Chevrolet Corvette Z06 Convertible
エンジンはZ06専用の5.5リッターV8DOHC

「コルベット」がFRからミッドシップへ、劇的な変貌を遂げて6年。当初はあちこちから戸惑いの声が聞かれたものの、走りや乗り味がしっかりコルベットしていること、宣言通りWECやIMSAなどのレースで勝ちまくったこともあり、現行「C8」もいまやすっかり8代目として認められるようになったと思う。ちなみにアメリカでのデビューから5年間の累計販売台数を調べたところ、先代C7が14万2033台、現行C8が15万6860台。ミッドシップ化は見事に成功したのだ。
さて、そんなコルベットのハイパフォーマンスモデル「Z06(ジーオーシックス)」にコンバーチブルが追加された。Z06といえばレーシングマシン「C8.R」のホモロゲーションモデルとしての側面を持ち、エンジンやシャシーには共通する部分が多い。特にエンジンは伝統のOHVを捨て、当時のLMGTE規格に則る形で5.5リッターのV8DOHC自然吸気を新開発して搭載。足まわりもフロントで40mm、リヤで50mmそれぞれワイドトレッド化、さらに極太タイヤを収めた結果、ボディはノーマルより85mmもワイドになっている。だから派手なエアロパーツを纏わなくても、モータースポーツ直系モデルならではの凄味や不敵さを全身から発散する。
そんな成り立ちゆえ、当初は「コンバーチブルなんて邪道じゃない?」と思っていたのだが……。なお、今回の試乗車は昨年6月に発表された2025年モデルであり、2026年1月デビューの最新モデルではないことをまず最初にお断りしておく。
エンジン音とエキゾーストのオーケストラが脳髄を直撃する

コルベットと言えば一線級のハイパフォーマンスカーとしては望外に乗り心地がいいことで知られるが、このZ06も例外ではない。タイヤは前275/30ZR20、後345/25ZR21と、スーパーカー雑誌の編集者でもあまり見たことのない数字が並ぶ。だが、タウンスピードからワインディングまで、どのドライブモードを選んでも不快な突き上げやピッチングは最小限。これは減衰力の調整に磁性流体を使い、常時1/1000秒単位で路面をセンシング、瞬時に剛柔を切り替える「マグネティック・セレクティブ・ライドコントロールサスペンション」がいい仕事をしているからにほかならない。なにせタイヤはランフラットなのだ。だからコンバーチブルらしくトップを開け放ち、ゆったりクルーズするのも得意科目。搭載されるのは第4世代のマグネライドだが、2002年の第1世代からを知る身としては隔世の感を抱かずにはいられない。あれは可変速度や振り幅の点でお世辞にも優秀とは言えなかった。
エンジンは前述の通り5.5リッターV8の「LT6」で、最高出力646PS/8550rpm、最大トルク623Nm/6300rpm。スペックからもわかるように超高回転型で、104.25mm×80mmのビッグボア×ショートストローク、軽量なフラットプレーンクランクシャフト、さらに鍛造アルミピストン、鍛造チタンコンロッド……など、純レーシングユニットのようなソリューションの数々がこれを支える。オイルシステムも6ステージのドライサンプだ。今どきこれだけピュアにハイパフォーマンスを追求したエンジンがほかにあるだろうか?

そのキャラクターはノーマルの6.2リッターOHV「LT2」とは明らかに異なる。大排気量にものを言わせて低回転域からトルクで押しまくるLT2に比べ、LT6のスタートダッシュは明らかに繊細。だがドラマは3000rpm台中盤から始まる。アクセルに対するトルクのツキが明確に増すとともに、きちんと精緻に組まれたユニットだけが放つ「ギューン!」というレーシーなメカニカルノイズがキャビンを包む。パワー感自体はLT2とさほど変わらない印象だが、LT2が6500rpmで頭打ちになる一方で、LT6が本領を発揮するのはここから。6500などほんの序の口、7500からのイエローゾーンすら軽々と超え、まったくフリクションを感じさせることなくトップの8550rpmを極め、最高出力の646PSを炸裂させる! エキゾーストとのオーケストラもここがクライマックス。背後から音圧が脳髄を直撃してくる様もコンバーチブルならではだ。




オープン化で失ったものは何もない

ハンドリングはミッドシップのクセがあまり強くなく、乗りやすい印象。前後重量配分は多くのライバル同様に前40、後60となるが、フェラーリ296やランボルギーニ・テメラリオなどに比べてホイールベースが長いこともあり、安定感が強いのだ。特筆すべきはボディの剛性感がクーペに遜色のないこと、実は車種がクーペより10kg軽いことで、ハードにブレーキングしたり右コーナーから左コーナーへミリ単位の精度でステアリングを切り返したり、コーナリング中に派手な段差を乗り越えたりしてもボディはミシリとも言わず、屋根が開いていることをまったく意識することなくクーペ同様の切れ味や瞬発力を堪能できる。これはもともとのクーペもデタッチャブルハードトップであり、ルーフの有無に左右されないボディの構造計算を行っているからだろう。高速域に入ると空力バランスが変わる影響か、クローズ時よりも前輪の接地感がややあいまいになることはあるけれど、それは本気になる時は屋根を閉めればいいだけの話。これならZ06の本領であるサーキットも本格的に楽しめるはずだ。


シート後方に高めのヘッドフェアリングが設置されていることもあり、サイドウインドウとドラフトストップを上げておけば風の巻き込みは最小限。100km/h超でも髪をなびかせる程度だし、アメリカ車らしい強力なエアコンにシートヒーター、ステアリングヒーターも標準装備されている。真冬のオープンエアドライブもまったく苦にならず、思わずBOSEサウンドシステムで音楽を聞きながら首都高速環状線をグルグル回ってしまったくらいだ。
クーペとの価格差は340万円と大きいことが悩ましいが、これはクーペではオプション設定のブレンボ製カーボンブレーキ(190万円)が標準になることが背景としてある。だが、オープン化で失ったものは何もなく、得た価値は相応に大きい。サーキット直系の“ストラダーレ”を、ハードにも粋に楽しめる。そんなZ06コンバーチブルだった。
REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2026年4月号
SPECIFICATIONS
シボレー・コルベットZ06コンバーチブル
ボディサイズ:全長4685 全幅2025 全高1225mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1710kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:5454cc
最高出力:475kW(646PS)/8550rpm
最大トルク:623Nm(63.6kgm)/6300rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/30ZR20 後345/25ZR21
最高速度:296km/h
0-100km/h加速:3.1秒
車両本体価格:2920万円(2025年モデル)
【問い合わせ】
GMジャパン・カスタマーセンター
TEL 0120-711-276
https://www.gmjapan.co.jp/

