広島のマツダが幾十年も磨き続けた、スポーツカー用ロータリーの集大成
ドイツの技術者・ヴァンケル博士が考案したヴァンケルエンジンを、NSUからパテント購入した東洋工業が実用化に成功、1967年にはコスモスポーツに世界初となるロータリーエンジンを搭載した市販スポーツカーを発売した。開発のキッカケは1963年から1964年に遡り、当時国会で『特定産業振興臨時措置法案(通称、特振法)』が審議されたことを端に発する。
当時、多数あった国産メーカーを合併させて少数化し、一社あたりの競争力を高めることを狙った法案の影響、東洋工業も例に漏れず、他社と合併される可能性があった。広島で創業し、広島の戦後復興と発展に貢献したいと願うマツダは、マツダというメーカーの独自性を確立して抗うため、社運をかけてロータリーエンジンの実現化に邁進し、実現化させたという歴史を持つ。
コスモスポーツ用に誕生したエンジンは10A型であり、以降は改良を重ねながら載せられた。乗用車としてコスモスポーツだけでなく、サバンナRX-3、ユーノスコスモ、RX-7、RX-8などに、果てにはパークウェイロータリー26と呼ばれるマイクロバスにもロータリーエンジンが搭載されるに至る。


以降も、マツダはロータリーエンジンを改良し続けたが、13B-RENESISを搭載するRX-8を最後に、一度市販車のラインアップから消えている。しかし、2023年にレンジエクステンダーEVのMX-30 R-EVに搭載される1ローターエンジンが8Cの名で復活を果たす。このエンジンは生み出したエネルギーは直接タイヤに伝えず、あくまで駆動用モーターを回すための発電用エンジンとして搭載されているものだ。
13B-MSPは2003年に市販されたRX-8に搭載された。正式なエンジン型式は前述のとおりだが、「新しいロータリーエンジンの創生」という意味を組み合わせた「RENESIS」という愛称も与えられた。語源はロータリーエンジンを意味するREと、創生、発端を意味するGENESISの2語を掛け合わせたものである。
13Bといえば、同じ13Bのパワーユニットを積むFD3S型RX-7の13B-REWを思い出す人も多い。この2基を比べると、RX-8のRENESISこと13B-MSPでは自然吸気エンジンになったほかに、吸排気ポートをともにサイドポート(サイドハウジングに設けられた孔。ローターハウジングに設けられたものをペリフェラルポートと称する)に変更した点が挙げられる。こうすることで、今まであった吸気ポートと排気ポートのオーバーラップをゼロにできるため、未燃焼ガスをそのまま排気させることなく、次の行程での燃焼に持ち込むことができる。




ローターハウジングとローター。「小さく、軽く、薄く」の特徴が理解できる。単室容積は654ccで2室を備える。ちなみに、税額算出の際には「1.5」を乗じ、654cc×2室×1.5=1962ccの計算となる。
排ガス対策の観点からも効果的な改良であったが、もちろん課題もたくさんあった。最初期の試作エンジンでは、排気ポートにオイルの燃えカスであるカーボンが堆積してしまう現象に悩まされていた。しかし、これは排気ポート周辺に極細の冷却水流路を設けることで堆積量を大幅に減らすことに成功している。こうした技術的取り組みを積み重ねることによって、ロータリーエンジンの持ち味である自然吸気ながらよどみなく回る高回転・高出力を実現しながら、かつ苦手としてきた燃費改善や排ガスのクリア化も達成した。
今なおマツダを象徴する技術として大勢に語り継がれるマツダのロータリーエンジン。その進化の裏側には、いつの時代も同社の技術者たちによる試行錯誤と、あくなき挑戦心に支えられながら進化し続けていたエンジンである。
マツダ 13B-MSP RENESIS 主要スペック
エンジン形式:ヴァンケル型2ローター式
総排気量:654cc×2
b値(ボア相当)×K値(ストローク相当):180mm×60mm
ローターハウジング厚み:80mm
圧縮比:10
最高出力:184kW/8500rpm
最大トルク:216Nm/5500rpm
吸気方式:自然吸気
ローターハウジング材料:アルミ合金
サイドハウジング材料:鋳鉄
ローター材:特殊鋳鉄
エキセントリックシャフト材:合金鋼
吸気ポート開度(度[°]):P3/S12/A38
吸気ポート閉度(度[°]):P65/S36/A80
排気ポート開度(度[°]):50
排気ポート閉度(度[°]):3
燃料噴射装置:EGI
燃料噴射圧力(MPa):0.39


