三菱重工業:カーボンニュートラル実現に貢献するナトリウム冷却高速炉技術に関する日米協力の推進について(米国テラパワー社との協力)

Terrapower “Natrium”
日本原子力研究開発機構(JAEA)と三菱重工(MHI)、三菱FBRシステムズ(MFBR)はARDPの中でナトリウム冷却高速炉「Natrium」を開発している米国テラパワー社と協議を進め「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書き」を令和4年1月26日に締結した。この覚書きによって、JAEAのもと、国内産業界との連携も可能となる。

温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル実現に向けた動きが世界的に加速しており、多くの国で脱炭素エネルギーとしての原子力の重要性が指摘されている。我が国も海外の次世代革新炉開発と連携して多様な原子力技術のイノベーションを加速していくこととしている。その一環として、米国エネルギー省のサポートの下、先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)としてナトリウム冷却高速炉を含む第4世代炉の実証炉開発を開始し世界をリードしようとしている米国と、高速炉開発協力を進めようとしている。その第一段階として、今般、日本原子力研究開発機構(JAEA)と三菱重工業(MHI)、三菱FBRシステムズ(MFBR)は、ARDPの中でナトリウム冷却高速炉「Natrium」を開発している米国テラパワー社と協議を進め「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書き」を令和4年1月26日に締結した。この覚書きによって、JAEAのもと、国内産業界との連携も可能となる。

脱炭素エネルギーとして原子力エネルギーを持続的かつ安定に利用していくためには、高い安全性、経済性に加えて、放射性廃棄物の減容・有害度低減やウラン資源の有効利用等を実現する第4世代原子力システム(注1)の開発が必要である。その中でもナトリウム冷却高速炉(注2)は最も有望な技術のひとつと位置付けられている。高速炉開発の「戦略ロードマップ」(2018年12月原子力関係閣僚会議決定)では、「民間によるイノベーションの活用による多様な技術間競争の促進」と並行し日米、日仏等との国際協力により「実用化のための基盤技術の確立とイノベーションの促進」をその方針としている。また、「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月)においても、国際連携を活用して高速炉開発を着実に推進する方針としている(米国や仏国との国際連携を、JAEAの実験炉・原型炉の運転・保守データ、試験施設等も活用して推進)。

2020年5月14日に米国エネルギー省(DOE)は、米国内原子力産業界を支援する先進的原子炉設計の実証に対し資金負担によりこれを支援するARDPを開始した。そこでは、ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社の高速炉概念「Natrium」を2020年10月13日にARDPの支援対象として選定し、世界の次世代炉開発をリードすべく2028年のナトリウム冷却高速炉の実証炉の運転開始を目指し、その開発を開始した。なお、「Natrium」はテラパワー社とGE日立・ニュクリアエナジーの技術である。

このため「戦略ロードマップ」の方針および米国の開発状況を踏まえ、日米におけるナトリウム冷却炉高速炉技術開発に係わる協力の第一段階として、テラパワー社の「Natrium」開発への協力について覚書きを締結した。テラパワー社は、「Natrium」の運転開始のため、「常陽」、「もんじゅ」、JSFR設計(注3)等を通して得られた高速炉に係る原子力機構(JAEA)のノウハウや試験施設、日本企業の機器設計・製造技術に注目しており、JAEA、MHI、MFBR、テラパワー社の四者で、相互の技術の情報交換を行った上で、燃料交換機や破損燃料検出系を含むナトリウム冷却炉に特有な技術など高速炉の開発協力について協議を進めることに合意したものである。日本側産業界として、日立GEニュークリア・エナジー、東芝エネルギーシステムズ、富士電機等の「常陽」、「もんじゅ」建設に携わった知見を活用し、協力への参画も含め検討していく。

(注1)第4世代原子力システム
米国エネルギー省(DOE)が2030年頃の実用化を目指して2000年に提唱した次世代の原子炉概念で、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の目標を満足するもの。
(注2)ナトリウム冷却高速炉
金属ナトリウムを冷却材として用いる高速炉。
(注3)JSFR設計
高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)プロジェクトにおいて検討された、次世代高速炉の概念。

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