認められるべきだと思うのだ。

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…