豊田自動織機:電動コンプレッサーの生産1000万台体制を構築

東浦工場加工ライン
豊田自動織機は、東浦工場および中国子会社TACK※1の加工ライン、刈谷工場の組立ラインで能力増強を行い、グローバルで1000万台の生産体制を構築する。

世界的に進展する自動車の電動化を背景にしたカーエアコン用電動コンプレッサーの需要拡大に対応する目的。中でも、シェルやローターなど、圧縮機能を担う基幹部品を加工する東浦工場は、現工場を約2倍に拡張して電動コンプレッサー部品専用の加工ラインを新設し、22年10月から生産を開始する。

【東浦工場の概要】
所在地 愛知県知多郡東浦町
操業開始 2002 年
工場面積(拡張後)52,000 m²
事業内容 カーエアコン用コンプレッサー部品の加工
豊田自動織機のコンプレッサー販売台数推移。2003年の2代目プリウスから電動タイプを投入、徐々に電動タイプの販売台数が増加している。

電動車※2の普及に伴い、電動コンプレッサーの世界市場は急速に伸長しており、21年度1,000万台から23年度2000万台へと拡大する見通し※3。豊田自動織機はコンプレッサーのトップシェア※4カンパニーとして、電動コンプレッサーのグローバルシェア50%、販売台数1000万台を目指すとともに、中期的な市場拡大に対応するため、欧州および米国生産拠点での現地生産など、さらなる生産体制の拡充を検討していく。

BEVでは、暖房にエンジンの排熱が使えないため、コンプレッサーにより圧縮されて高温になった冷媒の熱を利用したヒートポンプ式暖房の採用が広がっている。電池温調、充電時にも稼働するため、稼働時間は2倍以上。航続距離や充電時間、電池寿命を左右するため、大容量化・高耐久性(長寿命)が求められる。

こうした需要拡大への対応に加え、電気自動車(BEV)の熱マネジメントにおける中核部品として電動コンプレッサーの商品力向上にも取り組んでいく。バッテリーをはじめ多くの電子機器を搭載するBEVにおいて、熱対策は航続距離や充電時間、電池寿命を左右する重要な技術。BEV向けコンプレッサーは車室内だけでなく電子機器の冷却も担うため、高い冷房能力が求められる。また、暖房にエンジンの廃熱を利用できないBEVでは、コンプレッサーを駆動させるヒートポンプ式暖房の採用が広がっており、BEV向けコンプレッサーには冷暖房を担う耐久性能が欠かせない。

こうしたニーズに応える豊田自動織機の電動コンプレッサー「ESH34」は、その冷房能力と耐久性能が評価され、22年4月に発表されたトヨタ新型BEV「bZ4X」に採用された。より大型なバッテリーや電子機器にも対応した大容量タイプの「ESH41」も市場投入しており、海外カーメーカーから高い評価を受けている。

大容量電動コンプレッサー「ESH41」
■ 従来の車室内を中心とした冷房能力に対し、容量増加と回転数の高速化で 40%能力向上
■ 構造の見直しにより、既存製品に対し2倍以上の長寿命化
■ 豊田自動織機製品の強みである、小型・軽量・高効率・静粛性をより高め、商品力を維持
型式 ESH41
体格(胴径×全長)Φ123×263mm
重量 7.2kg
吐出容量 41cc
冷房能力 10.8kw

※1:豊田工業電装空調圧縮機(昆山)有限公司
※2:ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車を指す
※3:IHSマークイットおよび自社調べ
※4:自社調べ

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