自動運転やBEVに興味があるなら知っておきたい10のキーワード_PART2[後編]

【これからどうなる自動運転】ロボットタクシー、AI型音声認識技術 、知っておきたい最新自動運転技術

6回にわたり自動運転の過去・現在・近未来についてレポートしてきた。最終回の今回は、前回に続き、自動運転をより深く理解するためのキーワードを解説。どうしても自動運転は、イメージ先行になりがちですが、本連載を通じて、正しい理解が深まっていければ幸いです。

KEYWORD_06 ▶ Road to the L4

「ロード・トゥ・ザ・レベル4」のこと。自動運転レベル4の社会実装に向けた、経済産業省が担当する国のプロジェクトの通称です。最初の目標としては、2022年度を目途に限定エリアで遠隔監視のみのレベル4を実現するとしていました。これについては、筆者が永平寺町エボルーション大使を務める福井県永平寺町で達成しています。さらに、2023年度には、改正道路交通法により一定条件下でレベル4を行えるようになりました。これを受けて、2025年度までに、さまざまなエリアと多様な自動運転車によって、全国40カ所以上でレベル4の社会実装を目指しています。

ただし、単純にレベル4の場所や車両数を増やせばよい、といういことではないと思っています。行政や事業者は「住民ファースト」という基本に立ち返って物事を考えるべきです。レベル4はそれなりにコストもかかりますので、「この地域に自動運転が本当に必要なのか?」という視点が大事。もし、住民から強い要望がなければレベル4は必要ありません。

KEYWORD_07 ▶ ロボットタクシー

レベル4で走行するタクシーの俗称。米西海岸サンフランシスコ周辺ではすでに実用化されています。サービス事業者としては、GM(ゼネラルモーターズ)がベンチャーを子会社にしたGMクルーズや、グーグルの親会社であるアルファベット傘下のウェイモなどがあります。テレビニュースやYouTubeなどで、こうしたロボットタクシーが走る様子を見たことがある人もいるでしょう。運転席には誰もいない、まさにドライバーレスの状態で走ります。アメリカでは2010年代後半から、ウーバーやリフトなどライドシェアリングが一気に普及。そのため、ユーザーはスマートフォンを通じた予約で、ピンポイントで自分の目の前に迎えのクルマが来ることに慣れているという状況です。それが完全自動化していく、というステップを踏んだ感じがするので、アメリカ人にとってはロボットタクシーに対する違和感は少ないようです。ただし、事故などはすでに起こっていますので、さらなる法的または技術的な対策が必要です。

KEYWORD_08 ▶ 物流MaaS

「MaaS」とは、「モビリティ・アズ・ア・サービス」。定義はさまざまあるのですが、一般的にはITによって多様な交通手段を効率的に運行するシステム、というイメージだと思います。「MaaS」にもいろいろな分野があり、主流は地域の路線バスやコミュニティバスの事業再編を行うための、行政や交通事業者にとっての全体戦略といった位置付けです。そのほか、旅行に出かけた時、地元の電車、バス、タクシー、レンタカー、そして観光地への入場などをスマートフォンのアプリでトータルコーディネイトする仕組みは、「観光MaaS」と呼ばれます。そして、最近注目されているのが「物流MaaS」です。トラックや貨物列車による物流で、大手から中小までの事業者の運行システムの連携、またトラックメーカーや軽貨物メーカーの車載データの連携を行います。さらに、慢性的なトラックドライバー不足に対応するため、自動運転レベル4のトラックを、まずは夜間に高速道路で運用することを目指し2024年度には新東名で実証試験が始まります。

KEYWORD_09 ▶ OTA

「オン・ジ・エア」の略称です。具体的には、クルマの車載ソフトウェアを通信で書き換えることです。一般的に、車載されているコンピュータは数10から100個近くとさまざまありますが、なかでも「OTA」への対応が注目されているのが、「ADAS(先進運転者支援システム)」や自動運転の領域です。この分野で先行したのが、アメリカのテスラです。「ADAS」の範囲である自動運転レベル2向けのハードウエアを搭載して工場から出荷するのですが、レベル2としての技術が進化するごとに、新しいソフトウェアプログラムを「OTA」で供給する仕組みです。近年、「ADAS」での技術革新のスピードがとても速いため、クルマのマイナーチェンジやフルモデルチャンジのタイミングでユーザーに新車に買い替えてもらうのでは、ソフトウェアのサービスが後手に回ってしまいます。また、ユーザーとしても当然、買い替えのコストがかかります。そのため、メーカーとユーザー双方にとって「OTA」はとても有効な解決方法のひとつではないでしょうか。

KEYWORD_10 ▶ AI型音声認識技術

最近なにかと話題の「ChatGPT(チャットジーピーティ)」ですが、自動車の分野では今後、自動運転でさまざまな活用方法が考えられるでしょう。特に、レベル4での自動運転の場合、ドライバーレスとなりますので、乗車する人がクルマに対して質問があれば、その時々の状況に応じてChatGPTなどの技術を介した回答をする仕組みが登場することは、容易に想像できます。

そこまでの技術ではないですが、すでにクルマの車載音声認識システムはかなり高いレベルに達しています。2010年代や2020年初頭あたりまでは、「車載の音声認識はあまり良く反応しない」、「タッチパネルで直接操作するほうが楽」、または「スマートフォンの音声認識と比べて、車載の音声認識の性能は低い」とった感想を持つ人が多かったと思います。それが、直近での車載音声認識技術はスマートフォンと同等、またはそれ以上のレベルとして量産されている印象があります。今後、AI技術を取り込んだ進化型車載音声認識が実現することでしょう。

PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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