数々のフランス車に目移り必至

あのゴダールに「ドストエフスキーがロシア文学であり、モーツァルトがドイツ音楽であるように、ブレッソンがフランス映画なのだ」と言わしめた名匠、ロベール・ブレッソン監督による5つの傑作が一挙上映されます。

『ロベール・ブレッソン傑作選』

上映されるのは、セーヌ河畔とポンヌフを背景に若き男女の出会いを見つめていく『白夜 4Kレストア』(1971年)、高校生が軽い気持ちで使った一枚の偽札が雪崩のように最悪の事態を招いていく遺作『ラルジャン 2Kレストア』(1983年)、そして苦労のどん底にいる貧しい少女を描き『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にも影響を与えたという『少女ムシェット 4Kレストア』(1967年)、スリの技に魅了され自ら破滅の道を進む青年を描く『スリ 2Kレストア』(1959年)、人間の業に翻弄される小さなロバと苦難の道を歩んでいく少女の姿を見つめる『バルタザールどこへ行く 4Kレストア』(1966年)という、ロベール入門にも最適なラインナップとなっています。

シトロエン・アミ6

なかでも『バルタザールどこへ行く』はシトロエン・アミ6などの珍車が目を楽しませてくれるのですが、ロベール作品を車視点で存分に味わうには、やはりカラー作品。70年代フランスの夜景も幻想的な『白夜』には冒頭から、ルノーの子会社だったサビエムのトラックJM240や、シトロエンの貨物車タイプH、つい最近EV化で復活したことも話題になったルノーのエスタフェットなど40~60年代の商用車が続々映り込むので、思わず身を乗り出してしまうはず。

また、主人公の青年ジャックがヒッチハイクするファミリーカーはフォードの“タウヌス”20Mだったり、現在も路面バスとして現役でパリ市内を走っているソミュアOP5/3と路上で交差するのが真っ赤なサンビームのアルパイン シリーズIIIだったりと、欧州の旧車たちのメリハリのある共演が眼福です。

そして、あの濱口竜介監督が「身震いするほど恐怖することと、打ち震えるほど感動することは両立する。信じられない人は、ブレッソンのたどり着いた極北『ラルジャン』を見てほしい。ただし大画面と、大音響で」と絶賛する『ラルジャン』も、ドキュメンタリーのように淡々とした展開ながら、端々に登場する車から時代の変遷を感じることができます。

たとえば、偽札を掴まされたことから人生が崩壊していくガソリン店員の男性が乗るのは、現在はFIAT傘下の仏ユニック社製のタンクローリー(OM 38D)。一方、悪事に手を染めてしまった彼が乗るのは70年代の真っ黒なプジョー504で、セリフが限られているぶん車が背景を雄弁に語ります。ちなみに、その504がぶつかりそうになるのがFIATの小型車(パンダと131)だったりするのも良い対比になっていてハッとさせられます。

ブレッソン監督の職業俳優を起用しないスタイルは映像全体にリアリティをもたらしていて、当時の空気感が閉じ込められたロケーションにも自然と注目してしまうでしょう。どの作品も日本では配信もされていないので、大スクリーンで凝視できる機会をお見逃しなく。

公式サイト:『ロベール・ブレッソン傑作選』
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