本取り組みは、ロンドンの南東約100kmに位置する、ナショナル・グリッドが2016年に設置した420kVのガス絶縁送電線路を対象に実施したもので、755kgのSF6ガスを削減した。これにより、ガス絶縁送電線路のSF6ガスの漏えい率を年間1%とした場合、乗用車約100台分*1の年間CO2排出量削減と同等の温室効果ガス削減効果が見込まれる。
優れた絶縁性能と消弧性能を持つSF6ガスは、電力分野で数十年にわたって使用されてきたが、地球温暖化係数(GWP)が高いことから、代替ガスへの置換が進められている。世界最大級の民間送配電事業者であるナショナル・グリッドは、所有設備におけるすべてのSF6ガスを、2050年までにゼロにする目標を掲げている。日立エナジーは、SF6ガスに代わる環境効率の高いガスを用いた高電圧機器の開発を進めており、SF6フリーの機器やその保守サービスをはじめとした環境効率の高い製品・サービス・ソリューションパッケージを「EconiQ」シリーズとして展開している。2021年8月には、さまざまな電圧レベルにおけるSF6フリーの開閉装置と遮断器の開発計画*2を発表した。
日立エナジーは今回、SF6ガスから代替ガスへの置換にあたり、SF6ガスと同等の性能を実現することや、既設のガス絶縁送電線路の損傷や劣化を引き起こさないようにするため、混合ガスの構成や比率を最適化するとともに、綿密な検証を実施。12月には試験通電を開始しており、今後6カ月間で、ガスの状態とモニタリングデータを分析する計画だ。
日立エナジーのハイボルテージプロダクツビジネスユニット担当役員であるマルクス・ハイムバッハ氏は「当社は、ナショナル・グリッドのようなお客さまがエネルギー転換を加速できるよう支援しています。EconiQ開閉装置・遮断器の製品群に加えて、既設のガス絶縁送電線路向けの革新的なEconiQretrofillの提供を通じて、環境効率の高いソリューションへの迅速な移行を実現し、お客さまおよび電力業界全体のCO2排出量の削減に貢献します」と述べている。
ナショナル・グリッドのクリス・ベネット社長代理は「気候変動は現代における最大の課題です。革新的なグリーン技術であるEconiQretrofillは、送電網における大規模な脱炭素化を支援するとともに、SF6フリーの設備への入れ替えが不要なことから、投資コストの削減と、設備入れ替えによる電力ネットワークの停止期間短縮に貢献します。当社は、日立エナジーとの協力により、エネルギー分野におけるネットゼロに向けた、実効性のある解決策を示せたことを誇りに思います。」と述べている。
*1 100kmあたり19kgのCO2を排出する乗用車が、年間10,000km走行すると仮定。
*2 2021年8月19日ニュースリリース「日立ABBパワーグリッドが、220kV以上の電圧において世界初となるSF6フリーの開閉装置・遮断器の開発計画を策定」(https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2021/08/0819.html)