近年、5GやEV、自動運転などで使用される電子基板の需要が急増し、これらの用途は人命に関わることもあることから、基板の品質要求が一層高まってきている。また、基板の高密度化、微細化が進むことで、検査難度が上がり、従来の基板外観検査装置では、はんだの形状を的確に撮像することが難しく、検査範囲や項目に限界が出てきた。一方、製造現場では、熟練者不足など人手不足が深刻化する中、新型コロナウィルス感染症対策として、製造現場における密集・密接回避や移動制限が求められている。そのため、検査精度の進化に加え、人による目視の削減や、外観検査装置の設定や立ち上げ時の熟練者の経験や技能を”スキルレス化”することが急務になっている。
今回発売する基板外観検査装置「VT-S10シリーズ」は、オムロン独自の「MDMC(Multi Direction Multi Color)」撮像技術で、検査対象基板の部品やはんだ形状といった特徴に合わせて、検査時の照明の照射角度や、色、光量を自動で最適制御し、設定工数を約70%削減*²する。また、オムロンが30年以上にわたり外観検査の現場で培った画像処理のノウハウと、はんだ検査に対する知見を学習させたAIを搭載することで、従来、人の感性に頼らざるを得なかった検査も自動化できるようになり、検査正解率も大幅に向上させる。
*¹業界初:基板外観検査業界におけるMDMC撮像として、業界初。2021年7月オムロン調べ
*²70%:複数の顧客とともにプログラム作成時間や検査正解率で比較した実証実験の一例での結果
主な特長
1.MDMC撮像技術による見過ぎ大幅低減
オムロン独自のMDMC照明を活用し、高度化する基板や部品の高精度検査を実現する撮像技術を開発した。照射角度、色、光量を自在に制御することで、従来の撮像方式に比べ、はんだの形状がより正確に捉えられることに加え、隣接する背高部品の影の影響排除や基板上のパターンや部品面上の印字を正確に捉えることが可能となった。
あらゆる方位、角度、多彩な照明の照射により、複雑なはんだ形状も正しく検査可能
強調白色照明により印字バラツキの影響なく、正しく文字検査可能
2.定量検査とAIによる最適検査によるプログラム工数最小化
これまで積み上げてきたはんだ形状検査に関する知見に加え、MDMC照明により獲得した画像を活用し、はんだ検査に特化したAIを開発した。このAI検査と、MDMCによる定量検査を組み合わせることで、ティーチングスキルの低減と見過ぎ削減を両立することに成功した。ある顧客との実証実験では、目視工数を85%削減することが確認できた。
3.M2Mシステムによる良品生産システム
・他社製造設備とデータ連携することで品質傾向を把握し未然に不良発生を防止することが可能。
・各工程の検査結果を数値・画像含めデータ化することで品質の見える化
・最終工程の検査結果から印刷後、マウンタ後工程の検査基準を自動最適化することで直行率向上
・他製造設備メーカとデータ連携することで不良低減および未然防止
ある顧客との実証実験では、このM2Mシステム導入により品質バラツキを不良発生前に検知・対処することで、不良発生率を50%以上削減することに成功した。