ボルグワーナーの2ステージターボ「R2S」を載せるBMW直6ディーゼル[内燃機関超基礎講座]

ボルグワーナーのR2S。2基のVGターボを使う新しい仕様。写真はコンプレッサー側からだから、可変タービンジオメトリーの部分は見えない。
ボルグワーナーのターボチャージャーがBMWの3.0ℓ直列6気筒ディーゼルの性能向上に貢献している。「R2S」と呼ばれるこのターボシステムのハイライトは、可変タービンジオメトリーターボをふたつ組み合わせる点である。

ボルグワーナーの「R2S」は、Regulated Two-Stageターボの名前である。

ボルグワーナーの2ステージターボ、R2Sがランドローバー・ディスカバリーの2.0ℓディーゼルに採用

これまでも、高性能エンジンに採用されてきたR2S。その名前の通り、2ステージターボとは、低回転域ではひとつのタービンを駆動し、中高速回転域ではさらにもうひとつのタービンを追加して駆動して、サイズの違うふたつのタービンを段階的に使い分ける過給システムだ。

プレスリリースによると、ボルグワーナーはBMWの235kW(315ps)ディーゼルエンジンの性能向上に挑戦してきたという。
ここでいう235kWのディーゼルエンジンとはBMW B57型3.0ℓ直列6気筒ディーゼルターボエンジンのこと。B57でもっともパワフルな仕様は、なんとクワッドターボシステム。つまり、4基(高圧ターボチャージャー×2、低圧ターボチャージャー×2)を備えていた(B57D30S0式)。

2ステージターボ仕様のB57D30T2。2020年に登場した最新版である。

ボルグワーナーのプレスリリースを解読すると……
新しいR2Sは、ふたつの可変タービンジオメトリーターボ(VTGターボ、VGターボとも呼ばれる)を用いている。
VGターボチャージャーそのものは、ディーゼルエンジンでは標準的だ。可変タービン機構を持つVGターボチャージャーは、通常のターボチャージャーより高価だ。
たとえば、マツダのSKYACTIV-D2.2は、2ステージターボを採用しているが、大小ふたつのターボチャージャーのうち大きい方は可変ジオメトリーを使うが、小さい方は通常のターボチャージャーだ。
BMWの直6が採用する模様のR2Sは、大小ふたつともVGターボという点が特徴になる。
ボルグワーナーは、「可変タービンジオメトリー(VTG)ターボチャージャーを用いた2段階ターボ過給システム(R2S)は強力なブースと加速力をもたらし、同時に排出量と燃料消費を大幅に削減する」と主張する。

ボルグワーナーによれば、この最新のR2Sターボ過給システムはふたつの直列配置された電動式VTGターボチャージャーによって構成される。低回転域では小型・高圧過給機がメインにブーストをかけ、エンジン回転が増えるにつれて大型・低圧過給機が主体となるようなつくりになっている。VTGターボチャージャーを低回転域にも用いることでエンジンの機敏な動きをより向上させ、優れた加速性能を追求する。また同時にターボラグを最小限に止め、排出量と燃料消費を大幅に削減する。

「最新のVTGターボをふたつ組み合わせることで、このR2S システムは瞬時の加速と低回転域での高い燃費効率をもたらす」
とフレデリック・リサルド(Frederic Lissalde)ボルグワーナー・ターボシステムズ社長兼事業本部長は言う。
前述したようにB57型3.0ℓ直6ディーゼルのハイパフォーマンス版:B57D30S0はクワッドターボである。ミドルレンジにあたるB57D30T0が2ステージターボ仕様で、これがボルグワーナーのR2Sを搭載しているものと思われる。

BMW B57直6ディーゼル:クワッドターボ仕様。大きいターボはVGだが、小さいターボはノーマルだ。

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