EV車用の急速充電器があったらかなり嬉しい! でも、導入費用は非現実的!?

自宅へ普通充電器の設置、自治体によっては補助金があるかも!? まずは地域の制度を確認してみよう #そこが知りたいEVのこと PART6

電気自動車が普及するためには充実した充電インフラが必要になる。海外メーカーを追いかけるように、その数を増やす国産BEV。軽BEVの登場は歓迎するが“充電待ち”の懸念も拭えない。電力の需給バランスが崩れている今、BEVは最善の選択か……。電気がなければ電気自動車は走れない――。そこが知りたいEVのこと PART6【中編】

一般的な家にも設置可能な普通充電

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ひと言で普通充電といっても、いろいろなタイプの充電器があります。また、価格や設置費用にも差があるのですが、そうした話を知らない人が意外と多いように感じます。

もっとも価格が安いのは充電用の専用コンセントを使う方法です。商品自体の価格は4000円前後から1万円強まであります。これは単相200Vへの対応が基本となります。最近の新築住宅では200V対応をしている場合も増えていますが、一般的な家庭は100Vなので、専門業者による改修などの工賃に10万円前後かかります。充電コンセントを使う方法では、クルマと充電器を専用ケーブルでつなげる必要があります。専用ケーブルには充電を制御するため、少しサイズが大きめのコントロールボックスが装着されています。

これに対して、壁掛け式やスタンド式の普通充電器では、EV側からの専用ケーブルは不要です。出力も高いものがありますが、価格は充電器単体で10万円台から20万円台と少し高めです。自宅用というよりは、公共の充電施設で数多く見かけると思います。

ただし、EVの充電の基本は自宅での普通充電だという認識がメーカー側にあります。

例えば、先日発売された日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」で、両メーカーは「家に帰ってきたら充電がルーティン」という宣伝をしています。三菱のEV開発者に話を聞いたところ、「EV購入希望のユーザーには販売店で普通充電に関するさまざまなプランをご案内しています」と自宅充電を提唱していました。

普通充電器の設置には補助金はあるの?

充電コンセントについて補足すると、単相100Vコンセントを使う充電方法もあるのですが、安全性と充電効率の両面で「推奨していない」(充電器メーカー)と言います。

安全性ですが、比較的大きな電流を長時間使い、また屋外での利用が基本であるため、コンセント付近での発熱などの可能性が否定できないと言います。単相200Vコンセントの場合、充電ケーブルとしっかりつながるような形状として安全性を高めています。

充電効率の面では、電圧100Vで電流15Aだと出力は1500W(1.5kW)ですが、電圧200 Vで電流15Aならば出力は3000kW(3kW)となります。出力が2倍になれば、同じ電気容量のEVでは、単純計算だと充電時間は2分の1になります。

普通充電器の設置ついての補助金の対象は、民間事業者や地方公共団体です。ただし、EVから家に給電できる充電器の購入では、年度によって関係省庁が補助金を設定する場合もあります。そのほか、市町村でも独自の補助金制度がある場合もあります。

サービスエリアなどに設置されている急速充電

急速充電はその名のとおり一気に充電することを示します。方法は、電源に三相200Vの交流を使います。普通充電で使う単相100Vや200Vの交流は一般住宅などで使われているのに対して、三相200Vは工場など比較的に規模の大きな施設向けに使用されています。

三相200V交流から急速充電器の中で直流に変換し、EVに対して高い電力で充電を行う仕組みです。そのため、急速充電の設置には時間と工費がかなりかかります。充電器メーカー関係者によりますと、出力50kW程度の急速充電器の価格は500万円前後で、設置のための費用は設置環境によってかなり差はあるが、充電器本体の価格と同等、またはそれ以上になると言います。つまり1000万円超えということになり、一般住宅で設置することは事実上、不可能だといえるでしょう。

それから日本の場合、東京電力が主体となり2000年代後半から急速充電の技術規格であるCHAdeMO(チャデモ)が考案されました。これに対して、欧米ではCCS(コンボコネクター方式)という独自規格があり、チャデモとは事実上、対立する図式になっています。そのため、輸入ブランドのEVでは、日本国内仕様としてCHAdeMOへの対応のため充電口などのハードウエアと充電を制御するソフトウエアを専用設定しています。

急速充電の利用時間は、一般的に1回30分間。充電器の出力によって充電できる電気容量が変わることを十分承知する必要があります。なお、充電を待っている人がいる場合、2回連続での充電はルール違反です。

急速充電器で進む高出力化

充電器の性能でもっとも重要なのは安全に高い出力を維持することです。出力は「電圧(V)×電流(A)=出力(W)」という計算を基本にしています。つまり、高い出力を出すためには、電圧を上げるか、それとも電流を上げるか、どちらかの方法があるということです。電圧については、国や地域の社会インフラによっても差がありますが、近年では高電圧化の傾向が高まっている印象があります。なぜならば、電圧ではなく、電流を上げてしまうと充電ケーブルが発熱するなどの課題が出てくるからです。東京電力や充電器メーカーによりますと「日本では125Aがひとつの目途」という見解を示しています。つまり、400V×125Aだと50000W(50kW)が可能です。それをポルシェなどが採用している350kWといった高出力とするためには、電圧800Vとしたり、充電ケーブルを専用オイルで冷却することが必要になります。

世界のトレンドでは今後、急速充電器はますます高出力化の傾向が高まりそうです。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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