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自衛隊新戦力図鑑

遠隔地に大部隊を迅速展開できる空挺作戦

陸上自衛隊 第1空挺団は、日本で唯一の空挺(パラシュート降下)部隊だ。輸送機や輸送ヘリによって迅速に空中機動し、遠隔地の重要地点や敵の背後に直接投入される部隊であり、陸自の最精鋭部隊として知られている。

8月20日、第1空挺団は年に一度の水上降下訓練を実施した。基本的に空挺降下は陸地に降りるもので、水上(海)への降下は他国の空挺部隊でも珍しい。

海上へと降着する空挺隊員。丸いパラシュートは「13式空挺傘」。スタティックライン式の降下で使われる。訓練は千葉県南部の保田海岸沖で実施された(写真/筆者)

さて、空挺降下は使用するパラシュート(傘)の違いから2種類の方法がある。1つが、航空機から飛び出した瞬間に自動的に傘が開く「スタティックライン」式。もう1つが、隊員自身の意志で傘を開く「フリーフォール(自由降下)」だ。前者は短時間で大量の人員を降下させるため、後者は少数の隊員を隠密投入するため、それぞれ用いられる。今回の水上降下訓練では、両者の方式が実施されている。

自由降下での水上降下。使用しているパラシュートは「MC-4」。細かな操縦が可能で、かなり狭い範囲に着陸することが可能。本隊の空挺降下の誘導や偵察を行なう事前潜入部隊が用いる(写真/筆者)

2種類の水上降下

まず実施されたのが自由降下による水上降下だ。高度1200mを飛行するCH-47J輸送ヘリから降下した。使用する傘は「MC-4」と呼ばれるタイプで、操縦性に優れ、ピンポイントの地点に降りることができる。

前述したように、自由降下は少数の事前潜入部隊を送り込むものであり、空挺団のなかでも特に練度の高い一部の隊員しか資格を持っていない。沿岸50m付近に着水した隊員は、自ら泳いで岸までたどり着くと、銃を構え、周囲を警戒したのち上陸を果たした。

自由降下した空挺隊員が周囲を警戒しながら上陸する。背嚢に浮力のあるものが入れてあり、それを支えに泳ぐのだという。とはいえ、銃や装具の重量を考えれば海岸まで泳ぐことは簡単ではないだろう(写真/筆者)

続いて行なわれたのが、スタティックライン式の降下で、約300m上空から実施された。本来であれば一気に大量の隊員が降下するのだが、訓練海面の範囲の都合から3人ずつに分かれてジャンプした。

使用する傘は「13式空挺傘(くうていさん)」。CH-47Jから飛び出すと同時に開傘する。注意が必要なのは着水時だ。傘が身体と繋がったままだと、水流や波に煽られた傘に巻き込まれる危険性があるため、着水直前に傘を切り離す。なお、自由降下と異なり、着水後はゴムボートで岸まで運ばれた。

着水の寸前にパラシュートを切り離す(左)。ハーネスの両肩に肩部離脱器と呼ばれる金具があり、リングを引くと切り離すことができる(写真/筆者)

島嶼防衛に向けて展開能力を強化

さて、水上降下はどのような場合に行なわれるのか? 自由降下については、島嶼部や沿岸部への隠密潜入手段のひとつと言えるだろう。一方でスタティックライン式の水上降下は、いくつか理由が考えられる。

まず、安全技能としての訓練だ。風の影響などで意図せず水面に降下してしまった場合の対処能力を高めるというもので、空挺団自身も公式に発表している。次に考えられるのが南西諸島防衛に向けた島嶼部への展開能力強化だ。陸上に適切な降下地点を確保できない場合の代替手段となるからだ。過去には実際に島嶼部で水上降下訓練を実施した例もある。

スタティックラインで降りた隊員。オレンジ色の物体は炭酸ガス式のフロート(浮き輪)。水上降下訓練はこれまでも行なわれてきたが、銃や背嚢など含めた完全武装で実施されたのは今回が初めて(写真/筆者)

年に一度とはいえ、着実に技術を積み重ねることで、有事における投入手段の選択肢を広げ、部隊の即応性を裏付けるものとなる。あらゆる状況に対応すべく困難に立ち向かう、まさに精鋭たる空挺団を象徴する訓練と言えるだろう。

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