三菱造船が開発した世界初のEVバイオマス燃料輸送船「あすか」が竣工

EVバイオマス燃料輸送船「あすか」
e5ラボ社および三菱重工グループの三菱造船が普及を目指す“内航標準ハイブリッドEV船”のデザインを採用した、総トン数499トンのバイオマス燃料輸送船「あすか」(以下、本船)が6月30日に竣工し、建造造船所である本田重工業から旭タンカーに引き渡された。

本船には、三菱造船が開発し、Marindows社を通じて内航海運への普及を目指すポータブル運航支援システム“ナビコ”が搭載され、今後パイロット試験を経て2024年春からの販売開始が計画されている。将来的な“内航標準ハイブリッドEV船”の普及により、内航船業界のCO₂排出量削減ならびに船員の作業負荷軽減が可能になることに加え、“ナビコ”の活用が運航安全性の向上が実現される。

“内航標準ハイブリッドEV船”は、プロペラ、モーター、配電盤、蓄電池、発電機などの電気推進に関わるハードウェアと、それらを安全・効率的に制御するソフトウェアをモジュール化した標準システムを採用しており、化石燃料を必要とする従来のディーゼル主機を持たず、大容量蓄電池と発電機のハイブリッドで推進モーターを駆動する。三菱造船製の高性能ツインスケグ船型を採用することで、推進馬力を従来船より20%以上削減しており、航行中のCO2排出量を削減するとともに、荷役、離着桟、入出港など港湾でのゼロエミッションオペレーションを実現する。また、騒音・振動の低減による船内快適性向上、高度な知識と経験を要する煩雑なディーゼル主機メンテナンスの削減、操船性向上による離着桟オペレーション負荷低減などのメリットもあり、船員の作業負荷低減を可能にしている。

ポータブル運航支援システム「ナビコ」

“ナビコ”は、タブレット端末を利用し導入コストを抑えたポータブルな運航支援システムである。電子参考図表示システムを基盤として、自船・他船の位置表示の他、航海計画、トラッキング、衝突座礁警報、避航計画支援、音声入出力など多彩な機能を持ったプロユースに耐える仕様となっている。タブレット向けのタッチ操作型ユーザーインターフェースを採用しており、ユーザーフレンドリーな操作感を実現している。“ナビコ”は三菱造船が90年代から提供してきたコンソール型運航支援システム“Super Bridge-X”の技術を流用しており、実績に裏付けられた高い信頼性を有している。また”Super Bridge-X“は、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」でも中核的なシステムとして実証試験の成功を支えた。ポータブル運航支援システム“ナビコ”は、本船を含む複数船でのパイロット試験を経て、2024年4月からの販売開始が予定されている。

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