ブリヂストンが消防研究センターと共同でパンクしても走行可能な「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を研究開発。

総務省消防庁消防大学校消防研究センター(以下、消防研究センター)とブリヂストンは、パンクしても走行を続けることができる「救急車・指揮車※1 用パンク対応タイヤ※2」(写真 1)を共同※3 で研究開発し、実証実験を踏まえ社会実装可能な技術であることが確認されたことを発表した。

これまでの救急車や指揮車(以下、救急車等)のタイヤは、災害時等の荒れた路面を走行してパンクした場合、タイヤが潰れ、走行の継続ができなかった(写真 2)。しかし、今回研究開発された「パンク対応タイヤ」(写真 3)は、ブリヂストンが保有する、タイヤのサイド部分を補強すること等により空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定距離を走行可能とする技術(以下、ランフラットテクノロジー※4)を、救急車等用に応用することで、パンク後でも一定程度の継続走行が実現された。ランフラットテクノロジーを採用したタイヤは、これまで主に乗用車向けの偏平率※5 が低いタイヤ(偏平率 40、50
等)で実用化されていた。しかし、車両重量が重い救急車等に使用される偏平率が高いタイヤ(偏平率 80)に既存のランフラットテクノロジーをそのまま採用するだけでは、タイヤがパンクした状態のたわみが大きく、走行時のタイヤの温度が高温となりタイヤが破壊されて走行が困難となってしまう。

そこで、救急車等がパンクした場合は傷病者を病院搬送することやタイヤ交換を行える場所まで走行可能とすることを考慮し、時速 40km、走行距離 50kmが必要性能として設定された。その上で、最新のサイド補強ゴム技術※6 やタイヤサイド部の冷却技術※7 を採用するとともに、タイヤ形状、パターン、部材配置等の最適化を図ることで、パンクしても走行を続けることができる「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」が開発された。

また、このタイヤをテストコースでの走行実験において性能を確認するとともに、北海道から沖縄に至る計5か所の消防本部において、積雪、凍結、台風時等の様々な路面状況や都市部と山間地での異なる運行状況における実際の救急活動で実証実験※8 が行われ、パンク対応タイヤへの評価を実施※9 し、十分社会実装可能な技術であることが確認された。今後、本技術は災害現場対応の救急車等のタイヤに活用されることが期待されている。

【注釈】

※1 指揮車:災害現場において指揮活動を行うための車両。本パンク対応タイヤは指揮車の中でバンタイプ車両向け。
※2 パンク対応タイヤ:パンク対応タイヤは、タイヤ本体(スタッドレスタイヤ)、専用ホイール、タイヤ空気圧監視システ
ム(TPMS)をセットで装着することが必須となる。

※3 共同研究の経緯:全国消防長会から「平成 28 年熊本地震に関する緊急要望」を受け、救急車消防研究センター
が共同研究先を公募し、ブリヂストンが採択されたもの。
※4 ランフラットテクノロジー:タイヤの空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定の距離を走行可能とするブリヂストンの
技術。

※5 偏平率:タイヤの幅(W)に対する高さ(H)の比率を表す数値です。

※6 今回採用された最新のサイド補強ゴムは、パンク走行時の発熱を抑制し、高温でも壊れにくい特性を持っている。そのため、従来の補強ゴムと比較してパンク走行時の耐久性を維持したまま、補強ゴムを薄くすることが可能になる。パンク走行時に荷重を支えるために硬い特性を有する補強ゴムを薄くできることに加え、通常走行時の温度域では軟らかい特性を有していることから、通常走行時の乗り心地も向上している。

※7 タイヤのサイド部の冷却技術として、表面に特殊な形状の突起を設けることで、空気の乱流を促進してタイヤを冷却する技術「クーリングフィン」を採用している。突起の形状を最適化した最新の「クーリングフィン」を搭載することで、より効率的にタイヤを冷却することが可能となり、パンク走行時のサイド部の温度上昇を抑制、耐久性の向上が実現されている。


※8 実証実験:全国 5 か所の消防本部の救急車・指揮車、計 21 台にて実施。(総走行距離 25 万km)

※9 実証実験評価アンケート結果
パンク対応タイヤの評価
安心感がある:82%、今後も使用したい:56%、TPMS は便利:82%
夏・冬タイヤの交換必要ないのが良い 83%

既存スタッドレスタイヤと比較 (比較項目:ブレーキ性能、乗心地、ロードノイズ、振動)
全項目で「特に変わらない」が最も多く、「乗心地、ロードノイズ、振動」に関しては「やや悪い」という意見もあった。

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