目次
1.アイドリング時の不調
アイドリングの回転が落ち着かない、エンジンがときどき掛かりづらいなどの症状がある場合の対処法を紹介。
■取り付けの不具合を確認
中古でキャブを購入した場合、インマニとの取り付け面が荒れていて、そこからエアを吸ってセッティングがずれてしまうケースがある。単にガスケットを新品にすれば解消する場合もあるが、左画像のようにオイルストーンで平らに整えてやると、その心配がグッと少なくなるので、どうせならここまでやっておこう。
オイルストーンは工具専門店やホームセンターで売っている。目的に合ったサイズを購入しよう。
■油面を揃えてみる
けっこう忘れがちで、「装着してから一度も調整してない」という人が意外と多いのがこの油面調整。ここが大きくずれていると、ジェットが揃っていないのと同じような状態になってしまうので、まず最初にチェックしておきたいところだ。
実際の作業は、まずこの画像の様な油面ゲージを用意して、現在の油面を確認する。それぞれのキャブには基準値が(SOLEXなら21㎜)あるので、まずそこに合わせていこう。
油面の調整は、SOLEXのようにカバー側にスクリューがある場合は早いが、無い場合はフロートの付け根を曲げておこなうので、多少の慣れが必要だ。
■パイロットスクリューの調整
主にスロットルが閉じているときの混合気の濃さを調整するのがこのパイロットスクリュー(WEBERではアイドルアジャストスクリューと呼ぶ)だ。ここを開くと吸い込む空気の量に対して燃料の割合が多くなって濃くなる傾向で、ちょうど良い濃さのときにいちばん燃焼状態が良く、アイドリング回転が高くなる。アイドリング時はエンジンのパワーが低いので、なるべく良いところに揃えてやることで、エンジンを元気に回る状態にしてやるのがこの作業というわけだ。
2.発進時の不調
普段の移動の際に最も多用するのがこの発進時の領域だろう。なのでここが不調だと、乗るのが面倒になってしまう。ビシッと合わせて調子を取り戻そう!
■スロットルのレバーの動きを揃える
まずターンバックルの長さを全て同じになるように調整する。このときの基準は、キャブのスロットルレバーとインマニ側の押しレバーの角度がだいたい同じになるような長さが良い。
次に押しレバーの角度をすべて揃える。真横から見て頭の位置が揃っているように見えればOKで、分度器を使ってまで厳密に揃えなくても大丈夫だ。
そして最後に押しレバーが付いたロッドを回してみて、キャブのスロットルレバーが同じタイミングで開き始めるようにターンバックルで微調整する。
■パイロットスクリューを調整する
アイドリングの状態で調整済みなら触る必要は無いけど、それはまだやっていない場合で、発進時に不調を感じているのであれば、ここを調整してみるのもひとつの手だ。このパイロットスクリューはアイドリングだけでなく、少しアクセルを開けたところでも作用しているので、この調整で発進が楽になることも大いにあるのだ。
このパイロットスクリューの開度について、よく耳にする「1と1/2開いた位置」というのは、あくまでも調整を始めるための基準なので、実際はそこからズレていくことがほとんどである。
■スロージェットを交換してみる
上の2つの調整で不調が収まらないのであれば、もっと大きく燃調を変える必要がある。その場合は主に低回転域で作用するスロージェットを交換してみよう。問題は現状が濃いか薄いかの判断だけど、パイロットスクリューを回してみて、かなり開いても回転が上がるようならジェットが小さい可能性が高く、開いても反応が鈍いときはその逆だ(WEBERは差が分かりづらいモデルもあるようだ)。エンジンの仕様にもよるが、これでダメなら3番手くらい違うサイズのジェットを試しに装着してみて、エンジンの反応を見ていくといいだろう。
慣れてくれば、アクセルを開けたときの感触が重いか軽いかで濃い薄いを判断できるようになるが、分からないうちは、経験だと思っていろいろ変えて試してみよう。
スロージェットの交換の際、奥まっていて指で直接つまみづらいので、このように竹串などを差し込むと脱着しやすい(つま楊枝は細いのでNGです)。
A/F計を活用すれば調整が楽になる!!
通常は、ジェットの濃い薄いの判断は感覚に頼るところが大きいが、このA/F計(空燃比計)があればそのあいまいな部分がハッキリと数値でわかるようになって判断が断然しやすくなるのでオススメだ。
装着にはタコ足の集合部付近に専用の“O2センサー”を取り付ける必要があるので一度専門店に加工をお願いする必要があるけど、一度装着してしまえば、走行中の燃調の状態や変化も知ることができるので、安心してアクセルを踏むことが出来るようになる。
セッティングのエキスパートも使っているA/F計。これを装着することで、「アクセルの踏み始めは濃くなる」とか、「高回転では濃くなる」などの状況毎の変化を知ることが出来るようにもなるので、キャブのことをもっと知りたいと考えている人には必須の装備だと言って良いだろう。
このキャブレターセッティングガイドの記事は、令和に残るクルマ改造雑誌『G-ワークス』(毎月21日発売)に掲載された記事を引用・転載したものです。