PFIを2本備えるデュアルインジェクターの目的と効果[内燃機関超基礎講座]

2本ある吸気ポートそれぞれに燃料インジェクターを備える。シングル式との、そして直噴式との違いはどこにあるのか。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

吸気2弁式PFIエンジンの各吸気ポートに1本ずつ、つまり気筒あたり2本のインジェクターを配置するのがデュアルインジェクター。噴射ノズルから燃焼室までの距離を短縮し、さらに噴孔径を微細化、同時に多孔化することで燃料粒を微細化し、燃焼効率の改善を図る。

従来型インジェクターの噴孔から吐出される燃料粒径が平均70μmなのに対し、デュアルインジェクターでは30μmへの微細化を実現している。従来構造のままでも、噴孔径を微細化して多孔化すれば燃料粒は微細化できるが、そのためには精密加工が必要となり、生産性やコストの面で課題が残る。DI(筒内燃料直接噴射)化は、高圧ポンプなど構成部品が複雑化する上、インジェクターも反応速度の高いものが必要で、スペース効率やコストの面で小型車には採用が難しかった。そこでインジェクターをデュアル化し、1本あたりの噴射量を減らすことで、より小径な噴孔からの燃料供給を実現した。

デュアルインジェクター採用シリンダーヘッドのカットモデル。1本あたりの噴射燃料が少なくて済む分、インジェクター自体のサイズはコンパクト化されているため、レイアウト上の無理は感じられない。インジェクターのサプライヤーはデンソーだ。
左がデュアルインジェクター(1本)、右が従来型インジェクターの燃料噴霧状態。デュアルインジェクターは、より微粒化された燃料を広角に噴射していることがわかる。到達距離が短いのは、それ以上にバルブに近いところへ噴孔を置く前提ゆえ。
デュアルインジェクター。噴孔数を18に増やして粒径を微細化。噴孔から燃焼室までの距離を短縮できることで、噴射速度が高まったのと同様の効果を得られ、広角に噴射することで燃焼室内への分布が改善されるといった効果も期待できる。
従来型インジェクター。噴孔数は12。デュアルインジェクターの合計36噴孔に対し、その1/3の噴孔で同じ時間内に同じ量の燃料を噴射しなければならないため、燃料粒径が大きくなってしまい、着火から粒の内部まで燃焼する時間が長くなる。

インジェクターの噴射圧力は通常通りなので、機構の複雑化はDIより抑えられ、同クラスのDIに比べてコストアップ要因は60%低減できると日産は説明。従来方式からインジェクターが増える分のコストは、燃焼の改善によるHC排出量低減で触媒の使用貴金属量を減らせることで、おおむね相殺できるレベルだという。これに連続可変バルブ機構のCVTC(Continuous Valve Timing Control)を組み合わせることで、同クラスエンジン比4%の燃費向上と、貴金属使用量を半分以下に低減できた。2010年度初頭にHR15DE-Dual Injectorとして登場を果たしている。

HR15DE-Dual Injector。日本ではジュークに搭載するエンジンである。

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