「新型フェアレディZのS耐仕様がボルクレーシングを選んだ理由」NE24が切り拓く未来

Nissan Z Racing Conceptは性能面でボルクレーシングNE24を選んだ

なぜTE37ではなくNE24だったのか!?

6月3日〜5日、富士スピードウェイを舞台に開催された「NAPAC富士SUPER TEC24時間レース」。2022年で5回目の開催を数えるこの長距離レースに、日産が新型Zベースの「Nissan Z Racing Concept」を2台テスト参戦させたことは記憶に新しいだろう。

参戦したのはSTOが認めた開発車両を対象にしたST-Qクラスで、230号車はドイツのP1パフォーマンスフューエル製のカーボンニュートラル燃料、244号車が一般的なガソリンが使用されていた。

もちろん、それぞれにレース仕様としてのチューニングが施されていたのだが、我々が注目したのは“ホイール”だ。どちらも、ボルクレーシングの鍛造1ピースモデル「NE24」を履いていたのだ。

ここで一つ疑問が湧く。ボルクレーシングにはTE37シリーズという最強の鍛造モデルが存在する。普通に考えれば、TE37に白羽の矢が立つはずだ。なぜNE24が選ばれたのか?

その理由についてボルクレーシング開発責任者は「社内検討でTE37とNE24を解析比較して、NE24の高いポテンシャルが確認できたんです。実機試験でもレースで戦える性能、つまりTE37に負けずとも劣らぬ強さや軽さが確認できました。そこでNE24で話を進めさせていただいたんです」と語る。

このNE24というモデルは、2021年に「新しさ」をコンセプトに掲げて開発された2×4スポークの革命児だ。

パッと見は単なる均一な8本スポークなのだが、その実は2×4レイアウトの複雑なツインスポーク仕様。360度のディスク面を4分割した90度内に3本のスポークが配置されるよう、狭角と広角の三角形を組み合わせたレイアウトとしているのだ。

ホイールの中心となるセンターパートは入力に対する剛性や強度を確保するため、十分な体積を与えて設計。この体積があるからこそ、スポークの又部がナットホールによって途切れても影響は一切受けないのである。

体積を確保したリムフランジへつきまとう駄肉は、2段角のアンダーカットで削ぎ落とす。A.M.T.によるマシニング文字はレーシングパーツとしてシンプルなフォントが採用されている。なお、センターキャップはオプション設定だ。

「レース車両が装着しているNE24は、ファインチューニングしています。元々ポテンシャルは高いホイールなのですが、耐久レース用に強度面等を引き上げました。ブラックカラーはニスモ様からのオーダーです」とのこと。

レイズは、レースフィールドからの技術フィードバックを欠かさないホイールメーカーだ。今回のチューニングが、NE24のSLバージョンやSAGAバージョンの誕生に繋がっていくことは間違いない…はずだ。

なお、決勝レースでは244号車が安定した走りを披露。その結果、244号車が707ラップを周回し、予選で好タイムを見せていた230号車も、トラブルに見舞われつつも粘りの走りを見せて502周でチェッカーを受けた。(車両実験的なST-Qクラスは順位という概念がない)

モータースポーツ直系の先進技術を惜しみなく注ぎ込み、スポーツホイールへ要求される性能を具現化するボルクレーシング。ユーザーニーズはもちろんのこと、ターゲットマシンやタイヤ性能といった周辺事情にもアンテナを張り巡らせ、常に限界突破の糸口を探るスタンスは広く知られている。

スポーツホイールのトップブランドが今後どのような展開や技術革新を繰り広げていくのか、その動向から目が離せない。

PHOTO:吉見幸夫
取材協力:レイズ TEL:06-6787-0019
 
【関連リンク】
レイズ
https://www.rayswheels.co.jp/

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