吸気2弁式PFIエンジンの各吸気ポートに1本ずつ、つまり気筒あたり2本のインジェクターを配置するのがデュアルインジェクター。噴射ノズルから燃焼室までの距離を短縮し、さらに噴孔径を微細化、同時に多孔化することで燃料粒を微細化し、燃焼効率の改善を図る。
従来型インジェクターの噴孔から吐出される燃料粒径が平均70μmなのに対し、デュアルインジェクターでは30μmへの微細化を実現している。従来構造のままでも、噴孔径を微細化して多孔化すれば燃料粒は微細化できるが、そのためには精密加工が必要となり、生産性やコストの面で課題が残る。DI(筒内燃料直接噴射)化は、高圧ポンプなど構成部品が複雑化する上、インジェクターも反応速度の高いものが必要で、スペース効率やコストの面で小型車には採用が難しかった。そこでインジェクターをデュアル化し、1本あたりの噴射量を減らすことで、より小径な噴孔からの燃料供給を実現した。
インジェクターの噴射圧力は通常通りなので、機構の複雑化はDIより抑えられ、同クラスのDIに比べてコストアップ要因は60%低減できると日産は説明。従来方式からインジェクターが増える分のコストは、燃焼の改善によるHC排出量低減で触媒の使用貴金属量を減らせることで、おおむね相殺できるレベルだという。これに連続可変バルブ機構のCVTC(Continuous Valve Timing Control)を組み合わせることで、同クラスエンジン比4%の燃費向上と、貴金属使用量を半分以下に低減できた。2010年度初頭にHR15DE-Dual Injectorとして登場を果たしている。