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純正の振動対策機能も活かす!
バランス率を追求したピストン&コンロッド
かつて定番チューンベースだったランエボやWRX STIが生産終了となり、現行モデルでその役割を引き継いだのがGRヤリス。世界で勝つために開発された4WDスポーツのポテンシャルは誰もが認めるもので、HKSでもデビュー以来、主力車種としてパーツ開発に取り組んできている。
HKSでは、すでに様々なGRヤリス用パーツをリリース済みだが、そのラインナップに新たに加わるのがここで紹介する強化エンジンパーツだ。
鋭い人なら気付いたと思うが、このタイミングでエンジンパーツというのは、HKSとしては異例となる流れだ。吸排気、ブーストアップ、冷却系の次はタービンとくるのが通例なだけに、GRヤリスではタービンよりも先にエンジンパーツが開発されたというわけだ。
「G16Eは3気筒ゆえの振動はあるものの、基本的には優れたエンジンです。耐久性もテストでは最大500ps近くまで対応できるのですが、その一方でミスファイアリング制御などいくつかの条件が重なるとノーマルに近いパワーでもブローしてしまった例は少なくありません。そこで、HKSでは進めていたタービン開発を中断し、強化エンジンパーツを優先することにしたのです」と説明してくれたのは、HKSでエンジンパーツ開発を手掛ける高橋さん。
様々な解析を重ねた結果、HKSがG16Eのアキレス腱と特定したのがピストンだ。純正品は鋳造ながら肉抜きが施され、テーパー形状のピンボスが採用されるなど革新的な設計なのだが、トラブルが発生したエンジンでは、そのピストンが木っ端微塵となっていた。
そこでHKSが用意したのが、強化ピストンとコンロッドのセットだ。ピストンはもちろん鍛造品の87.5φで、高温強度に優れるA2618材の採用で軽さと高剛性を両立させたブリッジ構造を実現。
24φという極太のピストンピンを採用しているのもG16Eの特徴のひとつ。HKSのキットでもピン径は24φを踏襲しているが、肉厚の適正化と短縮で123.5g(純正143.8g)の軽量タイプとした。
ピストンスカートは純正で装着されている3本のピストンクーラーに対応する設計。その他、スカートのシリンダー面には焼付き防止とフリクション低減の2層コートを採用する。
コンロッドはニッケルクロム鋼の削り出しで、独自設計のI断面形状により純正比25%アップの強度を獲得。表面には疲労強度を向上させるためのWPC加工も施されている。
そして、このセットの大きな特徴となっているのが、純正同様のバランス率とすることで、G16Eのバランサー機構をそのまま生かせる点だ。これはピストンとコンロッドを一貫して設計、製造できるHKSだからこそ成せるワザである。
さらにHKSでは、G16Eチューンの第2の矢として、1750ccキットも準備中。このキットに加えて先進機構を追加したコンプリートエンジンも検討中というから、今後もHKSのGRヤリスチューンには目が離せなさそうだ。
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