ヴォクシー/ノアが使用するプラットフォームは、プリウスと同じGA-C。ならばプリウス4WDと同じのシステムを使っているのかといえば、そうではなく、ヴォクシー/ノア用に新設計している。プリウス4WDの誘導モーター式では、ヴォクシー/ノアの車重には出力/トルクともに不十分というのが理由である。
モーターは永久磁石式で、アウトプットは最高出力30kW/最大トルク84Nm。プリウスのシステムと較べると、出力は約5.7倍、トルクは1.5倍に向上している。一方、モーターの大きさは長手方向に少し伸びただけ。ギヤトレーン系をプリウスと共用することで厚みの拡大を防ぎ、ヴォクシー/ノアの床下にきっちりと収まるサイズにまとめている。
リヤモーターの使いかたも、プリウスが発進のアシスト程度だったのに対し、ヴォクシー/ノアは最高速領域までモーター駆動を可能にしており、ドライ路面での操安性向上にも使用している。
さて、あまり多くを書いてしまうとネタバレになるのでこれくらいにしておくが、取材を終えてスペックを眺めていたら、あるアイデアがひらめいた。
「この後輪駆動ユニット、そのまま軽EVに使えるのではないか!?」
最高出力が30kWあれば、最高速度は100km/hちょっとは出るだろう(660ccのNAエンジンは38kW前後だが、メーター読みで140km/hぐらいは出る)。最大トルクは84Nmと、660ccのNAとターボの中間ぐらいだが、発進時からこのトルクが使えるので、ターボ車以上に力強くなるはずだ。
モーターの体格は、ヴォクシー/ノアの床下に収まるくらいにコンパクトだから、軽自動車でもエンジンルームに収めるのは容易なはず。バッテリーはレクサスNX450h+(PHEV)に搭載されている18.1kWのものを持ってくれば、電費を8km/kWhとしても約145km走れる。
という目で調べてみたら、三菱i-MiEVのモーター出力が30kW、バッテリー容量が16.0kWhではないか! すなわち、手持ちのユニットを組み合わせるだけで、i-MiEV同等の性能は出せるはずなのだ。常時稼働させるとなると、熱対策が必要になるかも知れないが、オイルクーラーと電動ポンプを外付けすれば、ケースに手を加える必要はない(フィラーとドレンから出し入れできるはず)。
これはグッドアイデアではないか!と思ったのだが、何ごとにも周到なトヨタだけに、そんな話はすでに進行中かも知れない。