2023年秋のモデルチェンジでスバルはBRZのマニュアルトランスミッション車にアイサイトを搭載!! 追従クルーズコントロール&プリクラッシュブレーキでスポーツモデルも安心・安全! WRX STIはまだか!?

スバルのブランドイメージの大きな柱である先進安全機能「アイサイト」。これまでユーザーから熱望されながら、マッチングの難しもありマニュアルトランスミッション(MT)車には搭載されてこなかった。しかし、水面下では開発が進んでいたようで、遂にMT車への搭載がアナウンスされた。その第一号に選ばれたのがスバルのスポーツモデルの双璧の一方であるBRZだった。

多くのユーザーが心待ちにしたMT車へのアイサイトが実現する! 搭載車種はBRZ。2023年秋のモデルチェンジで搭載されることが発表されたのだ。ただし、価格や搭載モデル、オプションになるのか標準装備なのかは「秋の発表をお待ちください」とのこと。それでも、スバルのMT車にアイサイトが搭載可能になったことは喜ばしい。

BRZのMTにアイサイトが搭載される。

自動ブレーキの義務化によりアイサイトを搭載できないMT車は消滅寸前

販売台数100万台あたりに死亡事故数
スバルの安全への取り組み

スバルは2030年までに死亡事故ゼロへ向けて様々な取り組みを行っている。日本最大の航空機メーカーだった「中島飛行機」をルーツに持つスバルだけに安全へんぼ取り組みには歴史とこだわりがある。
特に「アイサイト」の普及からその効果は大きく、さらにアイサイトが進化するごとに効果は高まっている。

アイサイト搭載車の追突事故率

しかし、アイサイトはそのシステムや制御の難しさから長らくMT車にアイサイトは搭載されてこなかった。さらに自動ブレーキの義務化により、アイサイトが搭載できないMT車はラインナップから消えた。モデルチェンジのタイミングでギリギリBRZは生き残ったが、WRXに至ってはCVTのS4のみという状況だ。

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そんな状況からスバルのMT車は実質BRZのみという状況になっていた。そのBRZもMTとATんぼ販売比率が6:4とMT車の販売比率が高い。スポーツ走行をするユーザーが多いモデルではあるが、だからと言って「安全」「安心」を標榜するスバルはこのままでいいとは考えていなかった。

アイサイトの安心・安全をMTならではの動作を違和感なく提供

MTモデルに搭載されるアイサイトの機能は、現在スバルの他車種に搭載されるものと基本は同じとしつつMT車ならではの動作に合わせて最適化されているという。逆にMTであるが故に搭載されない機能もある。

MTモデルとATモデルのアイサイトの機能の違い

MT用アイサイトのポイントの1つは義務化された自動ブレーキ(プリクラッシュブレーキ)への対応だ。
MT車では自動ブレーキでクルマが停止する際にエンストすることでブレーキの油圧が抜けてしまうという問題があった。今回、エンスト状態で油圧弁を閉じてしまうことでエンスト状態でもブレーキが効き続けるシステムを採用した。

プリクラッシュブレーキ作動テスト中の様子。

プリクラッシュブレーキはクラッチやシフトポジションの状態如何に関わらず作動し、ブレーキ制御中にエンストしても停止するするまで制御は継続される。
また、先行車との車間が近づいた場合、クラッチが切れた状態、シフトがニュートラルの時、追従機能付きクルーズコントロール使用時といった時も作動する。動作対応速度は1km/hで、ニュートラルやクラッチを切っている状態(空走時)では8km/h以上となる。
なお、スポーツ走行で機能をOFFにした状態でエンストするとONにリセットされる。

クリアランスソナー作動画面

AT車の誤発信やMTという性質上搭載はされず、後退時ブレーキアシスト(RAB)もまた非搭載となっている。これは、踏切などで遮断機を押し除けて後退脱出しなければならないような状況を想定しての措置だそうだ。ただし、クリアランスソナーを搭載しており後退時の安全をアシストしてくれる。

追従機能付きオートクルーズコントロール

もうひとつの目玉機能が追従機能付きクルーズコントロールだ。
スバルは、例えばサーキットなどスポーツ走行を楽しむ際に、現地までの移動にクルーズコントロールを使うことで、移動の疲労を軽減してより楽しむことができるし、安全・安心にも寄与すると考えている。

追従機能付きクルーズコントロールのスイッチはATモデル同様。

ACCの操作は基本的にATモデルと変わらず、ステアリング右下のレバースイッチを使用して設定するのだが、車速が30km/h以上でシフトポジションが2速〜6速であることが作動条件として設定。ACC作動中も自由にシフトチェンジはできるが、速度が25km/h以下になったり、クラッチを踏んだ状態やニュートラルで5秒以上走行するとキャンセルされる。よほどのことでもない限り、シフトチェンジでに5秒以上かかることはないだろう。
また、6速で30km/hはエンストしないか不安に思うかもしれないが、2.4Lの排気量によりその心配はない。

BRZ(MT)用アイサイトの機能
・プリクラッシュブレーキ
・追従機能付きクルーズコントロール
・車線逸脱・ふらつき警報機能
・先行車発進お知らせ機能
・後方ソナー警報機能(クリアランスソナー)

アイサイトの高い衝突回避、衝突被害軽減、運転負荷軽減の機能をMT車の特性に合わせた制御を行い、リアルワールドの幅広いシーンでの安定した動作を実現。ドライバーに違和感を覚えさせず、運転する愉しさと安心を高い次元で両立しているという。

BRZに搭載されるアイサイトのステレオカメラ。基本的なシステムはAT車と同様。

なぜBRZだったのか? 他車種への展開の可能性は?

MT車へのアイサイトの搭載は長らくユーザーの期待するところであり、スバルもそれに応えようとしてきた。しかし、アイサイトとMTのマッチングが難しく実現してこなかった。それが2023年秋からBRZで実現することになる。
BRZがその嚆矢として選ばれたのは、現在のスバルのラインナップで唯一のMT車であり、尚且つAT車にはすでにアイサイトが搭載されていることが大きい。テストを重ねてユーザーが満足いくレベルに仕上げるためにはBRZが最適だったということだ。

スバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー・小林正明氏

発表の場でスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー・小林正明氏は「まずできることから」と述べ、BRZでの採用を皮切りに今後スバルにアイサイトを搭載したMTモデルが追加されることについては明言はされなかった。
しかしやはり、BRZと並びスバルのスポーツイメージの両輪であるWRXにもアイサイトを搭載したMTモデル=WRX STIが追加されることは多くのユーザーが期待するところだろう。

先代のWRX STI EJ20 Final Edition
北米で販売されるWRXの2023年モデルには「Base」グレードに6速MTの設定がある。
北米販売されるWRXの6速MTモデルのインテリア。6速MTモデルにはアイサイトは搭載されない。

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