世界で一番小さいシトロエンに乗ってみた:ヴァレオ48Vシステム「eAccess」試乗

モーターファン・イラストレーテッド vol.190より転載

 当日はあいにくの荒天。相当な土砂降りで、通常ならめげるようなコンディションとなりそうだが、この日は試乗車両に新型LiDARであるSCALA3のデモンストレーションも含まれていたため、むしろ降雨という悪条件でも正確に働く(であろう)新型センサーの威力を試せるだろうと気を取り直す。

前後に48Vのモーターユニット(eAxle)&バッテリーパックを搭載した全輪駆動方式の軽トラ型BEV。車両の12V系にはコンバータで降圧して給電する。群馬大学・CRANTSとのパートナーシップによって製作されたデモンストレーション車両。

 まずは軽トラック型BEVから試乗。簡単なインストラクションを受けていざスタート。このクルマは前後にそれぞれ15kWの48Vモーターを積むスプリットAWDで、100km/hの最高速度。おそらく本車のベースであろうキャリイは37kW/59Nmという性能で、しかし本車はバッテリーなどを積むことから車重は増えているだろう。モーターの低回転大トルク特性で発進性能は向上しているか――などと考えながら走り出すと、少々荒削りな雰囲気ながらストレスのない発進。ストレートではフル加速を試せるメニューになっていて、こちらもあっけないほどの快速ぶり。何周かコースを試してみた感想は「なんだ、48Vシステムで充分に走れるじゃないか」である。ただし、アクセルオフやブレーキペダル押下時の回生制御は盛り込まれていなく、またクリープ制御も未設定だった。

フロント側モーターの様子。写真の右側が車両前方。48Vのモーターはドライブシャフト後方にケースを介して備わるレイアウト。キャビン下に収めることから軸配置は水平方向。
リヤ側の様子。写真右側が車両後方。ベース車両(と推測される)キャリイはリジッドアクスルだが、本車ではドディオンアクスルらしき方式。上下方向に余裕があるため軸配置は縦方向。

 続いてシトロエン・アミベースの「48Vライトeシティーカー」に試乗。こちらは市販状態でL6クラス適合車両であることから最高速度が45km/hに抑えられているところ、積まれている48Vシステムパフォーマンスをフルに発揮させることを目的に、モーター出力を高めバッテリー容量を増やし、最高速度は90km/hまで上げた仕様車。なお、こちらはFWDである。

シトロエン・アミ。法規制から6kWの最高出力に抑えられている本車について、48Vのパフォーマンスを確かめるために10.5kWに増強した車両。最高速度も45km/hから90km/hまで向上、バッテリーも5.5kWhから8.64kWhに増やしている。当然、48Vのシステムはヴァレオ製。

 左右共通というユニークな前ヒンジ@右/後ヒンジ@左ドアを開けて乗り込むと、必要最小限という印象の室内が迎え入れてくれる。走行のインプレッションは、誤解を恐れずに言えば、キャビン付きのオートバイ。ホイールベースが極端に短いことで、操舵に対するヨーの発生が機敏で、モーターの出力特性がそれを後押しする印象。NVHはもとより追求していない様子で、それゆえ小さく軽く作れているのだろう。そう。軽い車だけに、低出力でも48V駆動システムでも、きびきび走るのだ。

アミは前輪駆動式で、eAccessを搭載する。写真では右側が車両前方。ストックでは6kW/減速比15.6のところ、テスト車は10.5kW/減速比11.4に改めている。
同じ部位をもう少し上から眺めたところ。この角度から見ると、動力源がBSGそのものであることがよくわかる。
ヴァレオ・e:Access。BSG:ベルトスタータージェネレーターを動力源として減速機構と組み合わせたパワートレーン。駆動電圧は48V。BSGは量産品をベースとしているので耐久信頼性に富むのが最大の美点。一次減速はリブドベルトを用いるだけに、軸レイアウトの自由度は高い。

 BEVを仕立てるためには高くて重いバッテリーとの兼ね合いがどうしても必要になる。長く速く走らせるなら巨大なパックが必要になり、そうすると急速充電が必要で、すると耐熱要件の観点から劣化はどうしても進行し――というジレンマに陥りがち。しかし、48Vシステムで構築する小さく軽く安価なBEVに試乗し、このパフォーマンスで不満を覚えない使い方をすればいいのではないか、しかもほとんどのシーンではその「不満」は感じないのではないかと感じ入った。

アミの室内。そっけないことこの上なく、運転している時の印象は「荒々しい」の一言。しかし、クルマの軽さに助けられ、操舵入力に対するレスポンスが非常に良好なことから、運転は非常に楽しい。

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