「内装リペア職人の技術に感動!」ロータリー地獄を楽しむ男の物語 Part.3【編集長コラム】

ダッシュボードを新品同様まで蘇らせるプロの技

不定期連載でお届けするWEB OPTION編集長コラム。約20年ぶりにRX-7(FD3S)を購入し、再びロータリーチューニングカーライフを満喫しようともがく男の物語だ。

ヒーターコア爆発事件も発生・・・

機関系の修理がひと段落したところで、次なるレストアポイントへ移行。ターゲットは内装だ。というのも、いい加減、ダッシュボードのボロさに耐えられなくなったからだ。多少の傷なら目を瞑れる。しかし、前オーナーのDIYによる力作と思われるスエード全面張りが、剥がれて悲惨な状態になっているのだ。

スエードは接着剤で貼り付けられていて簡単には剥がせず。無理に引っ張ってみたらダッシュボードの表面まで破れてしまった…。

そもそも、クルマの室内は外装以上に眺めている時間が長い。どれだけ機関系やエクステリアのレストアを進めても、常日頃から目にする部分がボロボロでは悲しすぎるわけで…。

手っ取り早い解決法は新品への交換だが、純正ダッシュボードはすでに廃盤で手に入らないことが判明。そこで、ネットオークションで程度の良い中古品を購入することに。一ヶ月ほどポチポチと競い合い、最終的に助手席エアバッグが付いた後期型(5〜6型)のダッシュボードを4万5000円で落札した。

昔は2万円くらいだった気もするが、廃盤=値上がり必至なので仕方なし。逆にこの値段で落とせたのはラッキーだったかもしれない。とはいえ、所詮は中古品。程度はかなり良かったものの、追加メーターの設置跡や擦り傷が目立つ。

ここで考えたリフレッシュ法は3つ。「1:染めQで塗って終了」「2:プロのリペア屋に頼む」「3:プロの内装屋でレザーなどを張り込む」だ。傷の度合いを考えると選択肢1は現実的ではない。選択肢3も金額的に厳しい(10万円以上?)。消去法で導き出したのは選択肢2だった。

知り合いの業者などいないため、ウェブ検索で見つけた出張専門のリペア職人にメールで依頼。すると2万円+出張費(3000円くらい)で対応可能との返事が! 想像以上に安い…が、クオリティは未知数だ。

リペア職人・ReMPiCの長治さん。仕事に使っているクルマがオールドMINIバンというのも渋すぎる。

「完璧に復元できるわけではないですが、目視で傷が分からないレベルには補修できますよ」とは、施工を依頼したリペア職人・ReMPiC(リムピック)の長治さん。同社は、米CGI社の特殊プロダクツを扱うトータルリペアのフランチャイズ店で、内装はもちろんホイール修理(しかも装着状態で!)までこなす出張専門のプロだ。

「今回はダッシュボードが外れた単体状態なので、ありがたいです。装着状態だとフロントウインドウの角度などによってはかなり厳しいケースもあるので…」と解説を折り交えながらテキパキと作業を進める。

接着剤の跡などはペーパーで削り取っていく。場合にはよっては特殊パテを使うケースもあるそうだ。
ペーパー等で処理した部分を筆で塗装していく。この後のエアブラシ塗装への下準備でもある。
エアブラシを使って全体を塗装。この段階でガンの噴射量を調整しながら表面のシボ模様も再現していく。

大まかな流れは、専用の汚れ落とし→ペーパーがけ→脱脂→筆塗装→エアブラシ塗装となるのだが、使用する溶剤や塗料は、完全な専用品。そしてそれらは、伸縮、色落ち、色の定着性など、アメリカの第三者機関で性能検証を行ない、高い分析結果を残しているシロモノとのこと。

塗料は内装のカラーに合わせてその場で調合していく。

「市販品で似たようなモノがありますが、それらは大半がCGI社のコピー品なんですよね。塗った瞬間は綺麗ですが、耐久性で差が出ますよ」。

カラーはもちろん、シボ模様も再現されて新品のような状態に復活したダッシュボード。

作業は約2時間で終了した。当初の不安などどこ吹く風か。まるで新品のようなクオリティだ。もちろん、補修箇所を集中して見れば違和感を覚えるだろうが、明らかな傷は完全に姿を消した。凄まじい技術力である。

作業を眺めていて気づいたのは、シボ模様の再現方法。エアブラシの吐出量を調整しながら、粒子でテクスチャーを作っていくのだ。本人は「難しくないですよー」と言うが、改めてプロの技を見せつけられた次第だ。

いつもの光景…。

さて、問題はこのダッシュボードをどうやって交換するか、だ。ショップに頼むと脱着で10万円コース。生活を考えると、かなり痛い出費だ。そんなこんなで「お金がもったいないし自分でやるか…」と決意しかけた矢先、事件が起こった。

ある朝、FD3Sを走らせていると、「ポン」という聴き慣れない音とともにダッシュボード裏にあるヒーターコアが爆発(FD3Sあるある事件)! 助手席奥から100度近い冷却水が車内へ吹き出し、あわや大火傷寸前の大惨事に。あまりの衝撃的事態に写真を撮る余裕もなかった…。

そのまま積載車をチャーターして主治医のRE雨宮へと緊急搬送。そして、ヒーターコアの交換(=ダッシュボード脱着)とともに、計らずもリフレッシュしたダッシュボードへの交換が敢行されたのであった…。トホホ。

取材協力:リムピック TEL:080-4173-9682

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