AMGの完全独自開発で生まれ変わった「メルセデスAMG SL」が上陸! 2+2シートレイアウト&ソフトトップを採用

メルセデス・ベンツ日本はこのほど、新型「メルセデスAMG SL」の日本導入を発表し、10月24日に発売した。日本仕様は「メルセデスAMG SL 43」の1グレードを設定。税込車両価格は1648万円で、ハンドル位置は左右から選べる。

F1由来のエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーを採用した2.0ℓターボエンジンを搭載

メルセデス・ベンツ日本はこのほど、新型「メルセデスAMG SL」の日本導入を発表し、10月24日に発売した。日本仕様は「メルセデスAMG SL 43」の1グレードを設定。税込車両価格は1648万円で、ハンドル位置は左右から選べる。

「Super」と「Light」(軽量)を略したモデル呼称が用いられるSLは、1952年に公道走行可能なレーシングスポーツカーとして発表され、ル・マン24時間レースで見事なワンツーフィニッシュを飾ったほか、世界各地のレースで輝かしい戦績を重ねた「300 SL(W194)」をベースに、1954年に「300 SL(W198)」として発売された。

初代300 SLの誕生から70年を迎え、新型SLはメルセデスAMGによる完全自社開発モデルとして生まれ変わった。SL専用の高剛性プラットフォームによる卓越したドライビングパフォーマンスと快適性を兼ね備えたドライバビリティ、2+2シートレイアウト、そしてF1の技術を採用した新型2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンがもたらす軽快でパワフルなドライビングを楽しむことができるモデルだ。また、インテリアはアナログとデジタルを融合した「ハイパーアナログ」デザインを採用することで、300 SLのデザインをオマージュしながらもラグジュアリーで快適な空間を実現している。項目ごとに詳しく見ていこう。

エクステリア

全長4700×全幅1915×全高1370mm、ホイールベース2700mmのディメンションを持つ新型SLのエクステリアは、メルセデス・ベンツのデザイン基本思想である「センシュアル ピュリティ(官能的純粋)」に、AMGのスポーティな要素を取り入れたデザインを採用。ボンネットのパワードームなど、随所にSLの長い伝統を受け継ぐ特徴的な要素が施されているほか、新型SLがスポーツカーとしての原点に回帰したことを裏付ける筋肉質なプロポーションも特徴だ。

2+2シートを収めるために拡大されたサイズコンセプトは、デザイン担当者が自由にデザインできる余地も広げた。長いホイールベースと短いオーバーハング、そしてブラックペイント仕上げのフレームを持つ大きく傾斜したウインドスクリーンによって、コンパクトで低く構えるスタンスを実現。長いボンネットや後方に大きく下がったパッセンジャーコンパートメントなど、SL独自のプロポーションによって、ラグジュアリースポーツカーの外観を特徴付けている。

ビードやエッジのない、流れるようなフォルムを持つ表面は、格納式のシームレスドアハンドルに至るまで、名車SLが持つ独特な精神性を未来に向けて受け継ぐデザイン。ソフトトップを閉じると、軽やかなエクステリアがいっそう強調される。また、筋肉質なホイールアーチや、ボディ面に合わせて装着されたアルミホイールが、パワーとダイナミズムを強調している。

パワフルでワイドなフロントエンドは、AMG専用のフロントグリルが最大の特徴。下側が幅広の輪郭と14本の垂直ルーバーは、すべてのSLの始祖にあたり、 世界的な成功を収めた1952年製レーシングスポーツカー「300 SL」から取り入れたデザインだ。このフロントグリルは近年、AMGのあらゆるモデルに採用され、最も目を惹くアイテムとなっているが、新型SLでは立体形状となったほか、きわめて低い位置に取り付けられることで、ダイナミックなフォルムをさらに強調している。

前後に長く平たいボンネットは、AMG独自のスポーツカー遺伝子をはっきりと表現しているデザイン。2本のパワードームもSLの歴史に対するオマージュとなっている。また、きわめてスリムでシャープな輪郭をもつ「DIGITALライト」が、新型SLの存在感をさらに高めることにひと役買っている。このヘッドライトは暗色の内部にあしらわれた精密なグラフィクスにより奥行を強調している。このライトには、左右それぞれ2カ所が明るく光るデイタイムランニングライトが備わっており、SLの個性を際立たせている。

サイドビューは、力強く際立つショルダーとAMGアルミホイールの組み合わせによって、エレガンスとスポーツ性との間のバランスを確保。くびれのある形状もSLが持つパワーを強調するディテールで、とくにリヤホイールアーチまわりの大きな膨らみが目をひく。フェンダートリムは細部にわたり精密なデザインが施されており、明確で充実した表面デザインに対してアクセントを与えるコントラストを生み出している。

そしてリヤエンドは、省スペース軽量型Zフォールドのソフトトップを採用することで、高さを抑えたパワフルなデザインとなった。アクティブに作動するリトラクタブルリヤスポイラーはトランクリッドにほぼ境目を感じさせることなく組み込まれている。丸味が際立つリヤエンドは、ワイドトレッドとあいまって、新型SLのワイドなスタンスを強調している。スリムなLEDリヤコンビネーションランプのデザインは、ヘッドライトの形状に対応。水平に伸びる直線状の部分と光るドット部分により、SLとすぐに見分けられるデザインとなっている。

テールエンドにはリトラクタブルリヤスポイラーを配置。このスポイラーは5段階に設定されており、車速80km/h以上で展開し、操縦安定性を最適化したり、空気抵抗を低減する。120km/h以上で積極的なドライビングを検知した場合は、最大角度(22度)のダイナミックポジションへ移行し、ダイナミックかつ安全な走行をバックアップする。

インテリア

キャビンは初代300 SLロードスターに始まる伝統を現代的に蘇らせた仕立てで、メルセデスAMGのドライビングパフォーマンスの遺伝子を受け継ぐことで、スポーティかつ快適性に優れたもの。上質な素材と丹念なクラフトマンシップ、ディテールに対する配慮により、ラグジュアリーを感じさせるインテリアに仕上げられている。

コックピットは、センターコンソールに配置された電動角度調整機能を備えたメディアディスプレイに至るまで、ドライバー重視のデザインを採用。全体に調和の取れた空間が構築された。2+2シートレイアウトの採用で一新されたサイズコンセプトにより、先代に比べて機能とスペースが同時に拡大された点も特徴だ。

初代300 SLロードスターは、世界の名車のなかでも屈指の知名度を誇っている。ミニマリズムに依拠したその上質なインテリアデザインは、新型SLのデザイナーたちにも大きな影響を与えた。結果、アナログ的幾何学フォルムとデジタル技術を融合した「ハイパーアナログ」と呼ばれるデザインが採用された。その好例となるのが、100%デジタルのコックピットディスプレイで、立体的なバイザーにぴったりとはめ込まれている。

左右対称のダッシュボードは彫刻的で力強い翼形で、上下ふたつのパートに分かれている。特徴的なのが、4つの新開発タービンノズル形エアアウトレット。タービンノズル形状の面がパワフルなパワードームの形でダッシュボードに溶け込んでいる。下側部分はセンターコンソールから流れるように広がり、ふたつの部分をシームレスに継ぐ。

12.3インチ液晶デジタルコックピットディスプレイはバイザーの中に収めることで、日光の反射を防ぐ効果を持つ。センターコンソールは運転席と助手席を大きく分割する部分で、幅はきわめて広く、前方へ向けて急角度で立ち上がっている。そして、そのままダッシュボードの下側に流れ込んでいく。このセンターコンソールの機能、そしてデザイン上の中心となるのが、前後の本革面の間に埋め込まれた金属パネル。このNACAダクト形状は、AMG GTやGT 4ドアクーペの遺伝子を受け継いでおり、典型的なAMGスタイルによるインテリアデザインとなっている。NACAダクトデザインはほぼ継ぎ目なく11.9インチの縦長のメディアディスプレイへと移行していく。

このタッチ機能付ディスプレイは、ソフトトップ開放時に日光の差し込む向きが変わることで生じる光の反射を防ぐため、傾きを電動で調整する機能を備えている(調整範囲12.32度)。縦長のポートレートフォーマットであることから、ナビゲーション使用時などに大きなメリットが得られるとともに、エルゴノミクスの面でも自由度が大きい。メディアディスプレイは、SLの歴史に対する美しいオマージュとなる中央2個の上質なエアアウトレットに挟まれて浮くように配置されるが、同時にまた、室内のエモーショナルなデザインに対してデジタル的なコントラストを醸し出す要素となっている。

2+2シートレイアウトの採用は、1989〜2001年の「R129型」以来。リヤシートは日常的に使うための実用性を高めるもので、着座できる乗員の身長は150cmまでに限られる(チャイルドセーフティシート装着時は135cmまで)。後席に誰も座らない場合は、リヤシート背後にドラフトストップを装着することで、室内に乱気流が侵入することが防げる。リヤシートは一方で、ゴルフバッグなどを積み込む追加の収納スペースとしても利用可能だ。

ボディシェル

新型SLのボディシェルには、メルセデスAMGが開発したまったく新しい車両アーキテクチャーが採用された。アルミニウム、スチール、マグネシウム、繊維複合材による複合シャシーによって最大限の剛性を生み出すもので、精度の高いドライビングダイナミクスや優れた快適性、最適なパッケージング、それにスポーティなボディプロポーションを実現するベースとなっている。

この新しいロードスターアーキテクチャーは、自立構造を持つひとつのアルミニウム製スペースフレームで構成されている。1952年の初代SLのスペースフレームと同様にゼロから開発したもので、コンポーネントについては、先代SLはもちろん、AMG GT ロードスターなど他のモデルから流用されたものない。

ボディシェルのねじり剛性は、先代モデルに比べて18%高まった。横方向の剛性は、きわめて優れているAMG GTロードスターに比べて50%増、前後方向剛性は40%増となった。また、シャシーマウントの負荷導入剛性も同じく改善され、きわめて正確なハンドリングと優れたアジリティが実現。ホワイトボディの重量は約270kgだ。

ソフトトップ

ルーフについては、新型SLにスポーツ性をより重視したポジショニングが与えられたことから、先代のメタル製バリオルーフに代えて電動ソフトトップを採用することとなった。メタルルーフより21kgも軽く、重心が低くなったことから、ドライビングダイナミクスやハンドリングにプラスの効果が生まれている。しかし、これと同時に開発プロセスでは、日常的に使える高い実用性と優れた静粛性を保つことが課題となった。これを実現したのが3層構造。ピンと張りつめた外側シェルと精度よく仕上げたルーフライナーの間に、防音マットが挟み込まれているのだ。このマットは面積当たり重量が450g/㎡の上質素材を使用しており、優れた防音効果を発揮する。

省スペースの軽量型Zフォールドの採用によって、一般的なソフトトップコンパートメントカバーは不要となった。前部にルーフキャップが付いていることから、ソフトトップを完全に開いた後も、周囲の面より突き出ることもなくきれいに収納される。開閉は約15秒で完了し、車速60km/hまでなら走行中でも開閉可能。ソフトトップの開閉は、センターコンソールのスイッチパネル、またはタッチ機能付のメディアディスプレイで操作できる。トランク容量は213ℓ。ソフトトップを閉じると、このパーティションがスライド上昇して標準の仕切り位置よりもトランク容量を拡大し、約240ℓに拡がる。

パワートレイン

SL43には、2.0ℓ直列4気筒ターボエンジン「M139」を搭載。381ps/480Nmを発揮するこのM139は、先ごろ日本に導入されたCクラスのパフォーマンスモデル「メルセデスAMG C43(同車は408ps/500Nmを発揮)」と同様に、量産車としては世界初となるエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーを採用している。

このターボチャージャーはF1由来の技術で、メルセデスAMGペトロナスF1チームがモータースポーツの最高峰であるF1において、長年採用し実績を上げているシステムを直接のベースとするもの。エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーの電気モーターは厚さ約4cmで、排気側のタービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールの間のターボチャージャーの軸に直接一体化されている。このモーターが電子制御でターボチャージャーの軸を直接駆動し、コンプレッサーホイールを加速する。この加速は、コンプレッサーホイールが通常のターボチャージャーと同じく、排気の流れによって駆動されるようになるまで行われる。これにより、アイドリングスピードからエンジンの全回転域にわたってレスポンスの速さが大きく改善され、アクセル操作に対するエンジンのレスポンスがいっそう自然なものとなるほか、ダイナミックな走りが楽しめるようになる。

加えて、ターボチャージャーの電動化は低回転域のトルクを高める効果をもたらし、アジリティや発進加速性能の向上につながる。アクセルペダルから足を離したり、ブレーキペダルを踏んだりした場合でも、エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーは 常にブースト圧を維持することができるため、速やかなレスポンスが途切れることなく得られる。

このターボチャージャーは車載の48V電気システムを電源とし、最大17万rpmまで動作することで、きわめて高い空気流量を可能とする。ターボチャージャーと電気モーター、それにパワーエレクトロニクスは、エンジンの冷却システムに接続されており、これによって常に最適な温度で管理される。

SL 43に採用されているBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)は第2世代版で、48V電気システムのなかではマイルドハイブリッドとしても機能し、短時間の出力ブーストのほか、セーリングモードや回生ブレーキにより効率を最大限に高める。同時にまた48Vテクノロジーは、スタートストップ機能とセーリングモードの間の切り替えがほぼ感じられないほど滑らかに行われることから、快適性の改善にも役立つ。

トランスミッションには、従来63モデルにのみ搭載されていた「AMGスピードシフトMCT」(9速AT)を採用。トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを搭載し、ダイレクト感のある素早いシフト チェンジと高い伝達効率を実現している。シフトダウン時の自動ブリッピング機能やレーススタート機能によって、ダイナミックな走りも愉しめる。

走行モードは、高速走行時などにアクセルペダルから足を離すとエンジンとトランスミッションを切り離して燃料消費を抑えるセーリング機能の採用によって燃費を優先する「Comfort」、よりスポーティなドライビングが愉しめる「Sport」「Sport+」「RACE」、 滑りやすい路面を安全に走行する「Slippery」、様々なパラメーターを個別に設定できる「Individual」の6つのモードを設定。シフトダウン時に1速飛ばしたギヤを選択したり、自動ダブルクラッチ機能など、効率良くシフトチェンジできる。

このパワートレインを原動力に、新型SL 43は4.9秒の0-100km/h加速、275km/hの最高速を実現している。

サスペンション

SL43には、きわめて軽量かつ可変ダンピングシステムを搭載した高性能なアルミニウム製ダンパーと、軽量コイルスプリングを搭載した新開発AMGライドコントロールサスペンションが標準装備されている。フロントには、メルセデスAMGの量産車としては初めて、5本のリンクをホイールの内側にすべて収めたマルチリンク式が採用されており、運動性能が大幅に向上。ホイールをコントロールする部分とサスペンション機能を受け持つ部分を相互に独立させることで、高い横加速度を 可能としつつ、ステアリングシステムに対する駆動力の影響を最小限に抑えている。リアサスペンションにも、5リンク式が採用されている。

新型SLでは、バネ下質量を抑える観点から、前後アクスルに搭載されたすべてのサスペンションリンクとステアリングナックル、ハブキャリアを鍛造アルミニウム製としている。マルチリンク式は、弾性による動きを最小限に抑えつつ各ホイールを制御するとともに、キャンバーおよびトレッドの安定性が高いことから、高いコーナリングスピードを可能とするほか、限界に近い状況のコーナリングにおいて最大限の接地性を確保する。その結果、優れた横方向運動特性や高速走行時の操縦安定性に加え、横風や路面の凹凸、摩擦係数の変動といった外部からの影響に対する優れた反応が実現した。リヤハブキャリアはダンパーをダイレクトに接続することで、振動やホイール荷重変動を低減。ホイールをコントロールする部分とサスペンション機能を受け持つ部分を相互に独立させることで、高い横加速度を可能としつつトルクステアが最小限に抑えられており、快適性が向上している。

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