「その名はWORKS」初代アルトワークスが切り開いた新ジャンル【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

「好きなスポーツは、ワークスです」など、名フレーズで名高いアルトワークス初代を語る|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.2

初代アルトワークスのカタログ
もはやいまだ所有している人は少ないであろう、初代アルトワークスのカタログ
先日から始まった週刊【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。その懐かしさからすでに人気連載の仲間入りです。
スズキ・アルトワークスを語らせたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第2回! 今回は、最新最強のスペックを誇った初代アルトツインカムターボワークスについて語ろう。「ワークスという名の新ジャンルカー」「好きなスポーツは、ワークスです」など、名文句も多いアルトワークス初代の目玉とウリは、やはり軽自動車唯一の “ ツインカムターボ ” のエンジンだった。

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)
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運転する軽自動車から運動できるKスポーツへ

仕様・諸元(一部)
駆動方式(RS-X・RS-S):2WD(FF)
    (RS-R):フルタイム4WD
型式(RS-X・RS-S):M-CA72V
  (RS-R):M-CC72V
エンジン:F5A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
ボア×ストローク:62.0 mm×60.0mm
総排気量:543cc
トランスミッション:5速MT
全長×全幅×全高:3195mm×1395mm×1380mm(RS-R 1405mm)
ホイールベース:2175mm
トレッド:フロント1225mm(RS-R 1230mm)/リヤ1200mm
車両重量:RS-X・RS-S 610kg/RS-R 650kg
乗車定員:2名(後部座席使用時4名)
最大積載量:200kg(4名乗車時)
車両規格:昭和51年1月施行 旧々軽自動車規格

最新最強のスペックを誇った初代アルトツインカムターボワークス

戦闘力を知らしめ、モータースポーツの景色も変えた。社外の競技用部品が充実。N1規則のワンメイクレースが開催。ラリーでは4WDのRS-Rがライバル車を食って上位へ

ツインカム12RSからの究極進化形。パワーマネーレシオが光る、魅力の1台だった

ボディ―の基本。フロントがストラット式、リヤがI.T.L.式のサス。フロントがディスク式のブレーキ。以上はベースのツインカム12RSと同様だ。
初代の特徴は、まず外観がフルエアロチューン。装着タイヤは、軽自動車初のサイズ145/65R13。そして軽自動車初の目玉、ターボ仕様のF5A型DOHCエンジンが搭載された。
トランスミッションは5MT一本。駆動方式にはFFのRS-Xと、フルタイム4WDのRS-Rを設定。
車両価格は各99万円、109万円でツインカム12RSの約20万円アップ。最高出力が22ps増、その性能と装備から、お得な魅力ある1台だった。

車両価格は約87万円。スリーパーモデルでアルト似、FFのRS-Sもあった。当時、軽自動車の多くはエアコンがオプションで別売り。金額は10万円以上! 組むと相応の支払い額になった
前後のサスとフロントスタビがスポーツ性を高める専用チューン。なおI.T.L.はトレーリングアームと車軸の連結をブッシュ構造とし、走行性能と乗り心地が両立する独自の仕組み

メカと性能は軽自動車初。だがその本領は封印された

総排気量543cc、専用エンジンは最高出力64ps。
DOHC4バルブ+ターボの専用F5A型3気筒エンジンは、軽自動車初のメカ。

最高出力64psも軽ナンバーワン。そのパワーソースは、IHI製RHB31タービンだ。エンジンの横にはエアスクープから冷却用の外気を取り入れる、大型インタークーラーも組まれた。
制御系は圧力センサーを使う方式で、EPIと新機能ESA電子進角もあわせ、0.9kg/㎠の高過給に対応した。当時らしい主張は「リッター馬力117.8ps」。543cc唯一の64psだから、こう言えた。でも64psは、やむなく抑えた自主規制値だ。
ツインカム12RSに同じタービン・補機を組み、過給をかけたとすれば、単純計算で84ps。予定した実の力に合点がいく。

タービンは油冷&水冷式。鋳物のエキマニは排気経路が短く、過給の応答性を補う。最大ブーストの管理はアクチュエータの機械仕掛け。※写真は後年登場する進化形F6A型の改造中

「運転じゃない。これは運動だ。」スズキは唱えた

回転力を表す、レッドゾーンは9500rpmから。定格は最高出力64ps/7500rpm、最大トルク7.3kgm/4000rpm。圧縮比がツインカム12RSの10.0に対して8.0と低く、ターボの特性もあって最大ブースト到達が3500rpm前後、そこからトルクが急に高まる。
回転上昇が勢いつき、タコメーターの指針が9500rpm以降のレッドゾーンに向かって躍った。ライバル車より1000回転は多く、確実に上まで引っぱれた。登場時点では、軽自動車一の回転力だ。
ブン回してこそ、乗る醍醐味があった。ワークスの操作は「運転じゃない。これは運動だ。」スズキは、そう唱えた。

エンジン内部はNA仕様を強化。高回転対応・高剛性化にカムの装着に凝る

ブロック側はNA仕様からピストン、コンロッド、クランクが強化を受けた。油温対策に水冷式オイルクーラーもつく。
ヘッド側はNA仕様と同じく小径の点火プラグも使って、燃焼室のバルブ面積を稼ぐ。カムはターボ用。そのカムの装着が、DOHCのF5A型は凝っていた。
カムはヘッドでなく、エンジン最上部のカムカバー風のカムハウジングに収まる。これはアルミ製の一体もので、カムキャップはない。カムを真横にある穴から差し込んで組む。

高回転でのカム周辺の剛性が保て、ロッカーアームでのバルブ開閉を確かにする仕組みだ。ヘッドの小型化とF5A型のDOHC化成立、車両への搭載にもつながっていた。構造上、困難になるバルブクリヤランスの調整は、ラッシュアジャスターによる自動調整を実現。馬力のみならず、まさに精密な最新専用機だった。

エンジン最上部の白い箇所がカムハウジング。赤は樹脂のプラグカバー。またインジェクター容量は210cc/分で、64psでは余るサイズ。リミッター解除で最高速は160㎞/h超と噂された

RS-Rのフルタイム4WDはラリーでは勝利に貢献

なんとパワートレインまで専用化だ。クラッチの容量アップ、エンジン特性に合うギア比への変更、シンクロの改善、前輪デフの強化そして等長ドライブシャフトの採用など、駆動系もワークス用に大改良。
で、RS-Rのフルタイム4WDだ。ビスカスカップリングが4輪の回転状況に応じてリヤの駆動力を増やし、後方から車両を押す。そんな強みに加え、社外パーツに2WAYのリヤデフ用L.S.D.が登場し、RS-Rはラリーで速さを発揮した。
フロントデフはL.S.D.化が難しく、もしそれができていたら、FFのRS-Xとともにモータースポーツでもっと活躍していただろう。

4WDのビスカスはリヤのデフケース内に配置。常時、前後輪に高い駆動力が発生するAWDではないが、走破性に優れる。非常時はトランスファーケースのレバーでFWDにできる

しかし、初代の販売期間はわずか1年半

小径ハンドルと、左右非対称形状のバケットシート、と内装でも運動性能を誇示する。メーターはゼロ点が真下にあり、真上が1万回転・100km/h。タコメーターの表示はMAX1万2000rpm。まさに新ジャンルカーの初代だが、力をつけたミラTR-XXの姿がミラーに映る。ミニカの最強化も観測。

そして1988年9月、わずか1年半という販売期間で代替わりをしたのだ……。

初代はホイールベース長、エンジンルームの広さとエンジンの搭載角度からタイヤハウスが室内にちょっと出ていた。代替わりは先々の軽自動車のニーズまで見越した、最新化だ
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スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…