東レが環境低負荷な感光性ポリイミドを開発。NMPフリー半導体用コーティング剤の量産・販売を開始

フォトニース
東レは、環境への負荷を低減できるポリイミドのNMP(N-メチルピロリドン)フリー技術を取り入れた新たな感光性ポリイミドコーティング剤PHOTONEECE(フォトニース)※1を開発したことを発表した。今回、量産体制が整えられ、パワー半導体用途向けを中心に本格販売が開始される。

xEV、5G通信、AI、メタバースなどの様々な先端技術の普及は、半導体の飛躍的な技術革新に支えられている。その半導体素子を保護する絶縁保護膜には、高い絶縁性や製造工程で生じる熱に耐えられる耐熱性を持つポリイミド材料が主に用いられている。近年欧米では作業者の健康や環境配慮のニーズの高まりにより、ポリイミド材料の溶媒として使用されている毒性のあるNMPの使用を規制する動きが見られている。

東レはこの動きに対し、長年蓄積してきた機能性ポリイミド設計技術を駆使し、NMP以外の溶媒でポリイミドを合成する技術を確立させた。これにより、ppm※2オーダーでNMPを含まない材料の提供が可能となった。 本製品は、高い耐熱性と絶縁性を有することから、製造工程で高温処理が行われ、通常の半導体より高電圧を扱うパワー半導体に特に適した材料として、同用途向けに本格販売が開始される。

また、パワー半導体の中でも大型EV、鉄道、発電所などの用途では更なる高電圧が必要であり、それに耐えられるよう、ポリイミドにはこれまで以上の厚膜形成が要求される。厚膜になると感光性が低下し、微細な加工がしづらいという課題があったが、東レは光透過性を向上させる技術の適用により、従来比2倍以上となる15μm以上の厚膜においても従来と同等の高精細なパターン加工が可能となるNMPフリー感光性ポリイミド材料の開発に成功した。本開発品は、絶縁保護膜と接するシリコンや銅などの下地材料に対する高い密着性も有しており、現在大手パワー半導体メーカーでサンプル評価が進められていく。

なお、本製品の生産のために今後導入される設備には、東レが経済産業省より採択を受けた「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が一部活用される予定となっている。

※1:感光性ポリイミド
光照射により現像液(アルカリ水溶液または有機溶媒)への溶解性が変化し、現像工程によりパターンを形成することができるポリイミド。露光部が溶解するタイプをポジ型感光性ポリイミド、露光部が不溶化するタイプをネガ型感光性ポリイミドと呼ぶ。

※2:ppm
parts per millionの略で、百万分率のことを指す。1000ppm=0.1%となる。

加工後のポリイミドのパターン

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