連載

自衛隊新戦力図鑑

グローバルホークとシャヘド

現代型ドローンの先駆とも言える、アメリカ軍のRQ-4「グローバルホーク」。長時間・長距離の偵察飛行を目的として2001年からアメリカ軍で運用が開始された。現在は日本や韓国でも使用されている。本機は真横に伸びた細く長い翼を特徴としている。

長距離を飛行するドローンとしては、ロシアがウクライナ都市部への爆撃に使用している「シャヘド」系統の長距離自爆攻撃ドローンも、近年は有名だ。こちらは翼と胴体が一体となった三角形をしている。こうした機体・翼の形状の違いにはどのような意味があるのだろうか?

イラン製の長距離自爆攻撃型ドローン「シャヘド136」。ロシアは本機を輸入するとともに、国産化した「ゲラン2」や、その発展型・派生型をウクライナ攻撃に使用している。最大航続距離2500kmで、基本的に遠隔操縦はできず事前に設定した目標に向けて飛んでいく(画像:ウクライナ国防省)

長距離飛行性能には横長翼が適しているが…

グローバルホークの翼の横幅は39.9m。これは全長(14.5m)の2.75倍にもなる。翼面積に対して横に長い翼は、空気抵抗が少なく、効率よく揚力を得られるため、長距離・長時間の飛行に適している。こうした翼は、動力を持たず滑空飛行するグライダーに見られるもので、テレビ番組の「鳥人間コンテスト」の出場機の大半がこの形状だ。

こうした長距離飛行の効率の良さから、MQ-9「リーパー」やバイラクタルTB2といった後のドローンにも横長翼は積極的に採用されている。

MQ-9「リーパー」。空対地ミサイルや爆弾を搭載可能で、偵察だけでなく対地攻撃も可能となった。2000年代半ばから運用が開始され、アフガニスタン戦争などで活躍した。最大航続距離およそ2600km(写真:アメリカ空軍)

対してシャヘド系統のドローンが用いる三角翼(専門的には「デルタ翼」)は、単純に「長距離飛行に向いている」とは言い難い。デルタ翼は超音速飛行時に空気抵抗が少ないというメリットがあるが、シャヘド系統は時速180km程度の低速機であり、逆に空気抵抗が大きいというデメリットを生じる。一方で、デルタ翼は高仰角時に追加の揚力を生み出すために、低速飛行でも失速せずに安定して飛行できるというメリットもある。

シャヘド系統のデルタ翼は、単に飛行性能だけが採用理由ではない。デルタ翼のメリットとして、胴体と翼の接続部分が長く、ここに厚みを持たせることで燃料等を多く搭載することができる(この点で航続距離やペイロードに余裕が生まれる)。また、幅広の翼は曲げモーメント(翼を曲げようとする力)が分散されるため、細長い翼より構造的に丈夫であり、安価な材料や簡易な構造で製造することができる。つまり、シャヘド系統のデルタ翼は一定の飛行性能を確保しつつ、製造面の効率が重視された結果なのだ。

デルタ翼は胴体と翼の接続部分が大きいため、構造的に強度がある。また、左右幅が短いことは、運搬や保管など地上での作業の負担が少ないこともメリットのひとつ(画像:ウクライナ国防省)

機体を繰り返し使用することを前提とした高性能偵察機のグローバルホークと、大量消費前提の使い捨て自爆攻撃ドローンであるシャヘド系統という、運用目的の違いが翼のかたちの違いにあらわれているのである。

デルタ翼ドローンは他国にも広がっている。写真はアメリカの自爆攻撃ドローン「LUCAS」。また、中国でもデルタ翼の自爆攻撃ドローンが開発されている。なお、ロシアのシャヘド系統ドローンは、エンジンのジェット化、メッシュ通信による遠隔操縦化などの進化を遂げている(写真:アメリカ陸軍)

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