東レ:難燃性と力学特性を両立するCFRPを短期間で開発

(画像はイメージ)
東レは、マテリアルズ・インフォマティクス*1技術を活用し、優れた難燃性と力学特性を持つ次世代の航空機用途向け炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を短期間で開発した。今後実証を進め、航空機用途をはじめ、自動車、一般産業用途向けCFRPへの幅広い展開を図り、CFRPの需要拡大を推進していく。

 CFRPは、高い比強度、比弾性率および優れた疲労特性や耐環境特性に基づく高い信頼性を有し、航空宇宙分野で用途が拡大している。一方で、CFRPは金属に対して、難燃性や導電性など力学特性以外の機能面で不利な項目があるため、これをカバーする付加的な材料や工程が必要となることがあり、特に防火性の観点からCFRPの難燃性向上が望まれていた。しかし、難燃性と力学特性という異なる性質の双方を設計し最適化する過程では、膨大な実験データが必要となるため、開発期間の抜本的な短縮が大きな課題となっていた。

 東レは、従来進めてきたデータとデジタル技術を活用して競争力を強化する DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、新たにマテリアルズ・インフォマティクス技術をCFRP設計へ導入し、要求される特性から材料設計を絞り込む逆問題解析手法を駆使することで、短期間で材料を開発する技術を確立した。この技術に東北大学との共同研究で導入した自己組織化マップ*2を逆問題解析ツールとして用いて、複数の材料群から目的とする特性を達成するため適切な組み合わせを抽出して、少ない実験回数で難燃性と力学特性を両立するCFRPのためのマトリックス樹脂の設計に成功し、これを用いたCFRP中間基材であるプリプレグを短期間で開発した。

 本開発品は、圧縮強度や耐熱性などの力学特性を航空機向けの現行材と同等に維持しつつ、現行材対比で燃焼時の発熱量(Heat Release Rate; 航空機材料の難燃性の指標のひとつ)を35%低減している。今後、同様の逆問題解析手法を熱伝導性、電気伝導性などに展開し、高機能プリプレグの設計を進めることで、多様化する航空機部材をはじめとする自動車、一般産業用途などのニーズに応えていく計画だ。

 なお、本成果の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」(管理法人:科学技術振興機構)により得られたもの。

*1 マテリアルズ・インフォマティクス:機械学習に加え、物性理論、シミュレーション、データベースなどを組み合わせた情報科学の手法により、材料開発を高効率化する手法。
*2 自己組織化マップ:高次元データを教師なし学習によってクラスタリングし、より低次元のマップ上に視覚化することにより、高次元データの中に潜む本質的な構造の抽出に応用できる解析手法。

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