日本初となるステーションワゴン専用設計
ボディの前半部分は4ドアセダンとまったく同じで、後半はルーフを伸ばして後端にハッチバックを備えるクルマ、これが一般的なステーションワゴンだ。
欧米では古くから普及していたジャンルで、セダンと変わらぬ居住性に加えて、広い荷室を備えていること、また、高速でも安定して走れることから長距離移動も苦もなく可能など、レジャーユースやバカンスの足として重宝されていた。
だが日本はこの分野でも今で言うところのガラパゴス化だった。ワゴンのようなスタイルのクルマは、日本ではそのほとんどが商用車だった。いわゆるライトバンである。「〇〇商店」などとボディに描かれ、ワゴンと銘打っても税制上の違いで、実質商用車。自家用車として使う人もいたが、その場合もボディに「自家用」と表示する義務があった(現在は不要)。どう見てもセダンと比べて格下と見なされていた。
一方、スバルが自動車業界に本格的に進出したのは他社よりもかなり遅い1958年。お馴染みのスバル360が大ヒットする。1966年には水平対向エンジンを搭載するスバル1000で小型車へと進出。その後はff-1、そしてレオーネと車名を変え、スバルの主力モデルとなっていった。
ところが1980年代に入ってレオーネの人気も衰え、徐々に業績が悪化していく。1980年代後半には「他社と合併・吸収されるのでは……」などという噂がまことしやかに語られるようになっていた。
そんななか、1989年1月に発表されたのがレガシィである。4ドアセダンとツーリングワゴンと呼ぶステーションワゴンの2本立て。ただし発売当初はさほど話題になってはいなかった。
同年9月、2.0Lターボを搭載のGTを追加する。駆動方式はスバルお得意の高度な4WDで、GTの登場が人気に火をつけた。人気は圧倒的で、これが他のNAモデルにも飛び火。日本でワゴンブームが始まった瞬間であった。
ライトバン全盛の日本で、レガシィは商用モデルを設定しなかったのも画期的だった。商用車はローコストでかつ過酷な使用にも耐えなくてはならない。それは走行性能や乗り心地に関してはネガ要素となってしまう。つまりレガシィ・ツーリングワゴンはワゴン専用設計ゆえ、乗用としてのネガはなく、セダン同等の走行安定性があった。
搭載エンジンはスバル1000以来のEA型に代わる新開発となるEJ型で、GT用のEJ20型は2.0L水平対向4気筒ターボで200psを発揮した。ワゴンにこのようなハイパワーエンジンを搭載したことも当時は常識外れだった。EJ型は5代目レガシィまで搭載されている。EJ20型はそれ以降もインプレッサやWRX STIに採用され、2020年まで30年以上に渡って現役を続けた。まさに名機だ。
レガシィ・ツーリングワゴンは2代目もヒットし、日本のワゴンブームを牽引すると同時にスバルの経営危機を救った。まさレガシィは救世主となった。
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STYLE WAGON(スタイルワゴン)2023年9月号
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]