新型WRX S4の「SPT=スバルパフォーマンストランスミッション」はどこが違う?

新型WRX S4が初採用したSPT=スバル・パフォーマンス・トランスミッション
新型スバルWRX S4のトランスミッションは、チェーン式CVTを使う。スバルのCVTとはいえば、「リニアトロニック」だが、WRX S4は「SPT=スバルパフォーマンストランスミッション」である。SPTとはどんなトランスミッションなのか?
新型スバルWRX S4

新型スバルWRX S4のトランスミッションは、スバル内製のチェーン式CVTでマニュアル・トランスミッションの設定はない。スバルの2ペダルトランスミッションといえば、「リニアトロニック」だが、WRX S4のトランスミッションは、「SPT=スバルパフォーマンストランスミッション」である。

スバルのリニアトロニックは、大きく分けて
大容量(400Nm)リニアトロニック:TR690
中容量リニアトロニック:TR58
e-BOXER用リニアトロニック:TH58

の3系統がある。

今回のSPTは、大容量の第3世代にVTD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)センターデフを組み合わせたものだ。

前型WRX S4の大容量リニアトロニック

どこが今までのリニアトロニックと違うのか?

「エンジンとの協調統合制御を充実させた内容を実現するために、ハードウェアとしては基本的にローギヤードに設定してあります。ギヤ比が基本的にローギアードになっています」
と開発者は説明する。
ギヤレシオはロー側に拡がっている。
前型:変速比3.105~0.482
新型:変速比3.490~0.505

レシオカバレッジ(最ローを最ハイで割った数値)は
前型:6.44
新型:6.91

である。
最ロー×最終減速比は
前型:12.8
新型:15.5

となっており、「WRX S4というクルマに合わせた発進の力強さだとかアジリティといった部分を実現できるように設定しています」(開発者)という。

ちなみに、今回WRX S4と同じ2.4ℓFA24型水平対向4気筒ターボを搭載するグレードが追加になったレヴォーグにもSPTは採用されている(STI Sport R)。

「大容量タイプの最新版の第3世代に当たるレシオカバレッジ6.9のリニアトロニックは、アセントや北米のアウトバックに搭載してデビューしているトランスミッションなんです。それにVTDを組み合わせて、かつ先ほど申し上げたようなローギヤード化を図り、今回のWRX S4の新スポーツ変速制御に対応するために、油圧系を手を入れたのがスバルパフォーマンストランスミッションです」(開発者)

刷新した変速制御はTCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)を包含し、その制御を支えるハードに高い変速スピードへの耐久性を上げた油圧コントロールバルブを備える。また、VTDを使うのはWRX S4だけ。後輪偏重のトルク配分を実現する。VTDは前型から継続採用する。

レシオカバレッジが拡がったということは、当然バリエーターが違う(プーリーの径)ということだ。スバル独自(スバルだけが採用している)チェーンは、引き続きシェフラー(Luk)の最新版(アセントと同じ)を使う。シェフラーとスバルの共同開発は2000年頃からだから信頼関係も深いのだろう。

このSPTのトルク容量はFA24ターボに会わせた375Nmだという。エンジニアによれば、トルク容量を決めるのはバリエーター(プーリーの組み合わせ)だという。つまり、375Nmより大トルクに対応するには、バリエーターから開発しないといけないという意味である。

さらにパワフルなエンジン仕様(つまりSTI)が登場するときは、2ペダルトランスミッションではなく、従来通りMTになるということだ。

WRX STIのために、大きいバリエーターを作るわけにもいかないですしね、と話を振ると

「バリエーターの新設計っていうのはすごく大変なことなんですね。レシカバが変わっているってことはバリエーターを開発しているってこと。スバルほどバリエーターを開発してきたメーカーも他にないんじゃないかなと思います」

ちなみにバリエーターはスバル内製だ。

最後に少し電動化について質問を投げかけてみた。

MF:今回、新型WRX S4というスポーツセダンができました。しかし、現代では、燃費、CO2削減って言われてしまいます。純粋な内燃機関だけでスポーツセダンを作れるってのは、おそらく先々あんまりなさそうです。その時に言い訳ってわけじゃないですが、何か電動デバイスを入れないといけない時が来るかもしれません。そういうことは、なんとなく想定しながら開発するものなんですか?
「もちろんそうですね。想定しながら開発しています。ハイブリッドモデルもインプレッサやフォレスターには積ませてもらっています。EVもソルテラが出てきます。それもすべてポートフォリオに従って開発しているものです」(開発エンジニア)

MF:SPTの後端部にe-BOXERよりも力が出るモーターを付けるというアイデアはいかがですか?
「基本的にやりようはいくらでもあると思っています。そこは大丈夫ですけど、それは、あるともないとも……私からは言えません(笑)」

MF:いろんなアイデアがあっても言えないですよね。でも12V駆動のe-BOXERのモーターを48V化したらもっと違うことができるんじゃないかと素人は考えたりします。そういうわけでもないですか?
「48Vも欧州勢ではだいぶ出てきています。やり方としてはもちろんあると思います。ただそこで得られる性能との他の背反との背比べみたいなところもあります。どこまでメリットが見出せるか。アプリケーションとして12Vから48Vに一部流れているところはもちろん承知はしています。我々スバルの製品としてどうかっていうところは、冷静に見なきゃいけない」
という答えだった。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…