目次
昨今、頻発する自然災害に伴って停電が発生した際に、社会生活を継続できるようにするための対策に注目が集まっている。高層ビル・マンションなどにおいては、停電時にエレベーターなどの共用部設備が使用できなくなる事態を回避するため、非常時電源として蓄電池などを整備する動きが進んでいるが、導入コストなどが課題として残ってしまっている。
このような背景の下、日立ビルシステムは、電気自動車がビルの非常時電源として活用できる可能性が広がっていくことを見据え、停電時に電気自動車と建物をつなぐV2X技術を開発。電気自動車からエレベーターなどのビル設備に給電を行い、継続利用を可能とするシステムを構成した。同技術は、2023年中の実用化に向けて準備が進められている。
協創の内容
- 企業や自治体などへのV2Xシステム導入に向けた普及活動の推進
- 日立ビルシステムが進めるV2X実証実験へ日産の電気自動車を組み込み、システム実用化の加速
- 子供たちへの環境教育での協力など、脱炭素社会に向けた活動連携
今回の実証実験
実験目的:電気自動車の電力を利用したエレベーターの実稼働データの計測
実験環境:エレベーターの稼働電力を電気自動車からの給電に切り替え、停電時に使用する低速運転モードにて、6階建ての試験棟で10時間連続往復運転を実施(1階および6階でドア開閉、実利用を想定した重り搭載)
使用車両:軽電気自動車「日産サクラ」(バッテリー容量20kWh)
使用エレベーター:日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」
測定項目:エレベーターの連続稼働時間および昇降回数、電気自動車のバッテリー残量
実証実験結果
実証実験において対象エレベーターは往復で263回連続昇降し、この間「日産サクラ」のバッテリー残量は 100%⇒46% に減少。10時間連続でエレベーターが稼働可能なことが実証された。なお、同条件で「日産リーフe+」(バッテリー容量60kWh)を用いてエレベーターの10時間連続稼働を行った場合の理論値は、連続昇降回数263回(往復)、バッテリー残量 100%⇒72% とされている。
今後は、電気自動車のバッテリー残量のリミット*3までの長時間連続稼働の実証実験が行われる。
【注釈】
※1 V2X(Vehicle to X):自動車とさまざまなモノとの接続や相互連携を行う技術の総称。エネルギー分野においては、電気自動車と、住宅やビル、電力網(グリッド)などをつなぎ、電力の相互供給を行うことを可能にするV2Xシステムの実用化が進められている。
※2 システム実用化時の目安としてバッテリー残量10~20%がリミットとして想定されている。