「9台のR30スカイラインを所有!?」 変態的サンマル家族が愛する4ドアセダンのディーゼルGT-Xに大注目

余裕の動力性能と日常域での扱いやすさを両立

サンマル一家が所有する超マニアックモデルにズームイン

6代目スカイラインとして1981年8月に発売されたR30型。当初、グレードは大きく分けて直4のZ18S/E、Z20S/E型を搭載するTI系と、直6のL20E/ET型、ディーゼルLD28型を載せるGT系で展開。2ヵ月遅れて4バルブDOHCのFJ20E型を載せるRS系が登場した。取材車両は、フロント&リヤ周りのデザインが見直された1983年10月以降の後期型で上級グレードのディーゼルGT-X。車両型式はER30だ。

オーナーの母親がHR30ターボGT-Eの5速MT車に26年も乗っているかと思えば、オーナー本人はディーゼル車を乗り継いだ祖父の影響でディーゼル好きになり、ディーゼルモデルに狙いを定めてこのER30を購入したと言うのだから、やはり血は争えない。

さらに、オーナーの旦那さんもR30好き。聞けば自宅にはHR30とDR30、VPJR30が計9台(部品取り車含む)もあるそうで、もはや開いた口が塞がらない。ちなみに旦那さん、婚約指輪代わりにDR30前期型4ドアをオーナーにプレゼントし、11月30日(いいサンマルの日)に入籍したとのこと…。

そんな“変態的サンマル一家”の熱すぎるエピソードにクラクラしながらも、気を取り直して取材を続行。初めて間近に見るER30はトランクリッドのエンブレムが外されてる以外、ノーマル状態をよく保ってる。同時に、しかるべきオーナーの元で大事に乗られてることに思わず手を合わせてしまった。

ボア径φ84.5、ストローク量83.0mmから2792ccの排気量を稼ぐLD28型。この数値はガソリンエンジンのL28型に対してボア径が1.5mm小さく、ストローク量が4mm長く、排気量は39cc大きい。当時のディーゼルエンジンは商用車向けが多く、カム駆動はOHVが一般的だったが、LD28型(とエステートバンに搭載された2.0L・4気筒のLD20型)はSOHCを採用するのが特徴だった。

独立したメーターナセルとセンターコンソールを持つダッシュボード。普及グレードのGT-Lに対してGT-Xではパワーステアリングやチルト&テレスコピック調整機構、ワンタッチ式パワーウインドウ、集中ドアロックなどが標準装備となる。

メーターはC210時代に始まる水平ゼロ指針タイプを採用。スピード&タコメーターを中心に、右側に油圧計と水温計、左側に燃料計と電圧計が配置される。ディーゼル車の証、グローランプは警告灯右列の一番下に付く。

センターコンソールは上段にディーラーオプションのマニュアルエアコンとデジタル式時計、下段に非DIN規格のAM/FMラジオチューナーとカセットデッキを装備。その下に灰皿とシガーソケットが確認できる。

昭和な雰囲気が漂うハーフシートカバーを装着した前席。センター部を横ストライプトリコット、サイド部を無地トリコットとした表皮はL20E/ET型を載せる上級グレードGT-E・X系に共通する。

後席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。GT-E・X系には格納式センターアームレストが装備される。

外装におけるR30の特徴と言えるのがセンタールーフアンテナ。二段伸縮式で、室内側に設けられたレバー操作によって角度調整もできる。ちなみに、パサージュを除くTI/GT-E・X系にはメーカーオプションでリヤガラスアンテナも用意されていた。

ホイールは標準のスチール製14インチ。センターキャップの“S”は金色となる。タイヤは標準装着と同じ185/70R14サイズのエコピアEP150が組み合わされる。

当たりの柔らかい運転席に腰を下ろしてイグニッションオン。グローランプが消えるのを待ってからもう一段キーをひねるとLD28が目を覚ました。アイドリング時の振動や音は、R31のディーゼルモデルに搭載されたRD28型よりも大きく感じられる。

シフトレバーを1速に入れ、クラッチペダルをゆっくりリリースしていくと、アイドリング回転にも関わらずスルスル…と走り出した。さすが2.8Lのディーゼル、エンストするそぶりは皆無だ。普通に加速する分には2000rpm手前でシフトアップしていけば十分。5速1000rpm、40km/hからでもアクセルペダルを踏み込むだけでスッと前に出ていく。91ps/17.3kgmというカタログスペックからは想像できない力強さだ。

今、にわかに注目を集めはじめているディーゼルエンジン。国内メーカーではマツダが、海外メーカーではBMWやメルセデス、ボルボ辺りが力を入れているようだが、どれもせいぜいここ10年くらいの話にすぎない。一方、日産は40年以上も前、5代目スカイラインC210型でLD28型を載せた280D GTシリーズを初めてラインナップ。R30、R31にも同様のモデルが用意された。

時代的に「ディーゼルは商用車のエンジン」と認識されていただろうから、スカイラインに載せるのは日産にとって冒険であり、英断でもあったと想像する。LD28型は旧いエンジンだからクリーンかどうかは別としても、当時、乗用車では珍しかった直6ディーゼル搭載のGTカーを世に放った日産は、今にして思えば随分と時代を先取りしていたことになる。ディーゼルが盛り上がるこのご時世、ER30は再評価されるべき1台だと強く思った次第だ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:ER30
全長×全幅×全高:4620×1675×1385mm
ホイールベース:2615mm
トレッド(F/R):1410/1395mm
車両重量:1280kg
エンジン型式:LD28
エンジン形式:直6SOHCディーゼル
ボア×ストローク:φ84.5×83.0mm
排気量:2792cc 圧縮比:22.0:1
最高出力:91ps/4600rpm
最大トルク:17.3kgm/2400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR185/70R14

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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