ブリヂストン、使用済タイヤの精密熱分解パイロット実証プラントを建設。タイヤ水平リサイクルの社会実装に向けた取り組みを加速

ブリヂストンは、タイヤ水平リサイクルの社会実装に向けて、関工場(岐阜県関市)敷地内に使用済タイヤの精密熱分解※1パイロット実証プラントの建設を決定した。2027年中の稼働開始が予定されている。使用済タイヤを精密熱分解して分解油や再生カーボンブラックを回収し、タイヤ原材料として再利用するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けて、今回建設するパイロット実証プラントでは、精密熱分解プロセスの確立および最適化に関する技術実証が行われる。また、今回の投資は、中期事業計画(2024-2026)において、今後のサステナブルな成長へ向けた「新たな種まき」と位置付ける探索事業の一環とされている。

ブリヂストンは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、2022年から使用済タイヤのケミカルリサイクルの取り組みを進めている。2023年にはBridgestone Innovation Park(BIP、東京都小平市)に実証機を導入し、使用済タイヤの精密熱分解試験による分解油や再生カーボンブラックを回収する技術開発を進めてきた。回収した分解油をリサイクルオイル化し、合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を製造することで、再生カーボンブラックとともにタイヤ原材料として再利用される資源の循環が目指されている。

本パイロット実証プラントは、BIPに導入した実証機で得た精密熱分解の基盤技術を実装しており、安定した連続運転に必要なプロセス設計や品質管理などの知見を獲得して、分解油や再生カーボンブラックなどの量産を想定したスケールアップ技術の確立が目指される。また、技術開発の取り組みと併せて、プラント操業のノウハウ構築やケミカルリサイクル実現を支える人財の育成も推進する。

なお、今回のパイロット実証プラント建設は、2022年2月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」の研究開発テーマの一つであり、ENEOS(以下「ENEOS」)と進めている共同プロジェクト※3の一環とされている。 また、精密熱分解により得られる再生カーボンブラックは、2024年12月にNEDOに採択された東海カーボンによる実証事業「使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発」において、新品並みのゴム補強性を持つカーボンブラックの生成を目指した技術開発にも活用される。

使用済タイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの外観(イメージ)

【パイロット実証プラント概要】

1. 所在地 : ブリヂストン関工場
岐阜県関市新迫間20 関工業団地内

2. 着工年月: 2025年11月(予定)

3. 稼働開始年月 : 2027年9月(予定)

4. 最大処理能力: 使用済タイヤ 7,500トン/年

※1 熱分解とは、化合物を無酸素で加熱し、化合物の構成物質を発生させる方法です。タイヤの精密熱分解では、温度や時間などの詳細な条件を制御し、使用済タイヤから高品質なオイル(分解油)やカーボンブラックを高収率に生成することで、資源循環性の向上やCO2排出量の削減につながります。

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