5G・6Gなど次世代高速通信では、高速・大容量のデータ通信が行われるため、スマホなどの携帯端末に搭載される電子部品の数が増えることから、電子部品の小型化と高密度実装化が必要とされている。これに伴い、電子部品の絶縁層に使用されるポリイミド材料には、より微細な加工が要求されている。
これまで、耐薬品性や信頼性に優れるネガ型の感光性ポリイミド材料が絶縁層に多く採用されてきたが、光透過性が低いことから、厚みが50μmより増すと感光性が低下し、微細な加工ができなかった。また、硬化後の熱応力が高く、反り量が大きくなることで、加工時の信頼性が低下することも課題となっていた。
東レは、長年蓄積してきた機能性ポリイミドの設計技術を駆使し、光透過率を高め、光反応性を制御することで、100µm厚みで直径10µmのビア※2を加工できるネガ型感光性ポリイミド材料の開発に成功した。また、露光時の光反応によるポリイミド樹脂の架橋密度を制御し、硬化収縮を低くすることで、一般的なポリイミド材料に比べ、熱応力を半分以下に抑え、反りを軽減することが可能となった。
本材料の適用により、電子部品の小型化や半導体パッケージの配線微細化、信頼性の向上が可能。開発品は、ワニス・シート両方での製品展開を目指し、現在試作品の出荷を進めている。さらに今後、低熱膨張係数のグレードや、低誘電・低誘電損失のグレードを新たにラインナップに加えることで、次世代の通信技術を支える半導体デバイスや電子部品などへの採用を目指す。なお、東レは、2022年2月15日から開催されるWafer level package symposium2022で本開発品について発表する予定。
1)ネガ型感光性ポリイミド:光照射により、露光部では光硬化反応による架橋構造が形成され、アルカリ水溶液や有機溶媒などの現像液に対して不溶化するが、未露光部は現像液に溶解することでビアやラインなどのパターンを形成することができるポリイミド
2)ビア:多層基板などの層間で配線と配線を接続するための穴