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ジャガー・ランドローバーの直列6気筒“インジニウム”

  • 2019/08/28
  • Motor Fan illustrated編集部
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またもや直列6気筒の復活である。ジャガー・ランドローバー社(JLR)のガソリンエンジンシリーズ“インジニウム”に直6が追加された。

 なぜ直列6気筒なのか、V6に対してどのようなメリットを見出したのかということについて、JLRのエンジニアはコストと軽量化を理由に挙げている。ともにシリンダーヘッドがひとつに集約できることによる機械構成の簡素化とダイエットを指し、実際に直列6気筒にスイッチすることで従前のV6に対して12kgの軽量化を実現したという。BSFCは229g/kWh。

 さてこのインジニウム6、最新技術てんこ盛り、全部載せの状態である。

 ・電動スーパーチャージャー
 ・ツインスクロールターボ
 ・連続可変リフト機構
 ・連続可変タイミング機構
 ・48Vマイルドハイブリッドシステム
 
 かつて、こんなにゴージャスなエンジンがあっただろうか。順にトピックを追ってみよう。

 電動スーパーチャージャー(eSC)の電源は48V。SAEのレポートによれば、0.5秒で65000回転に達するレスポンスで、その狙いはもちろんターボラグの解消である。サプライヤーはValeo。ツインスクロールターボチャージャーには排気干渉の低減という目的があり、得られる効果としてラグの解消もあるのだが、それに加えてさらにeSCで極低回転時に大トルクを創出するコンセプトだ。
 
 直列6気筒のツインスクロールというと、エキゾーストマニフォールドはどのように分流されているのかと調べてみると、例えばBMWでは1-2-3番と4-5-6番で分けていた。点火順序を調べられなかったので確実ではないのだが、おそらく順当に1-5-3-6-2-4番だとすると、ふたつに分けられた排気流路には240度ごとに排ガスが等間隔で流れることになる。

(参考)BMW・N55エンジンのエキゾーストマニフォールドとツインスクロールターボ。(FIGURE:BMW)

 ずいぶん久しぶりに連続可変リフト機構(VVL)の文字を見た気がする。BMWはこのジャンルでValvetronicを採用し続けている数少ないブランドだが、トヨタのValvematicや日産のVVEL、三菱自動車のMIVEC(SOHC)などはその後が続かないVVLである。ホンダのVTECは採用が続くが、こちらはスイッチング式。

 ではインジニウム6のVVLはどのような機構かといえば、シェフラーのMultiAirというのがその答え。ご存じの方もいらっしゃるかと思うが、インジニウム4でも高出力版ではMultiAirを採用していて、「6」でもそれを引き続き採用した。MultiAirとはカムシャフトの動力で油圧を発生させ、ポペットバルブの開き動作は高圧の油圧に頼るというシステム(閉じ動作はコイルばね)。自在のタイミング(回数までも含めて)/リフト量の制御が可能というのが何よりの美点で、FCA社でも各ブランドのエンジンに採用展開している。なお、VVT(連続可変タイミング機構)については吸排気ともに備えている。

インジニウム4に搭載されるMultiAir。インジニウム6にも採用された。

 48Vマイルドハイブリッドシステムについては、eSCに加えてBSG(ベルト駆動スタータージェネレーター)を装着した。電源はリチウムイオン電池で、容量は不明。減速時の回生、スムースなアイドルストップからの再始動などを実現する。発進時のアシストについてはeSCによるラグ解消が一役買う格好だが、BSGはダイレクトにメインシャフトを瞬時に駆動することから、両者のシナジーでパフォーマンスを高めているのだろうと思われる。

 余談にはなるが、直列6気筒は「シルキースムーズ」というように言われているものの、実際の現象を解析するとそうではない。厳密に言えば、機械的構成による往復慣性力がキャンセルされるのは確かだが、運転時にはアクセルオフのときの振動が目立つエンジンである。ただし、回転域によっては慣性力トルクと筒内圧トルクがきれいに一定間隔でそろう領域があり、その性質が「スムーズ」と言われる所以か。このあたりはMFi連載の「クルマの教室」(155号掲載)で詳しく説明されているので、ぜひご一読願いたい。

■ Ingenium straight 6
シリンダー配列 直列6気筒
排気量 2996cc
内径×行程 83.0×92.29mm
圧縮比 10.5
最高出力 294kW
最大トルク 550Nm
給気方式 ターボチャージャー+電動スーパーチャージャー
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL ◯/◯

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