霊峰富士の裾野にある朝霧野営地で開催された
ミリタリーヴィークルファンのためのキャンプイベント

2026年8月1日(土)・2日(日)の2日間に渡って、静岡県富士宮市にある朝霧野営地にて『第4回ミリタリーヴィークルフェスティバル』(以下、MVF)が開催された。主催は一般社団法人『日本ミリタリーヴィークル』(以下、NVMA)であり、会長の楠林正将さんは朝霧野営地の管理人でもある。

富士の裾野にある朝霧野営地の本部建物。イベント時には『峠の茶屋』と呼ばれる、軽食が採れる喫茶コーナーが出店。この日も冷やし中華や飲み物などが提供された。なお、店名の由来は、アニメーター として数多くの作品を手掛けた故・大塚康生さんの公式ホームページの名称から。近くオープンする『大塚康生MV記念館』は建物2階になる予定。

NMVAはミリタリー・ヴィークル、すなわち歴史的に貴重な軍用車両の愛好家が集って2012年に創設した団体であり、世界各国が開発した走破性の高い軍用車両を収集・再生・保存するとともに、展示会や広報活動を通してわが国の自動車文化発展に寄与することを目的とした団体である。

M38などのジープシリーズの後継として1960~1990年代にかけて米軍と西側同盟諸国軍で活躍したM151A2フォードMUTT。「ケネディジープ」の愛称を持つが、ジープシリーズとは異なり、モノコックボディ構造を持つ別車両。写真の車両はシュノーケルや延長排気管を持つ海兵隊仕様だ。

また、愛好家の交流・親睦のためのイベント開催、展示館の確保などの活動を行うほか、災害支援活動にも力を入れており、今回のイベントもNMVAの活動の一環として開催された。

トレーラーを曳いて参加したM151A2フォードMUTTのリヤビュー。同車は悪路走破性と乗り心地の向上のため、前フロントダブルウィッシュボーン・後スイングアクスルの四輪独立懸架として設計された。だが、高速走行中に旋回するとイン側のリヤサスがジャッキアップ現象を起こし、横転事故が相次いだことから改良型のA1型を開発したが、万全とは行かなかった。写真のA2型からはリヤサスをセミトレーリングに改めたモデルで、併せてフロントフェンダーの意匠を変更し、前後のターンシグナルを大型化した。米政府は安全性を理由に同車の払い下げを禁止しており、米本土以外で廃車された車両やスクラップを修復した車両以外に入手手段はない。

今回で4回目を数えるMVF(前身となるサマーキャンプは過去に15回ほど開催)は、毎年8月の第1週に同団体のホームベースである朝霧野営地にて、会員やミリタリーヴィークルファンの親睦を深めるために開催されるキャンプイベントである。オーナーはもちろんのこと、軍用車両を所有しない人にも広く門戸が開かれているイベントであり、入場料は無料(宿泊する場合は利用料が必要)となっている。今回は合計34台・60人ほどが参加した。

ジムニーや軽ワンボックスカー、キャンピングカーなどの民生車両で参加するファンも少なくはない。

筆者が訪れた2日(日)の午前中には、初日だけの参加者や遠方からの来場者などはすでに帰ってしまっていたが、それでもM151A2フォードMATTや73式小型トラック(正確には三菱ジープに用廃となった自衛隊ボディを載せた復元車)、 ダッジWC52 3/4tトラックなどに混じって民生用の三菱ジープやスズキ・ジムニーなどが会場に止まっていた。

ナローボディのシャシーに自衛隊ボディの車体を乗せたと思しきJ54A仕様の三菱ジープ。スプリットタイプ仕様のフロントシールドやヘッドランプ下部のB.Oランプ(灯火管制ランプ)などが民生仕様のJ54との識別点。こちらもトレーラーを牽いての参加である。

陸上自衛隊から高機動車と偵察用オートバイが特別展示
敷地内には貴重な軍用車両が置かれていた

今回のMVFには陸上自衛隊の板妻駐屯地から“高機”こと高機動車と偵察用オートバイのカワサキKLX250が広報目的で特別展示された。板妻駐屯地の隊員4名はNVMA会員から温かく迎えられ、車両の詳しい説明を受けるとともに、日頃なかなか見る機会のない陸自車両のエンジンなどを見せてもらっていた。

陸上自衛隊の板妻駐屯地から広報活動の一環として来場した高機動車。陸自の人員輸送の要となる車両だ。開発・納入はトヨタで、製造は日野自動車が担当している。トヨタはわが国の国防に多大な貢献をしているだけでなく、フランス陸軍やスペイン陸軍でもランクル70が正式採用されるなど、軍需分野での成長が目覚ましい。
偵察用オートバイのカワサキKLX250。こちらも板妻駐屯地からやってきた車両だ。生産終了から10年が経過し、そろそろ後継車両が気になるようになってきたが、防衛省は後継車種の導入を明らかにしていない。
第4回MVFのために来場した板妻駐屯地の隊員のみなさん。展示車両を解説するだけでなく、参加者からのマニアックな質問に快く答えていた。

また、朝霧野営場にはM561ガマゴート6WDトラック(連結を外して4WD状態で走行していた)などの車両が保管されており、会場のオフロードコースでは希望者による同乗試乗なども行われていた。

1960年代に米軍が開発したM561ガマゴート6WDトラック。特徴的な連結シャシーを用いることで、一見するとトラクターがトレーラーを牽引しているようにも見えるが、じつは連結車両も駆動する6輪駆動車で、前輪と後輪を駆動させる4WS機構も備えている。ベトナムへの軍事介入を想定して、ジャングルや泥濘地、河川の多い地域での運用を前提にした水陸両用オフロード軍用輸送車両だ。当初、M151シリーズを完全に代替する計画もあったが、複雑な機構と調達コストの問題で断念された。トラクター部分だけを切り離しての走行も可能。

会場の倉庫にはレストアが終わったと思しきダッジM43(M37の野戦救急車型) やウィリスMA (ウィリスMBのプロトタイプ)のほか、屋外にはレストア待ちと思しき三菱ジープやダッジ3/4tトラックなどが置かれており、軍用車両が好きな人にとっては、それらの貴重な車両を見学するだけでも楽しいだろう。

ダッジM37のバリエーションとして誕生したM43野戦救急車型。M37シリーズはウィリスMB/フォードGPWとともに、第二次世界大戦を連合軍の勝利へと導いたWCシリーズの後継として1951年に登場。朝鮮戦争とベトナム戦争で運用された。写真の車両は朝霧野営地の本部建物内に保管されていた。
MB/GPWに始まる米軍採用の軍用ジープの最終型となるM38A1のバリエーションのひとつで、ホイールベースを約50cm延長したウィリスM170。積載性の向上から、おもに野戦救急車として運用された。ジープシリーズでは非常に珍しい車種だ。なお、その後ろにチラリと見えるのがウィリスMA。MBのプロトタイプで、MB/GPWに至るジープシリーズの第2次トライアルで、バンタム40BRC、フォードGPとともに、それぞれ1500台が増加試作車として生産された。このトライアルにウィリス社が勝利したのはみなさんご存知の通り。これらの車両は朝霧野営地の倉庫に保管されている。
陸上自衛隊が使用していた73式中型トラック(現・1 1/2tトラック)。1973年に物資や人員の輸送用トラックとして誕生した。以前は日野レンジャーのシャシーを流用していたが、現行型は高機動車と共通のシャシーを使用している。写真の車両は朝霧野営地の保管車両で、用廃となった車両を修復したものだろう。自衛隊車両は原則としてシャシーやボディをカットし、スクラップとして業者に払い下げられる。これを手に入れて修復し、民間車両のシャシーに架装するのが一般的だが、かつてはそのまま走行可能な状態でスクラップ業者が販売(もちろん非合法)することもあった。

また、同地では2021年に亡くなったアニメーターであり、ジープ 研究家でもあった大塚康生さんを偲んで『大塚康生MV記念館』の設立を予定している。正式な開館前と言うことで写真撮影はできなかったが、本部建物2階にはすでに大塚さんが描いたジープなどのイラストや、彼が生前に集めたコレクションの一部が展示されていた。正式な開館はもう少し先になるようだが、オープンしたらぜひ訪れてみたい。

NMVAでは秋にもキャンプイベントを開催予定
軍用車ファンは公式サイトを要チェックだ!

NMVA会長の楠林正将さん(左)と理事のデューク廣井さん(右)。井さんは旧日本陸軍の開襟軍装(山下奉文大将が着用してきたことで知られる)を着ていることでわかる通り、このイベントは軍装のコスプレもOK。じつは筆者もベトナム戦争で米陸軍兵士の標準装備(ジャングルファティーグの上下とジャングルブーツ、M1ヘルメット&ミッチェルパターンのヘルメットカバー)という出立でイベントを取材した。

NMVA会長の楠林さんと理事のデューク廣井さんは、
「霊峰富士の麓・標高1000mにある朝霧野営場は、約2万坪の広大な野営場とオフロードコースを備えたNMVAのホームベースですが、オフロード4WDやオフロードバイクファン、サバイバルゲームのファンが友人や家族連れで楽しめるキャンプ場として一般の方にも利用いただけます。近くオープンする『大塚康生MV記念館』は、NMVAの顧問だった大塚康生さんが残した貴重なイラストをご見学いただけます。記念館は入場無料で公開を予定しています」

自衛官の皆さんを囲んで会食するNMVAのみなさん。

「軍用車両が好きな方なら、車両や免許の有無を問いません。会の趣旨に賛同いただける方なら老若男女を問わず歓迎いたします。近いところでは、10月31日(土)・11月1日(日)の2日間にわたって朝霧野営場を会場に『第26回ミリタリーヴィークルコンベンション』を開催します。これは軍用車両の愛好家が集うキャンプ&フリマイベントです。料金はひとり2000円で、フリマ出店者は3000円(女性・小学生以下は無料。31日18時からの懇親交流会に参加する場合は別途2000円が必要。※事前申込制)です。NMVAの活動に興味のある方やミリタリーヴィークルのファンの方はぜひ遊びに来てください」
と語る。

第4回MVFの告知ポスター。

NMVAでは中古軍用車両の紹介や購入相談、グッズや部品仲介などの活動も行っている。会について詳しく知りたい人は公式ホームページにアクセスしてほしい。

写真で見る『第4回ミリタリーヴィークルフェスティバル』の車両

第二次世界大戦時にアメリカで開発された1942年型WC52。ダッジ・ウェポンキャリアとも呼称されるこの車両は、ジープよりもひと回り大きな車体サイズを生かして物資輸送に活躍した。WCシリーズはバリエーションが多く、兵員輸送型や野戦救急車、偵察車、対戦車型などさまざまな車両が生産された。なお、写真の車両は車体前部にウインチを備えることからWC52にと思われる(ウインチ未装備型はWC51)。
米陸軍航空隊のフォロー・ミー・ジープ(飛行場で航空機を安全に駐機スポットまで誘導するため、目立つように市松模様で塗装された)仕様のジープ 。一見するとウィリスMB/フォードGPWに見えるが……。
ウィリスMB/フォードGPWは助手席の座席シート下に給油口がある。写真を見れば明らかな通り、この給油口の位置は戦後型ジープのものだ。左ハンドルであることを考えると、おそらくは三菱ジープJ3の初期生産型をベースにしたローフード改(背の高いカウルフードとフロントグリルをMB/GPWのものに交換したカスタム)だろう。完成度は高く、ワイパーは初期型ジープ の手動式に改められている。
自衛隊で運用された73式小型トラック復元車。用廃のボディを民生用の三菱ジープ のシャシーに載せ替えて再生された車両。
73式小型トラックとJ54Aに復元した三菱ジープ。右側の73式小型トラックは先ほどの車両とは別個体で、幌が大きく膨らんでいることから珍しい重MAT(ミサイル・アンチ・タンク。すなわち対戦車誘導弾発射型)であることがわかる。オーナーに話を聞くと、さらに貴重なノーカットボディだとか。よく見ると重MATの発射機が車体後部に格納されている。
ミリタリーパジェロの愛称で知られる1/2tトラックの復元車。自衛隊が運用中の車両であるが、納入時期の古いクルマは退役し、スクラップとして払い下げられている。おそらくは2代目パジェロの2ドア車のシャシーに、修復した自衛隊ボディを載せて再生した車両だろう。
こちらは先ほどの車両とは別個体の1/2tトラックの復元車で、トレーラーを曳いている。1/2tトラックは導入当初は排気ガス規制の影響か、73式小型トラックの名称を引き継いでいたが、実態と名称がそぐわないということで2003年に制式化対象から外され、1/2tトラックと呼称されるようになった。なお、民生用の乗用車をそのまま使用する業務車を除くと、自衛隊で初めてエアコンを標準装備した車両となった。
J30系の三菱ジープ(搭載エンジンなどが不明なため形式の特定はできず)。ワイドトレッド・ロングホイールベースをベースの民生用として開発された三菱ジープの2ドアワゴンボディで、全天候型の金属ボディが特徴となる。舗装路の整備が遅れていた昭和期に官公庁や林業、工事現場などで「頼れる相棒」として活躍した。本格的なCCV(クロス・カントリー・ヴィークル)とレジャーユースのSUVという用途の違いこそあれ、今年復活した三菱パジェロのご先祖様にあたるモデルだ。
ワイドトレッド・ショートホイールベースの三菱ジープJ55型(2代目)。NOx規制適合のために渦流室式の燃焼室を持つ4DR5型ディーゼルエンジンにインタークーラーとターボを組み合わせたモデル。1998年に生産を終了し、民生用の三菱ジープシリーズの最後を飾るモデルとなった。
イギリスの誇る、軍民で使用されてきたCCVであるランドローバー・ディフェンダー110。ジープの設計を参考に、大戦後に航空機用として在庫が豊富だったアルミをボディに用いたランドローバーS1から続くモデル。高い悪路走破性を持つとは言え、贅沢さと快適性をも追求した2代目モデル(L663)は所詮はSUVであり、その崇高な精神という点では初代モデルとはまるで異なる。
ここからは先ほど紹介したM561ガマゴートをもう少し細かく見て行くことにしよう。まずはサイドビューから。トラクターヘッドはトレッドの広さに対してホイールベースは驚くほど短い。同車は1969~1973年にかけて1万4274台が製造され、米陸軍と米海兵隊で運用された。実戦投入は1983年のグレナダ侵攻が最後で、1980年台中頃からより安価なハンヴィーシリーズやCUCV(民生用ピックアップトラックの軍用型)に置き換えられて行った。
M561ガマゴートのリヤビュー。エンジンはデトロイトディーゼル製3-53型159cu-in(2.6L)水冷2スト直列3気筒エンジンをトラクター後部に備える。最高出力は101hpとなる。ガマゴートはスペアタイヤを備えず、パンクした場合は中央の車輪と入れ替えて車輪をロックすることで対応した。車体後端部分の連結器に注目。
M561ガマゴートのフロントビュー。もともとこの車両は、F4UコルセアやF-8クルセイダーなどで有名な航空機メーカーのチャンス・ボート社が、森林火災用の消防車として自社開発した車両を元にしている。しかし、同社は車両設計の経験はあるものの、製造施設を持たなかったため、コンソリデーテッド・ディーゼル・エレクトリック・カンパニー社(CONDEC社)で製造された。
M561ガマゴートのトレーラー部分。連結器を介して動力が伝達され、トレーラー部分の車輪(後輪)を駆動する。連結を切り離し、トラクターヘッドだけでの走行も可能。
本来、M561ガマゴートはこのように連結した状態で運用される。なお、タミヤから1/35スケールで精巧なプラモデルが商品化されている。同社に興味がある人は手に取ると良いだろう(PHOTO:U.S.ARMY)。
インターメカニカ製のキューベルワーゲンのレプリカ。ドイツ軍が第二次世界大戦で使用した小型車両の精巧な復刻モデルで、本物のボディは金属製だが、こちらはFRP製のボディとなる。オーナーのFさんとはおおよそ10年ぶりの再会となり、旧交を温めた。
日本にも正規輸入されるウラルGear Up。ドイツ国防軍(陸軍)が使用していたBMW R71サイドカーの設計図と車両を非合法な手段によりスウェーデン経由で入手。これをリバースエンジニアリングし、コピー生産することにより、大祖国戦争(独ソ戦)勃発後の1941年8月から量産を開始したM-72型サイドカーをルーツに持つ。
ウラルGear Upのサイドビュー。2022年のウクライナ戦争の勃発後、製造元のURAL社は、西側からの制裁を回避するためにカザフスタンのペトロパヴリに新たな組立工場を開設に移転した。同社の本社機能はアメリカにあり、戦争の影響に加えて、ウラルNeoへの生産切り替えもあって、オーナー氏の弁では部品の入手で問題が発生しているという。
MVFの会場では、軍服や軍装品、軍用車両のパーツなどを販売するスワップミートも開催される。
MVFのほか『アポカリプス』や『VIET VIET MANIA』(通称・ベトベト)などのミリタリーイベントではおなじみの『野戦整骨 将』のブース。施術を行う将さんはマルチに活躍するミリタリーマニアの整体師だ。
朝霧野営地には部品取り車なのか、それともレストア待ちなのか、貴重な軍用車両が置かれていた。