C 36 AMG(W202)
コンプリートカーの初作として

1990年、ダイムラー・ベンツはAMGの株式を取得するなど、両社の間で協力協定を締結。これによりメルセデス・ベンツのショールームでは直列6気筒エンジンをチューンした「300CE 3.4」「300E 3.2 2V」といったAMGのコンプリートカーやパーツが展示、販売されるようになった。
そうした中、AMGとメルセデス・ベンツは共同でコンプリートカーの開発に着手。その初めての作品として1993年に発表されたのが「C36 AMGだ」。
ベースとなったのは、メルセデスのモデルラインナップの再編に伴い、1993年に登場したW202型「Cクラス」である。オーソドックなスタイルとなったボディはホイールベースをW201型「190E」の2665mmから2690mmへと延長すると共にひと回り大型化。またシャシーではフロントサスペンションを4リンクと呼ぶダブルウイッシュボーンに変更してハンドリングを向上させたほか、ABS、TCSやASRといった運転支援デバイスを採用するなど、大きく進化していたが、ライバルのアウディ、BMWがスポーツ路線に舵を切ったのとは対照的に、コンフォート傾向の強いモデルとなっていた。
本格的なスポーツセダンとして

そんなCクラスには2766cc直6DOHCユニットを積み込んだ「C280スポーツライン」といった高性能仕様も用意されていたが、「190E 2.5-16 エボ」シリーズのようなスポーティネスとは無縁のモデルといってよかった。
そこでAMGに託されたのが、本格的なスポーツセダンの開発であった。まずエンジンは同じ直6DOHCながらシリンダーボアを89.9mmから91.0mmとし、ストロークを73.5mmから92.4mmに延長することで排気量を3605ccへと拡大。あわせて専用のアルミ鍛造ピストンを採用し、10.5:1に高めた圧縮比、バルブリフト量の拡大、HFMトロニックの改良、専用のエキゾーストシステムの採用などでC280の200PS、276Nmを大きく上回る280PS、384Nmを発生。トランスミッションは同じ4速ATながら、容量の大きいSクラス用に換装されている。
強大なパワー、トルクを受け止めるシャシーも各部を強化すると共にタイヤサイズをフロント225/45AR17、リヤ245/40ZR17へアップ。フロントのダブルウイッシュボーンサスペンションには標準のトー角調整に加えて、偏心ボルトを使ったアライメント調整機能を追加したうえで、車高を35mmローダウンしたほか、ブレーキもフロントには12気筒を積む「S600 SEL」用の320mm×24mmのブレーキディスク、リヤには「E420」用の278mm×24mmのブレーキディスクを採用し、強化が図られていた。
C43あるいはC55も

これらの改良にあわせてボディ全周にわたってAMG製のエアロパーツ、ホイールを装着。インテリアの意匠自体は大きく変わらないが、インパネにウッドがあしらわれるほか、C280と同じ前後ともバケットスタイルのシートは革張りが標準となるなど、高級感に溢れるものとなっていた。
0-100km/h加速6.7秒(最高速はドイツメーカー間の紳士協定により250km/hと発表)とC280を上回るパフォーマンスを発揮したC36 AMGはメーカー純正チューニングカーという新たなジャンルを開拓。ちなみに日本での新車価格はC280スポーツラインの620万円に対し、950万円と非常に高価なものであったが、1997年の生産終了までに約5200台が生産されている。
そしてメルセデス・ベンツと完全合併を果たした1998年には、モアパワーの声をうけ「E430」の4.3リッターV8 SOHC 24バルブ・ツインスパークを306PS、409Nmにまでチューンしたエンジンを積む「C43」(ボディはセダンとステーションワゴンを用意)を発売。さらに「E55」用の347PS、510Nmを発生する5.4リッターV8 SOHC 24バルブを押し込んだモンスター「C55 AMG」もごく僅か(一説には59台)製造、販売されている。

