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製鉄プロセスでは、高炉ガス等の可燃性ガスやスラグをはじめとする副産物が生成される。本研究開発では、これらの副産物の有効利用等を通じて、CO2 排出の大幅な削減を目指す。
研究開発①:「CO2 を用いたメタノール合成における最適システム開発」
■ 技術開発分野:化学品へのCO2 利用技術開発
■提案事業者:JFE スチール株式会社、RITE
■事業期間:2021 年度~2025 年度
■概要:
製鉄所等の排ガスに含まれるCO2 から基礎化学品であるメタノールを合成するCO2 有効利用プロセスを開発する。製鉄所の高炉ガスは CO2 濃度が比較的高く、副次成分として CO やH2 を含むという特徴があり、これらを最大限利用することで、メタノール合成の低コスト化・高効率化を図る。本開発では、圧力スイング吸着法(PSA)(※1)による低コスト型CO2 分離、およびCO2 から高効率なメタノール合成が可能なH2O 膜分離型反応器(※2)の技術開発を進めるとともに、前処理設備やメタノール合成時の反応生成水のリサイクルも含めた最適な全体システムの構築を目指す。
■ 研究開発項目:
(1) 低コスト型CO2 分離PSA 開発(JFE スチール)
(2) 高効率メタノール合成反応器開発(H2O 膜分離型反応器)(JFE スチール)
(3) 実用的脱水膜開発(RITE)
(4) メタノール合成システム最適化(JFE スチール)
(※1) 圧力スイング吸着法(PSA)
Pressure Swing Adsorption の略。粘土鉱物の一種であるゼオライトや活性炭をはじめとする吸着剤について、ガス吸着量が圧力によって変化する現象を利用してガス分離を行う方法。分離するガス種に応じて吸着剤および圧力などが選定される。
(※2) H2O 膜分離型反応器
H2O 選択透過性を有する特定のゼオライト膜(RITE 開発)により、CO2 からのメタノール合成時に生じる反応生成水を分離除去しながらメタノール合成を行うことで、高い反応効率が得られる新方式のメタノール合成反応器。当社とRITE にて共同開発中。
研究開発②:「製鋼スラグの高速多量炭酸化による革新的CO2 固定技術の研究開発」
■ 技術開発分野:コンクリート、セメント、炭酸塩、炭素、炭化物等へのCO2 利用技術開発
■ 提案事業者:JFE スチール株式会社
■ 共同実施先:愛媛大学
■ 事業期間:2021 年度 ~ 2025 年度
■ 概要:
鉄鋼生産の副産物として生成する高温状態の製鋼スラグに、石炭利用産業から排出される CO2を吹き込むことにより、製鋼スラグ中の酸化カルシウム成分に、短時間で多量に CO2 を固定して炭酸塩化する(※3)革新的な技術を開発する。同時に、CO2 固定化後のガスの熱を回収することでエネルギー効率を高め、プロセス全体での CO2 固定量および削減量の最大化を図る。また、炭酸塩化した製鋼スラグは、需要が大きな道路用鉄鋼スラグとしての利用を図る。
■ 研究開発項目
(1) 製鋼スラグの高速多量炭酸化技術の開発(JFE スチール)
(2) スラグ炭酸化メカニズムの解明(JFE スチール/愛媛大学)
(3) 熱回収技術の開発(JFE スチール)
(4) 溶融製鋼スラグの凝固・熱間破砕技術の開発(JFE スチール)
(5) 熱間破砕・炭酸化スラグの道路用鉄鋼スラグとしての評価(JFE スチール)
(※3) 炭酸塩
炭酸イオン(CO32-)を含むイオン性結晶物質の総称。CO2 と酸化カルシウム(CaO)との化合物であ
る炭酸カルシウム(CaCO3)は代表的な炭酸塩であり、石灰石の主たる成分。