ヤマハ・ソニー共同開発のエンタメ車両「SC-1」に新サービスが追加。車外の人も楽しめる複合現実を上野恩賜公園で初公開

ヤマハ発動機と、ソニーグループは、新たな移動体験の提供を目的とするエンターテインメント車両「Sociable Cart(ソーシャブルカート):SC-1」を用い、人と車が一緒に散策をして車外から楽しめる新しい複合現実(Mixed Reality・以下、MR)サービス「Zoromo(ゾロモ)」を開始する。また、従来提供していた乗員向けのMRサービス「MR:Ride(エムアールライド)」でも新たなコンテンツが追加される。いずれのサービスも上野恩賜公園(東京都)で、本日から開催される「上野恩賜公園開園150周年総合文化祭」で初公開し、その後も各地での展開が予定されている。

「SC-1」の新サービス概要

「Zoromo」は、SC-1と共に散策するサービスで、車両の周囲に展開される関連映像や音声を楽しめるものである。SC-1は従来MRで乗員向けに移動中のエンターテインメントが提供されてきたが、「Zoromo」は、車両外部のモニターも移動と連動させることで、乗車していない周囲の人も楽しい移動へと誘う、新しいモビリティサービスへ進化している。

「MR:Ride」は、SC-1に乗車するサービスで、上野恩賜公園の歴史や各所の説明を聞きながら楽しむ「バーチャル乗馬ツアー」と、まるで上野恩賜公園が海の世界になったかのようなMR体験ができる「上野アクアリウム」の2つから選択できる。乗車時間は約10分。

ヤマハ発動機とソニーグループは、SC-1による今回の新サービスを、2024年3月までに国内各所(群馬県楽歩堂前橋公園、沖縄県首里城公園、海洋博公園、東南植物楽園)にて開始する予定としている。なお、SC-1はその体験を提供するもので、車両としての一般販売は予定されていない。

Sociable Cart: SC-1

SC-1は、ヤマハ発動機の自動運転技術とソニーのエンターテインメント映像技術を融合させたモデル。ソニーグループは2016年に電動のゴルフカーをベースとしたSC-1の原理試作機を開発し、2017年にコンセプトモデルを完成させた。

SC-1の特長は、人の視覚能力を超えるイメージセンサーを車両前後左右に搭載していることだ。人が視認しながら運転する一般的な自動車と違い、360度全ての方向にフォーカスが合った映像で周囲の環境を把握できることに加え、搭載したイメージセンサーの超高感度な特性と、内部に設置された高解像度ディスプレイにより、乗員が夜間でもヘッドライトなしに視認することができる。またクラウドを介してそれらの映像を確認することで、遠隔地からの操作による走行も可能です。不要となった窓の代わりに高精細ディスプレイを配置することで、広告や様々な映像を車両の周囲にいる人に対して映し出すことができる。

また、ソニーが開発したMR技術を搭載。乗員がモニターで見る周囲の環境を捉えた映像に、様々なCGを重ねることで、従来景色を見るだけであった車窓がエンターテインメント空間に変貌し、移動自体をより楽しめるようになる。

なお、超音波センサーと二次元ライダー(LiDAR:レーザー画像検出と測距)も搭載している。ネットワーク接続されたクラウド側には走行情報が蓄積され、ディープラーニングで解析することで、最適な運行アシストに繋げるとともに、車両に搭載した複数のセンサーからの情報をエッジ・コンピューティングで判断し、安全な走行をサポートする。

主な仕様

全長 : 3,135mm
全幅 : 1,306mm
全高 : 1,830mm
乗車定員 : 5名
走行速度 : 0~19km/h
駆動方式 : DCモーター
バッテリータイプ : リチウムイオンポリマー電池
ブレーキ方式 : 油圧式四輪ディスクおよびモーター回生ブレーキ
サスペンション : 前・ダブルウィッシュボーン式/後・リンク式
自動運転方式 : 電磁誘導

搭載機器
車内 : 49インチ 4K液晶モニター 1台
車外 : 55インチ 4K液晶モニター 4台
イメージセンサー : 35mmフルサイズ Exmor (R) CMOSセンサー 5台(車両周囲4方向、及び車内)
1/3.8型CMOSイメージセンサー 「ISX019」搭載カメラ 2台

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