世界各地のスポーツカーが性能を磨く鍛錬の場として訪れるニュルブルクリンク北コースを連続周回しても、音を上げないよう設計されたエンジンである。最高速度が300km/hに達するだけでなく、高回転・高負荷の状況で、強烈な前後左右方向のGにさらされる。吸気も排気も冷却も潤滑も、音を上げることは許されない。
特集の分類に則ってGT-Rのエンジンを観察すると、吸排気系は左右で完全に独立した設計(クロスフロータイプ)。インタークーラーは当初、横長の一体タイプを用い、上下で左右の吸気を分割する設計を検討したが、レスポンスを重視するため、左右独立式に改めた。空冷式オイルクーラーはサーモスタット付きで、オイルを適正温度まで素早く温める。
V型6気筒エンジンのヘッド上に横たわるインテークマニフォールドはクロスし、右側に見えるパイプの空気が左側のシリンダーに送り込まれる。サーキット走行や超高速巡航に対応するため、カルソニックカンセイ製ラジエーターの冷却水圧力は従来の乗用車のレベルを大きく超えて、2kg/㎠になるという。強度を確保するために板厚を増すなどして対処。一方、通気率を優先するため、ACコンデンサーのフィンピッチは粗くしている。通常1.4~1.6mmのところ、GT-Rは2.2mm。ピッチを粗くし、その後方にあるラジエーターの冷却を助けるためだ。
排気系の見どころはターボチャージャー一体のエキゾーストマニフォールド。エキゾーストポートからタービンコンプレッサーまでの容積を減らし、レスポンス向上を狙った措置。開発・製造はIHIが担当。電子制御による過給圧コントロールは日産が受け持った。ステンレス鋳鋼の薄肉設計としたことで、エンジン始動時の触媒活性化に貢献。エキマニ/ターボ別体型との比較では、始動15秒後の温度で40℃の向上効果が現れたという。
その触媒は、GT-Rがトランスアクスルのレイアウトを持つこともあってエキゾーストマニフォールド直下に置くことができている。