本システムを2018年度に最初に導入した西日本製鉄所(倉敷地区)熱延工場においては、年間50時間以上(生産量3万t以上)相当のトラブル抑止効果が確認されている。これまでに、西日本製鉄所(倉敷・福山地区)および東日本製鉄所(千葉・京浜地区)の全地区熱延工場に本システムを導入した。全地区共通のシステムを導入し、異常診断モデル等を全地区で容易に共有できるようにすることで、全社レベルで最適なモデルの構築を推進している。今後は、製銑や製鋼をはじめとする他製造プロセスにも展開していく。
本システムでは、ビッグデータ解析技術により、電流・圧力・流量・温度・振動をはじめとする操業状態を示す膨大なデータを効率的かつ網羅的に解析し、正常時の基準値に対する外れ度合いを異常度として指標化することで、過去に経験したトラブルだけではなく、想定外のトラブルも未然に防止することができる(図1)。また、異常度の経時変化を大きさに応じてマップ化することで、異常が発生している装置・部位を即座に特定し、適切な保全アクションにつなげることができる(図2)。
JFEスチールは「JFE Digital Transformation Center」(JDXC)を開設し、製鉄所・全社一貫CPS(サイバーフィジカルシステム)の構築を進めるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進することで、革新的な生産性向上および安定操業の実現を目指している。