マツダやトヨタなどが参画のMBD推進センター、なぜ発足? 何をするところ?

 参画した企業は、アイシン、ジヤトコ、SUBARU、デンソー、トヨタ自動車、日産自動車、パナソニック、本田技研工業、マツダ、三菱電機の10社。そうそうたる顔ぶれが一堂に会して(呉越同舟?)世間の注目度も高いニュースではあるが、そもそも集まって何をやるのだろうか。

MBD推進センターのプレスリリースより:
 MBD推進センターは、全体最適で高度なモノづくりを手戻りなく高効率で行える、モビリティ社会の最先端の開発コミュニティの実現を目的として発足いたしました。活動内容は、2015年 度より経済産業省主導のもとで「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」として実施し、とりまとめてきた、「SURIAWASE2.0の深化〜自動車産業におけるMBDの産学官 共同戦略的プロジェクトの方針〜」を民間主体で継承したものとなります。

 正直な感想を言えば、これではさっぱりわからない。MBD:モデルベース開発という言葉からして、そもそもわからない。「現代の自動車開発には必須」とはよく耳にするものの、それがなぜなのかがいまいち理解できていない。これについては、同センターのステアリングコミッティ委員長を務める人見光夫氏が、非常にわかりやすいたとえで説明してくれた。

人見委員長

「モデルにするのはなんのためか。それは一度やった仕事は数式にして、次からは自分も他の人も同じ苦労をしなくて済むようにするためです。たとえば三角形の面積を測るとき、毎回方眼紙を当ててマス目を数えるのは大変です。公式、つまりモデルを編み出せばかんたんになります。料理に例えれば、おいしいものができたときにはそれをレシピ、つまりモデルとして残すようなものとお考えください」

 なるほど。これならわかりやすい。それにしてもこの人はいつも「非常に難解なことを一発で理解させる」ことが非常に上手である。

 しかしそうすると「公式とかレシピになっちゃうと、どの会社が作っても同じものができあがっちゃうんじゃないのか」というように思えてくる。それに対して企画統括委員会・委員長の原田靖裕氏は「モデルの技術ノウハウは外から見られないようになっています。接続の部分を共通化してつなぎあっていくことで、お互いの競争領域であっても効率を上げることを可能にしていきます」と説明した。さらに人見氏は「イチロー選手と同じバットとボールを使えば活躍できるか。使い方、その人の能力で、それが会社の競争領域にあたります。そこまで一緒にするというわけではありません」と付け加えている。

 モデル化の意義は理解できたとして、各社はすでにMBDで開発している状況にあるという。ならばなぜ「推進センター」が必要なのか。これについては「MBDで共通のルールで結ばれて共通のプラットフォーム上で様々な検討ができるようになれば、日本の開発効率は劇的に向上するのではないでしょうか?」と人見氏は訴える。

 どうやら、部品やシステムを提供する会社:サプライヤーは、自動車メーカー:OEMに新商品の提案をするときには「その会社ごとの固有モデルに合わせて開発」という状況にあるらしい。ひとつのシステムがひとつの部品でできていることはほぼ考えられず、「この部品の中のこのチップ」やら「このシステムの中のここのプログラム」などとなってくると、どんどん重層化。たとえば緊急ブレーキの作動環境について、同じシステムをOEMのA社とB社とC社に提案、そうしたら3社ともに「現状の40km/h走行時の検知能力を数m高めてほしい」と同じ要望が寄せられたとしても、やることは同じなのに改良には三者三様の手間とコストをかけなければならない——ということだろうか。

 これを上のスライドで示す「統一的な考え方」で一元管理することができれば、サプライヤーの環境は劇的に改善、開発の速度も著しく上がることが期待できる。この「統一的な考え方」というのが、MBD推進センターの目指す目標である。

 この「統一的な考え方」については、各国がそれぞれの言語を用いているため、その国に出かけるためにはその言語を都度マスターしなければならない状況だったところ、
▶︎ 強力な同時通訳機ができたので意思の疎通が自在にできるようになった
▶︎ そもそも全世界で共通に使える言語を開発した
というふたつのゴールが考えられる。どちらを同センターは目指すのか。また、日本には自動車メーカーが8社あるが、いまは5社。サプライヤーの数で考えれば膨大だ。今後はどのようにメンバーを増やしていくのか。人見氏は「われわれがしっかりと説明することで、なるべく多く広げていきたい。何社が目標、というのではなくて一社でも多く、という思いです」と回答した。

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