アンモニアを燃料として広く利用するためにはアンモニアのサプライチェーンの構築が必要だが、現在のアンモニアの用途は限定的であり、その受入・貯蔵のためのインフラは不十分である。そこでIHIは、これまで培ったアンモニア受入・貯蔵技術を拡充することで、輸入される大量のアンモニアを効率的に受け入れるインフラを早期・低コストで確立するための大型アンモニア受入基地(*2)の開発に着手した。現状では限定的な受入設備規模を、液化天然ガス(LNG)受入基地と同規模へ大型化することを目指しており、2025年頃の開発完了を目指す。
2050年カーボンニュートラルという日本政府の目標の実現に向け、アンモニアを火力発電の燃料として利用することへの期待が高まっている。2021年6月に閣議決定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2050年に、現在の国内アンモニア消費量の約30倍となる、年間3,000万トンの需要が生じると想定されている。アンモニアは既に肥料や化学製品の原料として流通しているが流通量は限定的であり、今後の燃料需要に応えるためには、LNGと同様の流通形態が必要になると想定される。
そこでIHIは、大型アンモニア受入基地の開発のため、燃料アンモニアの大量需要が見込まれる地域を想定し、運用および防災に関する設計条件の検討を開始した。これまでに前例のない大型アンモニア受入基地の開発には、IHIが保有する腐食に関する知見や材料に関する実験技術を利用して、従来のアンモニア受入基地の数十倍規模への大型化を進める。また、受入基地の実現には貯蔵タンクの大型化が必須であるため、LNG級大型アンモニア貯蔵タンクの開発にも着手した。
(※1)燃料としてのアンモニアの特長アンモニアは水素を高密度に含み、扱いやすいという優位性から、水素エネルギーの高効率かつ低コストな輸送・貯蔵手段(エネルギー・キャリア)となるほか、火力発電の燃料として直接使用することも可能。既に肥料や化学製品の原料として広く利用されているため、製造・輸送・貯蔵までの一貫した技術がすでに確立している。炭素を含まず、燃焼時にCO2を排出しないことから、発電分野の脱炭素化における有望な燃料と期待されている。
(※2)受入基地国内外から船で輸送されてきた液化燃料等を受け入れて貯蔵し、需要に応じて再度ガス化し、パイプラインで発電所等の消費先に送り出す施設。