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新たに開発したガラスモールド成形工法と金型技術により低価格化(パナソニック従来工法比 約1/2)(※1)を実現するとともに、回折レンズのほか、世界初(※2)となる接着剤不使用で高気密なフレーム一体レンズ(ヘリウムリーク試験でリーク量 1×10-9 Pa・m3/sec以下)など、さまざまな形状のレンズ製作が可能となったので、試作受注を開始する。低価格で高品質な遠赤外非球面レンズの量産を通して、遠赤外センサーモジュールの普及と高性能化に貢献していく。
※1 パナソニック従来工法比(2022年1月27日現在)
※2 遠赤外用ガラス材料とフレーム材料のみによる接着剤等を用いない高気密なフレーム一体レンズ成形において(2022年1月27日現在、 パナソニック調べ)
近年、環境保全の高まりから遠赤外センサーは熱検知やモニタリングによるエネルギーマネジメントの重要な役割を担っている。また、車載分野では、自動運転の需要の高まりから、可視光カメラではとらえることのできない夜間に、遠方の人物や動物を検知できるセンサーとして普及が拡大している。このような状況の中、遠赤外センサーは高画素化・低価格化が進み、センサーに使用されるレンズにも高付加価値化が求められている。
一方で、遠赤外センサーのレンズの材料としては安価なシリコンが汎用的に用いられてきたが、透過率が低く高画素化に不向きであることから、画素が多くなるほど透過率の高いゲルマニウムの球面レンズが多く用いられている。しかしながら、さらに高画素化が進むと、球面レンズ単体による収差の影響が顕著となり、その対応には多くの球面レンズの組み合わせや非球面レンズが必要となるため、コストやサイズが課題となる。
そこでパナソニックは、可視光用非球面レンズの量産化で培ったガラスモールド成形技術をベースに、遠赤外光学系に適した高性能な非球面レンズを低コストで生産する技術を新たに確立した。特徴は、下記の通り。
・φ3~40mmの幅広いサイズのカルコゲナイドレンズを低価格で提供可能(非球面レンズ、 回折レンズ) ・レンズ外周の保護、 鏡筒への設置精度が向上する接着剤不使用でガス汚染リスクのないフレーム一体レンズを製造可能 ・センサー性能向上の実現に必要な鏡筒内の高気密化に寄与できる高気密な鏡筒タイプのフレーム一体レンズを製造可能
(1)研削・研磨工程をなくし低価格を実現するガラスモールド成形工法の前処理技術
従来のガラスモールド工法では、成形前に前加工としてガラス材料を研削・研磨する必要があった。一般的には、硝材のインゴットから所定の大きさに切り出したのち略レンズ形状まで研削するため、多くの材料を廃棄するだけでなく、そのあとの研磨も含めると多くの加工時間が必要となり、コスト高となる。さらに、カルコゲナイドガラスは従来の可視光用ガラスと比較し、高価で非常に割れやすく傷つきやすい材料であることから、これらの工程で発生する廃棄や歩留まりが、コストに影響する。
そこでパナソニックは、研削・研磨工程をなくした新たな前処理技術を開発し、これまでの前加工に掛かっていた工数コストを大幅に低減することで、レンズ価格をパナソニック従来工法比約1/2までコストダウンすることに成功した。
(2)カルコゲナイドガラス専用にカスタマイズした金型技術
カルコゲナイドガラスは成形時の温度変化による粘性の変化が大きい為、安定的にモールド成形することが困難。そこで、熱変動を緩やかにする新たな金型材料を採用した専用金型を開発した。この金型技術により、従来の可視光用ガラスの成形機をそのまま使用できること、そして高い歩留まりを達成できたことで、高品質で低価格なカルコゲナイドレンズのご提供を実現した。
(3)フレーム一体レンズを実現するインサート成形技術
カルコゲナイドガラスは非常に割れやすく、鏡筒への組付け時にレンズ周辺部が欠けやすいという課題がある。そこで、インサート成形を応用した独自工法を確立し、鏡筒との接触部であるレンズ外周に欠けを防止するリング等を配したフレーム一体レンズの製造を世界で初めて*実現した。
* 遠赤外用ガラス材料とフレーム材料のみによる接着剤等を用いない高気密なフレーム一体レンズ成形において(2022年1月27日現在、パナソニック調べ)
開発したインサート形成技術は、接着剤を使用しない為、不要な脱ガスによる副作用もない。一体成形可能なフレームの形状はリング状のものから、簡易な鏡筒形状まで様々なご要望に対応可能。
さらに、レンズとフレームの高気密化(ヘリウムリーク試験でリーク量 1×10-9 Pa・m3/sec以下)が可能。レンズとフレームの気密性が高いため、内部に配置する遠赤外センサーごとガス封止などが可能となり、内部の断熱やセンサーのカバーレスを実現できるため熱影響の減少や透過率の向上でセンサーの高性能化に寄与できる。
今後は、遠赤外センサーおよび遠赤外カメラを製造・販売している顧客の要望に沿ったレンズの試作、量産を行うことで、遠赤外センサーモジュールの普及と高性能化へ貢献していく。
本遠赤外非球面レンズの生産は、パナソニックの「くらし事業本部 光学デバイスビジネスユニット(山形工場)」「パナソニックデバイス日東株式会社」を想定している。今後は、高性能かつ低価格な遠赤外非球面レンズの販売を拡大し、遠赤外レンズ成形技術を通じた環境貢献を推進していく。