「D1GP2021最強マシンの全て」王者・中村直樹のS15シルビアに迫る!

最終戦では4速ギヤを破損しつつも優勝!

奥伊吹戦から投入したペルギア08SPが好成績の秘訣か

コロナウイルスの感染拡大によって大幅に開催スケジュールが変更され、まさに波乱万丈のシーズンとなった2021年のD1グランプリシリーズは、11月20日(土)・21日(日)のEBISU DRIFT(2連戦)で幕を閉じた。

結果は、前戦までにポイントを稼いでいた中村直樹選手が逃げ切りに成功。最終戦を前にしてシリーズチャンピオンを獲得したのだ。

中村選手と言えば、“追走の名手”として知られる奈良県出身のドライバーだ。D1グランプリに復帰した2019年は、7戦中5戦でポイントを獲得してシリーズ6位(優勝1回)を獲得。翌2020年は度重なるエンジンブローやトラブルに悩まされつつもシリーズ5位(優勝1回)の戦績を残している。

熾烈を極めたエビス2連戦ハイライト

ランキング2位の横井選手に29ポイント差を付けて迎えた第5戦。ベスト8戦で横井選手が敗退したのに対し、末永(正)選手との対戦で中村選手は大クラッシュしつつも勝ち上り、ベスト4戦に進出したことでシリーズチャンピオンが確定した。

そして翌日に行われた第6戦(最終戦)。単走決勝では前日の大クラッシュの影響を感じさせない走りを披露し、3位通過となる98.96点を獲得。この瞬間、単走チャンピオンとチームチャンピオンのダブルタイトルも手にしたのだ。

追走トーナメントに入ってからはベスト8戦でミッションの4速ギヤを失ったものの、ファイナルギヤを交換してなんとか対処。決勝戦では宿敵の小橋選手に対してビッタビタの後追いを決めて勝利し、今期4勝目をマーク。有終の美を飾った。

「チャンピオンは嬉しいけど、今シーズンは小橋に負けっぱなしだったので! 一番強いヤツを倒してこそのチャンピオンなので『小橋がエビス南では最強』ってイメージがある中で、最後に勝てたことは本当に嬉しかったです!」と中村選手。

D1GP最強シルビアを徹底チェック

中村選手の愛機S15シルビアは、2019年のD1グランプリ復帰に向けて製作され、本人が経営するショップ“Nスタイル”で管理。オリジンラボのフルエアロ、前後ワイドフェンダーにGTウイングといったパーツ構成は変わらないものの、2021年仕様はグラフィックを一新してイメージチェンジを図っている。

エンジンは2JZ-GTEだ。2020年はストロークを大幅に高めたトルク重視の3.4L仕様としていたが、シーズン中に2回もブローしたため仕様変更。2020年シリーズ最終戦(筑波)から、東名パワードの鍛造ピストン&コンロッド、カムシャフトを組み込んだ3.1L仕様を愛用している。

タービンはSINCOのEXマニを介してGCGのG42-1200コンパクトをドッキング。奥伊吹やエビスではブースト1.7キロでおよそ780ps、筑波やオートポリスといった高速コースでは1.8キロの800psオーバーで勝負する。

制御はフルコンのLINKで、セッティングは“ディバージョン”が担当。スロットルはアンチラグシステムを活用するためにボッシュの電子制御式としている。

ミッションはサムソナスの6速シーケンシャルドグを使っているものの、シーズン中に3回(奥伊吹戦、オートポリス戦、エビス戦)も壊れたため、今後は別のミッションに載せ換え予定とのこと。デフは、ファイナルギヤ交換を瞬時に行える定番のクイックチェンジだ。

リヤウインドウ下部にはATLの燃料タンクが配置され、トランク位置にはコーヨーラドのラジエターをマウント。ラジエターコアはトランクフロアを起点に後方に大きく傾けてマウントされており、走行風を導くためにアルミ製の導風板で囲われている。

タイヤはヴァリノのペルギアで、フロントにはバランス重視の08R(265/35-18)、リヤにはトラクション重視の08SP(285/35-18)を履く。なお、筑波戦までは駆動系への負担を考慮してリヤに08RSを履いていたが、横井選手や小橋選手にコテンパンにされたことから、さらなるトラクションアップを狙い、2回目の奥伊吹戦から08SPに変更したそうだ。

車高調はスタンス(スペシャル仕様)で、バネレートはフロントが12kg/mmで、リヤは4〜6kg/mmの設定。フロントのロアアームはGKテックをセレクト。そこにオリジナルのナックルを組み合わせて大幅な切れ角アップを実現している。

リヤのアーム類もGKテックで統一。タイヤを08SPに変更してからは、トラクションロッドを調整したり、バンプタッチを早めたりと、セッティングを煮詰めながらトラクション性能に磨きをかけたそうだ。

室内は競技仕様として作り込まれ、ダッシュボードは純正形状のカーボン製に変更している。ロールケージはサイトウロールケージが製作を担当。ステアリングはNスタイル330φで、フルバケはグッドガンとNスタイルのコラボモデル。シートポジションは「ウイリーする時にハンドルが近くないと不安なので…」と、かなり前方に寄せているのが中村流だ。

D1GPマシンのトレンドを押さえつつ、中村選手なりのドリフト理論が詰め込まれた最強シルビア。ここからさらに熟成を重ねて2連覇を狙う……のかと思いきや、「チャンピオン取れたので、来年は新たなマシンでやりたいですね」と爆弾発言が! これは、しばらく中村選手の動向から目が離せなさそうだ。

取材イベント:D1グランプリシリーズ第5戦&第6戦エビス
TEXT&PHOTO:山本大介(Daisuke YAMAMOTO)

【関連リンク】
D1公式サイト
https://d1gp.co.jp

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