多くの人がモータースポーツの入口として挑戦できる価格を実現
モータースポーツの登竜門と言えるレーシングカート。F1ドライバーをはじめとする多くのレーシングドライバーが、そのキャリアをレーシングカートとともにスタートしているのはご存知の方も多いだろう。しかし、レーシングカートを楽しむのは、ちょっとハードルが高いのも事実である。
クルマを操る楽しさをダイレクトに体感でき、ドライビングテクニックの向上を図れる一方で、車両価格、運搬、保管、整備といった難題が入門者の前に立ちはだかる。経済的に恵まれた家庭の子どもしか続けられないようでは、今まで以上の普及は見込めない…。そこでガズーレーシング(以下GR)は参加しやすい価格と仕組みを実現し、子どもたちやファミリーが身近に楽しめる入門用レーシングカート「GR KART」を9月10日に発売した。

「GR KART」の原点は、モリゾウこと豊田章男会長が抱いた「野球やサッカーのように、モータースポーツもより多くの人が挑戦できるものであってほしい」という思いである。そして、モータースポーツの入口であるレーシングカートをもっと身近なものにしたいという発想から、GR KARTは開発された。
驚かされるのはその価格だ。通常、カデットカートと呼ばれるジュニア向けの小型レーシングカートで60〜80万円、大人用カートになると欧州メーカーのフレームにエンジンを載せて80〜100万円というのが価格の目安。それに対して、GR KARTはなんと38万5000円(税込)である。
メンテナンス、運搬、保管、安全性といった課題に応える工夫が随所に
その低価格を実現するため、GR KARTでは設計の考え方そのものを変えた。フレームの素材は欧州メーカーが用いる高価なクロムモリブデン材ではなく、一般的な鋼管を採用。製造工程にはロボットを導入し、GR車両のロールケージ製作にも採用している新しい溶接技術を用いる。
エンジンは排気量215ccの空冷4ストロークOHVで、発進機構には遠心クラッチを採用する。エンジンには自己充電式バッテリーを内蔵し、別体バッテリーの搭載や充電の手間をなくしている。また、新開発のダイヤフラム式キャブレターはフロート室を持たない構造により、横Gに伴う燃料の液面変化の影響を受けにくいという。始動前に燃料をキャブレターへ引き込むプライマリポンプも備え、走行前に燃料を送る作業を簡単にした。

耐久性への配慮としては、リヤシャフトに錆びにくいステンレス材を、燃料タンク内の配管にはガソリンによる劣化を抑えるため金属を採用する。

メンテナンス面の工夫も多い。駆動はチェーンではなくベルトで、チェーンオイルによる汚れがなく、オートテンショナーにより張り調整も不要とした。

運搬面では、分解せずにノア/ヴォクシーにも積載できるサイズとした。大型の専用トランスポーターを用意しなくても、日常のクルマでカートコースへ運べるというわけだ(別売で専用固定具も用意)。
保管面では、立置き対応のエンジンオイルキャッチタンク、フロート室を持たないダイヤフラム式キャブレター、立てても燃料が漏れにくい給油口の向きを組み合わせることで、ガソリンとエンジンオイルを入れたままカートを立てられる構造とした。別売の立置き台車も用意される。

画期的なのがワンタッチで操作できるペダルスライドとステアリングチルトを採用していること。これによって身長135cmから185cmまでのドライバーへの対応が可能となった。子どもから大人まで同じ1台を共有できるから、ファミリーで楽しむ機会も増えそうだ。


またレース参加時には、最大15kgのウエイトを積める別売のウエイトBOXで重量調整ができる。さらにこのBOXにはトランスポンダーの装着場所も設けられているなど、実際の利用者のかゆいところに手が届く工夫が随所に盛り込まれているようだ。
そして、子どもたちが乗る場合、親として特に気になるのは安全面だが、GR KARTではその点にもかなりの配慮が窺える。
リヤタイヤ全体をバンパーで覆っているのは、レーシングカートのクラッシュや事故の要因としてタイヤ同士の接触が多く、他車のフロントタイヤと自車のリヤタイヤとが接触して弾かれるような場面を避けるため。さらに万一のハブ抜けを防ぐリヤハブのストッパーピン、乗降時に手をつく面を上部に設けて熱いマフラーに触れにくくしたシート形状、アクセルが開きっぱなしになるトラブルを防ぐアクセルワイヤーの固定方法といった構造を採用しており、入門者でも安心して扱えそうだ。

TPS(トヨタ生産方式)の考え方も取り入れた「蒲郡GR KART工房」
GRはGR KARTを「クルマ屋がつくるカート」と表現する。そして、クルマづくりで培ってきた知見や工夫を取り入れながら一台一台つくり上げているとする。
生産を担う蒲郡GR KART工房については、小規模なモノづくりの現場だからこそ新しい発想や技術をいち早く試せる「挑戦の場」と位置づける。TPS(トヨタ生産方式)の考え方に基づいて、品質確保と工程の継続的な改善に取り組みつつ、新しい技術にもトライし、そこで進めた原価低減を、入門者が始めやすく長く楽しめる商品へと還元することを目指すという。
GR KARTの販売は、国内の一部カートコース(9月9日時点で36拠点)や一部GRガレージ(同7拠点)で行なわれる。拠点数は今後順次拡大予定だ。
また用品とスペアパーツは、ユーザー自身が手軽に注文できるよう楽天市場内の専用ECサイトで販売される。
■GR KART 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/grkart/


コースライセンスの代替にもなる専用アプリ「GR app」も登場
今回あわせて明らかにされたのが、専用アプリ「GR app」を軸にしたサポートの枠組みである。アプリでは各種情報の閲覧に加え、走行に必要な知識を学ぶ座学コンテンツを利用でき、利用者登録と「ドライバーパスポート」の取得・管理が行なえる。
このドライバーパスポートは、対応するカートコースでスポーツ走行を行う際の資格証明としても利用可能。つまりGR KART購入者は、別途カートコースライセンスを取得することなく対応コースを走れるというわけだ。対応の有無は各カートコースへの確認が必要となる。ただし、SLカートスポーツ機構(SLO)が主催するSLカートミーティングのGR KARTレースに参加する場合は、別途定められたライセンスが必要とのこと。

「初めて運転するエンジン付きの乗り物」を入口に、将来のクルマ好きを育てたい
もっとも、GRがGR KARTに託しているものは、モータースポーツの間口を広げることだけではない。そこからもう一段先に、大きな夢がある。小さな子どもたちにとって、GR KARTは初めて触れるクルマであり、初めて運転するエンジン付きの乗り物になり得る。そこでクルマの楽しさ、運転する楽しさを知ってもらいたい、という思いである。
もうひとつ、GR KARTの製造には多くのサプライヤーが参画している。そうした企業も含めて業界全体が盛り上がることが、将来のクルマ好きを育てる「種まき」につながるのではないか。そんなGRの思いを乗せながら、GR KARTはいよいよ走り始める。
■GR KART 公式サイト https://toyotagazooracing.com/jp/grkart/
GR KART主要諸元
| 全長(mm) | 1820 |
| 全幅(mm) | 1160 |
| 全高(mm) | 670 |
| ホイールベース(mm) | 1045 |
| 乗車定員(人) | 1 |
| 車両重量(kg) | 83 |
| 総排気量(cc) | 215 |
| メーカー希望小売価格 | 38万5000円 |


