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脱炭素社会化を背景に、自動車業界ではCO2排出量の削減や省燃費化・省電費化に向けた取り組みが進められる中、エンジンやモータなどのパワートレインユニットの動力(トルク)をタイヤに伝えるドライブシャフトの構成部品である等速ジョイント(以下、CVJ)に対する高効率化のニーズが高まっている。
CVJがトルクを伝達する際、内部部品のボールがケージを押す力が一方向に片寄ることで部品間に摩擦が起きトルク損失が発生する。また、CVJの取付け角度が大きくなると、ボールがケージを押す力も大きくなり、トルク損失率は増加。「CFJ」は、隣り合うトラック(転動溝)を互いに傾斜させたNTN独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造*2」により隣り合うボールがケージを押す力の向きが交互となることで力の片寄りを抑え、トルク損失率が従来品比で50%以上低減されている。また、その独自構造によりCVJの取付け角度が大きくなっても、トルク損失率の増加を大幅に抑えることができる。
今般、「CFJ」の高効率性に加え、大きな取り付け角度におけるトルク損失率の低減が高い評価を得たことで量産に繋がった。
「CFJ」は、昨今グローバルで人気のSUVや、加速度的に普及が進むEVやHEVに最適な商品である。EVにおいては、大容量バッテリーの搭載や室内空間の拡大、衝突安全性などを考慮して、パワートレインユニットが車両の端に配置される傾向にあるため、CVJの取付け角度が大きくなる。大きな取付け角度においても高効率性を発揮する「CFJ」を適用することで、車両レイアウトの自由度の向上と省電費化の両立に貢献。また、EVやHEVでは、車が減速する時のエネルギーを利用してモータを回し、電力として蓄える回生ブレーキシステムが搭載されている。「CFJ」はその独自構造により走行時と逆方向の回生トルクが入力される際のトルク損失率も低減するため、回生エネルギーによる発電効率も向上させることが可能。
なお、「EBJ」から「CFJ」への置き換えによる燃費の改善効果をJAPIA LCI算出ガイドライン*3に基づき内燃機関車両で試算した場合*4、燃費は0.62%の改善、CO2排出量は0.96g/kmの削減効果が見込まれ、CO2排出量の規制が厳格化する中、こうした高い環境性能についても自動車メーカなどから高評価を得ている。
※1:2012年に高効率固定式等速ジョイント「CFJ」を開発
※2:ボールが通る転動溝を内輪・外輪で互いに交差させた構造。隣り合う転動溝を互い違いに傾斜させることで、ボールが内部部品を押す力の向きを交互に振り分け、互いに相殺させる。
※3:日本自動車部品工業会が定める自動車の製造、使用段階における効率的なライフサイクル環境負荷量の算出方法
※4:車重1467kg・燃費17.6km/Lの車両を仮定し、WLTP条件で走行させた場合(CVJ取付け角度:9度)
特長(従来品(EBJ)比)
高効率 | トルク損失率を従来品比50%以上低減(世界最高水準) |
小型・軽量 | 従来品と同等(世界最高水準) |
作動角度 | 従来品と同等(最大47°) |
EVの車両レイアウト
EVでは、大容量バッテリー搭載、室内空間拡大、衝突安全性を考慮し、パワートレインユニットは車両の端へ配置される傾向にあり、ドライブシャフトの搭載角度(CVJ取付け角度)は大きくなる傾向にある