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HKSが生み出したRB26DETT用の連続可変バルタイシステム
シンプルで組み付けやすい構造もVカムの見どころだ
エンジン回転数や負荷に応じて最適なパワー&トルク特性を引き出せる連続位相可変バルタイ機構は、多くの自動車メーカーで採用されるメリット盛り沢山のシステム。それをRB26用のチューニングパーツ「Vカム」として市販化したのが“HKS”だ。
その第1弾は30台限定ということもあり、即完売。多くのチューナーやユーザーから再販を望む声が上がり、それに応えるカタチで通常商品としてラインナップに加わったという経緯がある。
今回取材したのは、純正ピストン対応&カムプーリー最大位相幅30度のステップ1(ピストン交換前提&位相幅50度のステップ2、ステッププロも存在する)だ。アルミ鋳造カムカバー、IN側カムシャフト(248度/8.60mmリフト)、カムプーリー、コントロールユニットなどで構成されるVカムシステム。
基本的な作動は、アイドリング時には最遅角としてオーバーラップを無くし燃焼を安定化。低中回転域では進角させ、低負荷時にオーバーラップを増やしてポンピングロスを抑え、高負荷時には充填効率向上によるトルクアップを実現する。また、全負荷ではエンジン回転数が高まるにつれて遅角。オーバーラップを徐々に減らして、慣性過給による充填効率アップが図られる…という具合。
カムプーリー可変ユニットを作動させるのに必要なのがエンジンオイルの油圧。HKSのデモカーでは、オイルエレメント移設ブロックから油圧を取っていた。
引き込まれたエンジンオイルは2系統に分けられ、バルタイマップに基づくソレノイドバルブのデューティー制御によって進角、遅角に必要な油圧がかけられる。カムホルダーから突き出たオイルが通過するパイプは差し込み式で、装着の作業性を高めているのだ。
ジャーナル部に刻まれた2本の溝にはそれぞれ2ヵ所ずつ、計4つの穴が開いている。カムホルダーから入ってきたエンジンオイルは、その穴を通ってカムプーリーに送り込まれるわけだ。高い精度と計算し尽くされたクリアランス設計によってオイル漏れも無し。
カムの中を通ってきたオイルは、カム先端からカムプーリーへと送られる。4つある穴は、2つが進角用、もう2つが遅角用の油圧を伝えるモノだ。ここまでがカムプーリーを連続的に位相させるのに必要なエンジンオイルの経路になる。
ヘッドカバーに設けられた高精度カム角センサー。ピックアップはカムシャフトから飛び出した3本のボルトで、センサーから約1mmのところを通過するたびに信号を出し、状況によって可変するカムの位相角を測定しているのだ。
コントロールユニット(バルコン)のディスプレイには、走行条件によって刻々と変わるIN側カムの位相角がリアルタイムにデジタル表示される。また、コントロールユニット本体でも5×5のマップでバルタイを任意に調整できる。
アルミ鋳造の専用カムカバーは純正と同じ色で塗装されるためフィット感も抜群。純正カムカバー加工の手間は省けるし、見た目にもスッキリするなど良いことづくめだ。
テスト車両として用意されたのは、GT2530ツイン仕様のBNR32。クラッチを繋いだ瞬間から「コレがRB26?」と思えるくらいにトルクフル。まるでボディが軽くなったかのように走り出す。その思いを一層強くするのは2000rpmを超えたあたりから。特に3速以上の高いギヤでダラダラと走っていても、そこからアクセルを踏み込むだけでグッと前に出てくれるし、ブースト圧も3000rpm手前で正圧域に入るほど立ち上がりが鋭い。この、トルクがスッと立ち上がってくれるフィーリングには正直驚かされた。
実際のパワーグラフを確認する。まずパワーは4000rpm前後での約70ps差を最大として全回転域で純正カムを上回っている。それ以上に注目なのがトルク特性。RB26は低中速トルクが細く、エンジン回転の上昇にともなってトルクも盛り上がってくる…というフィーリングだが、グラフを見ればVカムの効果は一目瞭然。2000rpmから大きく立ち上がり、4000rpmを超えたところで早くもピークに到達。しかも、それが5500rpmまで持続して、その後の落ち込みも抑えられている。
もちろん、排気量アップでも低中速トルクの向上は見込めるが、性能曲線としてはグラフの傾きが同じまま上に平行移動するだけ。つまりVカムに匹敵するほどの劇的な効果は得られないというわけだ。
RB26の定番チューニングとして多くのユーザーに愛され続けているVカムシステム。この性能は、もはやチューニングパーツの域を完全に超えている。それほどまでに革命的な製品なのである。
●取材協力:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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