軽のBEV、日産サクラ サイズと最高出力だけが軽規格

日産サクラG 車両本体価格○294万0300円
電気自動車(EV)の日産サクラが軽自動車らしいのは、車両サイズくらいと言ってよさそうだ。法規上、サクラは軽自動車に属するが、エクステリアやインテリアの質感も、装備も、従来の軽自動車のレベルをはるかに超越している。とくに、段違いなのが走りだ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

軽自動車ばなれした走りには理由がある

ソルベブルーM/チタニウムグレーM2トーンは7万7000円のメーカーオプション

サクラは、排気量660ccのガソリンエンジンの代わりにモーターを搭載し、前輪を駆動する。軽自動車のエンジンは最高出力が(自主的に)47kW(64ps)に規制されているため、サクラが搭載するモーターの最高出力も47kWだ。しかし最大トルクは規制されていないこともあり、195Nmを発生させる。

この数字がどれほど軽自動車離れしているかといえば、日産デイズの3気筒自然吸気エンジンが発生する最大トルクは60Nm、3気筒ターボエンジン仕様の最大トルクは100Nmである。サクラのモーターは、自然吸気エンジンに対して3倍強、ターボエンジンに対して約2倍の最大トルクを発生することになる。

トルクを体感しやすいのは「蹴り出し」だ。例えばショッピングモールの立体駐車場を利用するとき、最初は止まるようなスピードでスロープに差し掛かり、勾配の強さに合わせてアクセルペダルを強めに踏み込むことになる。すると、ガソリンエンジン車の場合は一気に回転数が上がってうなり始め、車速が徐々に追い付いてくる格好になる。スロープを上がり切って踊り場に差し掛かったところで静かになり、次のスロープを上るときにまたエンジンが唸って、の繰り返しだ。

モーターで走るサクラは立体駐車場のスロープを澄まし顔で上りきる。ほとんど無音と言っていい。目立つのは空調ルーバーから聞こえてくる風の音くらいだ。エンジンとモーターのこの大きな違いは、ひとつには前述した、最大トルクの違いに起因する。モーターを積むサクラは、蹴り出しが強い。

もうひとつはエンジンとモーターの特性の違いに由来する。エンジンはある程度回転数を高めないと充分なトルクを発生できないが、モーターは回転し始めた瞬間から最大トルクを発生する。だから、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間からグッと力強く、背中をシートに押し付けるような出足を披露し、勢いを保ったまま加速を続ける。それも、ほとんど音もなく。道路を走っているときなど、エレベーターに乗って水平移動しているような感覚だ。

アクセルペダルを踏み込むと即座に反応して加速するし、その気になればなかなか俊敏な加速を披露するので、交通の流れをリードすることすら可能だ。高速道路のサービスエリアから本線への合流や、料金所からの加速にしても、もたもたした動きでドライバー本人や後続車をいらだたせることはない。

それに、まるでゴーカートのようにキビキビ動くので、道路を広く使うことができる。複数車線がある市街地の道路は、歩道側の車線に路上駐車のクルマがあることが多い。歩道側の車線のほうが空いていそうなのだが、大きなクルマに乗っているときは、路上駐車に遭遇~車線変更~元の車線に戻る~また路上駐車に遭遇~車線変更を繰り返すのが面倒で、だったら、「ずっとセンターライン側でいいか」という気分になることが多い。

WLTCモード:124Wh/km 市街地モード 100Wh/km 郊外モード 113Wh/km 高速道路モード 142Wh/km 一充電走行距離:180km

だが、キビキビ動くサクラなら急な車線変更が苦にならない。全幅1475mmの軽自動車なので、全幅1800mm級が当たり前になったCセグメント車より30cm以上もスリムだ。そのため、車線変更側への張り出しが小さくて済み、路上駐車の車両をクリアする行為が格段に楽。加減速が思いどおりにできるので、車線変更側を走る車両との間合いがとりやすく、歩道側車線を走るのが苦にならない(もちろん、無理に走る必要はない)。

軽自動車ばなれしているのは、走りだけではない。インテリアの質感も軽とは思えないレベルだ。

性能開発を担当した人物は、「EVなんか大嫌い」と心の底から思っていたのだそう。そう思っていたところに、サクラを担当する命が下った。ならば、「自分で乗りたいEVにしよう」と一念発起したという。コストや技術、時間の都合でやりたいことがすべてできるわけではないが、サクラの場合は「のたうちまわらずに済み、磨きまくってバランスが良くなった」というから、自信作なのだろう。確かに、感心するほどに素晴らしい走りを披露してくれる。

MM48型交流同期モーター 最高出力:47kW(64ps)/2302-10455rpm 最大トルク:195Nm/0-2302rpm 駆動用バッテリー 総電圧:350V 総電力量:20kWh
ディテールまでデザインは行き届いている。普通充電:200V/14.5A 2.9kW) 8時間 バッテリー残量警告灯点灯~100%)

開発者の気づかいは「音」にも込められている。モーターで走るEVは静粛性の高さが特徴でもあるのだが、静かなだけに、目立ってしまう音がある。例えば、車両近接通報音。日産ではVSPと呼んでいるシステムの音だ。低速走行中に車両が接近していることを歩行者に知らせるシステムで、発進時は30km/h以内でホワンホワンという音を発する。

この車両近接接近音は歩行者に知らせるのが目的だから、車内の乗員に聞こえる必要はない。むしろ、聞かせたくない。せっかくEVならではの静かな走り(タイヤ起因のノイズや風切り音が小さいので、低速時ほど静かさを感じやすい)が味わえる状況なのだから。車両近接通報音が室内に侵入するクルマに乗ると実感するが、あれほど邪魔なものはない。

そこでサクラの開発では、法規を満足させる音圧を出しつつ、スピーカーをできるだけキャビンから離して設置。さらに、日産のEVに共通する車両近接通報音としながら、周波数をチューニングすることで、室内で目立たないようにしたという。EVらしい静かな走りが堪能できるのは、こうした細やかな気づかいがあるからだ。

リヤサスペンションはトルクアーム3リンク式
センターに見えるのが20kWhのリチウムイオン電池。リーフと同じくエンビジョンAESC製造のリチウムイオン電池を使う。
日産サクラG
全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1080kg
乗車定員:4名
サスペンション:Fマクファーソン式/Rトルクアーム3リンク式
駆動用モーター
MM48型交流同期モーター
最高出力:47kW(64ps)/2302-10455rpm
最大トルク:195Nm/0-2302rpm
駆動用バッテリー
総電圧:350V
総電力量:20kWh


WLTCモード:124Wh/km
 市街地モード 100Wh/km
 郊外モード 113Wh/km
 高速道路モード 142Wh/km
一充電走行距離:180km

車両本体価格○294万0300円
メーカーオプション(25万30000円)
充電ケーブル(コントロールボックス付き、200V、7.5m)5万5000円
プロパイロットパーキング5万5000円
プレミアムインテリアパッケージ4万4000円
ソルベブルーM/チタニウムグレーM2トーン7万7000円
165/55R15+アルミホール2万2000円
ディーラーオプション(17万11115円)
LEDフォグランプ5万9800円
ウィンドウ撥水1万1935円
日産オリジナルドライブレコーダー7万7380円
フロアカーペット2万2000円

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…