【トップ画像】日産キックス X(FF)車両価格○279万9900円
日産キックスはノート、セレナに次ぐe-POWER搭載車だ。ノートはノートe-POWER、セレナはセレナe-POWERと呼ぶが、キックスはキックスe-POWERとは呼ばない。ノートやセレナはガソリンエンジン搭載車もラインアップするが、キックスにはe-POWERの設定しかないからだ。キックスといえば自動的にe-POWERの搭載を意味する。
e-POWERはハイブリッドシステムの一種だ。だが、ガソリンエンジンが主役で、エンジンが不得意とする領域だけモーターでアシストする方式ではない。シリーズハイブリッドと呼ばれる方式で、エンジン(1.2ℓ直3自然吸気)は発電に徹する。タイヤに繋がっているのはモーター(最高出力129ps(95kW)/最大トルク260Nm)のみだ。だから、アクセルペダルを踏んだときのフィーリングは、電気自動車(EV)と同じである。レスポンスが良く、切れ目のない、力強い加速が持続する。
EVの場合はバッテリー残量がフルのときも、空に近づいても走りのフィーリングは変わらない。しかし、e-POWERはそうはいかない。バッテリーの容量が異なるからだ。現行リーフが搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は40kWhまたは62kWhだが、キックスのバッテリー容量は1.47kWh、セレナe-POWERは1.8kWhしかない。だから、モーターを駆動するとすぐに電池が減ってしまう。
そのときのために発電用のエンジンを積んでいるのだが、先代ノートe-POWERもセレナe-POWERも、エンジンがかかると途端に騒々しくなって、気分が台無しになる(少々大げさに表現しているが)。そのことは日産自動車の開発陣も重々承知しており、手を打ったのがキックスだ。開発に携わる技術者のひとりは、「このクルマをもって第1段階の完成形だと思っています」と話す。
ん? そう、ここでいうe-POWER第二弾は、新型ノート(全車e-POWERになった)、そして新型ノート オーラのことだ。ここではe-POWER第1段階の完成形について記していこう。エンジンがかかるとうるさいのなら、なるべくかからないようにしよう、というのが、キックスが搭載するe-POWERに対して打った手のひとつだ。
ノートe-POWERとセレナe-POWERが好評を博してたくさん市場に出回ったことにより、実際の使われ方がだいぶわかるようになった。バッテリーも、電流を制御するインバーターも、安全率を見込んで市場に送り出していたが、「この使われ方なら、安全率をもう少し削っても大丈夫」と確信が持てるようになった。従来は市街地を走ると頻繁にエンジンがかかって、いい気分に水を差すことが多かったのだが、キックスが搭載するe-POWERではエンジンの始動頻度を徹底的に低くした。実際にキックスに乗って確かめたが、説明どおりである。エンジン音に邪魔される頻度は圧倒的に少なくなっている。